「パロマー」カルヴィーノ

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妻と娘が1人おり、パリとローマにアパートを持っている中年男性のパロマー氏。時には浜辺や動物園に行き、時には街角で買い物をして、時には竜安寺の石庭を眺め、時にはメキシコにあるトルテカ族のかつての首都トゥーラの遺跡を見学するパロマー氏。そんなパロマー氏が様々なものを観察する不連続な短編集。「パロマー氏の休暇」「街のパロマー氏」「パロマー氏の沈黙」という3部それぞれが3章ずつに分かれて、そのそれぞれに3つずつの短編が入っています。

3つずつの短編はそれぞれ「視覚による経験」「人類学的もしくは広義の文化的要素」「より思索的経験」という3種類のの主題領域に則って書かれていて、作品全体を縦に読むだけでなく、横に読むことができるようになっているんだそうです。という3つの違いは、一読しただけでは、ああ確かに言われてみれば、程度だったんだけど...(汗)
パロマー氏がしているのは、もっぱら観察して考えること。例えば浜辺で波について、胸を露にして日光浴をしている女性について、傾きかけた陽射しについて、あるいは街で買い物をしている時に鵞鳥の脂肪が詰まった小瓶を見ながら、店頭に置かれた様々なチーズを見ながら、肉屋のカウンターの向こうを見ながら、詳細に観察、そして思索します。浜辺や自宅のように人気のないところで思索している分にはあまり他人の迷惑にはならないんですけど、街角の商店では後ろに並んでいる人たちに睨まれて、慌てて詰まらないものを買ってみたり。

最後の方で読書に関する文章があって、私はそれが好きでした! 「冬の夜ひとりの旅人が」や「なぜ古典を読むのか」に直接繋がるような部分。そうそう、「冬の夜ひとりの旅人が」を読んだ時にkotaさんに、私には「パロマー」がおすすめかもしれないし、まったくおすすめできないかもしれない、と教えて頂いていたのでした。というのはここの部分があるからじゃなくて、この本全体のことだと理解してるのですが。
このパロマー氏は、カルヴィーノ自身なんですかね? いやー、やっぱり妙な作品だったわー。このパルマー氏が普段何の仕事をしているのかは明らかじゃないんですけど、周囲の迷惑も顧みないその深い思索、その詳細さ、そして横道への逸れぶりが可笑しいんです。でも読んでると、ほらほら面白くないでしょ?と言われてる気がしてならなくて。でもこういうのってoverQさんの仰る「部分>全体」を思い出しちゃう。詳細な「部分」は「全体」を凌駕するということを実践してみせた作品だったのかな?(笑)(岩波文庫)


+既読のイタロ・カルヴィーノ作品の感想+
「宿命の交わる城」イタロ・カルヴィーノ
「不在の騎士」イタロ・カルヴィーノ
「レ・コスミコミケ」イタロ・カルヴィーノ
「なぜ古典を読むのか」イタロ・カルヴィーノ
「まっぷたつの子爵」「木のぼり男爵」イタロ・カルヴィーノ
「イタリア民話集」上下 カルヴィーノ
「魔法の庭」イタロ・カルヴィーノ
「見えない都市」イタロ・カルヴィーノ
「マルコヴァルドさんの四季」カルヴィーノ
「冬の夜ひとりの旅人が」イタロ・カルヴィーノ
「柔かい月」イタロ・カルヴィーノ
「カルヴィーノの文学講義」イタロ・カルヴィーノ
「パロマー」カルヴィーノ
「くもの巣の小道」イタロ・カルヴィーノ
「むずかしい愛」カルヴィーノ

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