「テヘランでロリータを読む」アーザル・ナフィーシー

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1971年からイランの大学で教鞭をとってきたアーザル・ナフィーシーは、1995年の秋、最後の大学を辞めた時にかねてからの夢を実現する決意をします。そして教え子の中から最も優秀で勉強熱心な7人を選び、毎週木曜日の朝に自宅で文学について話し合うということ。そして集まったのは詩人のマーナー、「お嬢さま」のマフシード、コメディアンのヤーシー、「問題児」アージーン、物静かな画家・ミートラー、自立したいという欲求と認められたいという欲求の狭間で揺れ動いていたサーナーズ、そして「チェシャ猫」ナスリーン。ナスリーンは最後まで一緒にいられなかったものの、彼らは2年近くの間、ほぼ毎週木曜日になるとアーザルの家にやってきて、ヴェールとコートを脱ぎ捨て、小説と現実の関係について話し合うことに。

主にナボコフ「ロリータ」、フィッツジェラルド「華麗なるギャツビー」、ジェイムズ「デイジー・ミラー」、オースティン「高慢と偏見」を通して、筆者が大学で教えていた数年間、そして木曜日の秘密の授業をしていた2年足らずのイランの状況を描き出していくという作品。イラン革命の後のイランでは、頽廃的な西洋文化は全て悪とされていて、これらの小説も本屋の棚からどんどん消えていってるような状態なんですね。普通の人々もちょっとしたことで何年間も投獄されたり、簡単に殺されたりというかなり厳しい状況。男性にももちろん厳しいんですが、ほとんど人格を認められていない女性に対する厳しさはそれを遥かに上回るもの。そんな状況の中で生きている女性たちの思いを吐露していきます。
もちろん「テヘラン」で「ロリータ」を読むというそのイメージのギャップはとても面白いと思うし、授業で「華麗なるギャツビー」をめぐる裁判を開いたりといった事柄はそれぞれにとても興味深かったんですが... あまり私には伝わってきませんでした。同じ時代のことを書いている新藤悦子さんの「チャドルの下から見たホメイニの国」(感想)を夢中になって読んだのとは対照的。どこがどう違うのか今ひとつ分からないのですが... いや、本当は感覚的には分かってるんですが...
その中の1つの要因は、本の解釈にそれほど感銘を受けなかったってことですね。私が未読の本も沢山登場してましたが、少なくとも「ロリータ」「華麗なるギャツビー」「デイジー・ミラー」「高慢と偏見」は既読。オースティンの長編だって全部読んでるし。でも例えば「ロリータ」での、「ハンバートは自分が求めるロリータをつくりだし、そのイメージに固執した」という読み方、そしてそれをイランの男女関係に重ねていく部分には「なるほど」と思うんですけど、正直もっとイラン人ならではという読み方を期待してたので... 結局のところ、それが一番大きかったんだろうなと思います。もちろんそれは、私自身が「自分が求める彼女たちをつくりだし、そのイメージに固執した」とも言えるのかもしれませんが...(白水社)

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Commentaires(2)

四季さん、こんにちはー^^
この人は、本を読むことを政治的なものから解放しよとしながらやはり政治的なことに戻って本と政治を結び付けてしまっていて、そして本を読んでもやはり西洋的な学問を修めてきた人の発想や感じ方なんじゃないかと感じました。それにこれはいわゆる先進諸国の読書家たちが望むイラン像であるもかもしれないと感じたり。。
それでも日本では考えられないような厳しさは実感できたりして興味深くて、また生徒ひとりひとりの葛藤が痛々しく迫ってきて面白くて、それはでもインテリの世界の話だろうなあとも感じたりしました^^

んんー、そうなんですよね。
確かにkyokyomさんの仰る通りだと思います。
政治的なことから解放しようとして、結局政治に戻ってるのもそうだし
何より本の読み方が! それはものすごく思いました。
アメリカでベストセラーになったのも分かる気がします。
アメリカ人にとって理解しやすいイラン女性の姿を描いてみましたって感じですもん。
その小手先な感じが、伝わってこなかった最大の要因かもしれません。
これだけ厳しい状況を書いていたら、本来ならもっと切実な感じになるはずなのに…
ヴェールを拒否しても、敢えて授業で西洋文学を取り上げても
彼女は闘ってるようには見えないし、結局は高見の見物に終わってしまったような。
それが彼女の育ちの良さなのかもしれませんね。

もしここで論じられてる本を読んでいなかったら「読んでないから分からないのかも?」と
きっと思ったと思うんですよね。読んでいて良かったです。
正直、「えっ、専門の教授でもこの程度なの…?」ですよー。
いえ、私の読みがこそ浅いのかもしれませんが!(笑)

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