「恐怖の兜」ヴィクトル・ペレーヴィン

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そこにあったのは、アリアドネのスレッド。その冒頭には、「私を見つけようとする人といっしょに、自分も姿を消してしまえるような迷宮を私はつくろう。これは誰が何について語ったのか?」というアリアドネの書き込みがありました。最初からそこにいたメンバーは「オルガニズム(^O^)」「ロミオとコイーバ」の2人。やがて「ナッツ・クラッカー」が加わります。ハンドルネームは勝手につけられたもの。3人とも気がついたら古代ギリシャ人の衣裳・キトンを着せられて、それぞれに小部屋の中にいたのです。やがてそのチャットには「モンストラダムス」「アリアドネ」「イゾルデ」が、そしてさらに「ウグリ666」「サルトリスト」が加わります。

8人の人間がチャットをしながら進んでいく物語。元ネタはギリシャ神話の中のミノタウロスのエピソード。迷宮に閉じ込められたミノタウロスを、アリアドネの助けを得たアテネの王子・テセウスが倒すというものです。そしてヴィクトル・ペレーヴィンはロシアでは人気の作家なのだそう。ロシア人作家によるチャットとギリシャ神話という組み合わせに興味を引かれたのですが、これがなかなかの難物でした...

チャットなので、短い言葉のやり取りがメインだし、さくさくと読み進められるのではないかなーと思ってたんですけど、これが全然。会話の内容がものすごく観念的なんです。特にアリアドネがみた夢の話の辺りからどんどんわけが分からなって、これはまさに迷宮状態。ギリシャ神話では、テセウスが迷宮を脱出するのを手伝うアリアドネなんですけど、ここでは逆にアリアドネが他の面々を迷宮の奥深くに迎え入れてるみたい。
途中で「ディスクール」という言葉が登場するんですけど、これがポイントなのかな? これは「物事や考えを言葉で説明すること。またはその言葉、言説」という意味。そもそもチャットって言葉のみで成り立っているものだし、これがとても暗示的な気がします。8人がいるのが似たような部屋だからって、その部屋が同じ場所にあるとは限らないし、全ての人間が本当のことを話しているという保証もないわけで... 実際それでトラブルが起こることもありますしね。それでも迷宮から脱出するために、この「ディスクール」とともに進まなくちゃいけないんです。
きっとこういう話の1つ1つを完全に理解する必要はないんでしょうけど... でもほんとワケ分かりません。とは言ってもつまらないわけじゃなくて、むしろ面白いのがすごい。読み終わった途端にじっくり読み返してみたくなります。(角川書店)


+既読の新・世界の神話シリーズ作品の感想+
「ペネロピアド」マーガレット・アトウッド
「永遠を背負う男」ジャネット・ウィンターソン
「恐怖の兜」ヴィクトル・ペレーヴィン

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コンピュータゲームの世界と一体化した中央官庁に働く職員、自我の目覚めを経験して苦悩する倉庫、夢の中で生活する学生、死の意味をめぐって怪談を続ける子供たち…... » Lire la suite

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