「ある秘密」フィリップ・グランベール

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本当はひとりっ子なのに、長い間兄さんがいるつもりになっていた「ぼく」。自分で作り出した悲しみや恐怖を分かち合う相手が必要で、長い間ハンサムで力強い「兄さん」に助けてもらっていたのです。しかしそんなある日、「ぼく」はついに1人きりではなくなります。屋根裏部屋に積み重ねられた古いトランクの中にベークライトの目をしたほこりっぽい小犬のぬいぐるみが出てきたのです。そして「ぼく」は15歳の時に、その小犬にまつわる話を聞くことに。

フィリップ・グランベールの自伝的作品。実際、彼が自分の家族にまつわる秘密を知ったのは、この本と同じく15歳の頃だったんだそうです。本職は精神科医という作家さん。
ここに描かれているものはとても重いものなんですけど、最初から最後まで終始淡々とした感情を抑えた文章で書かれていました。簡潔な文章の積み重ね。でも物凄く簡潔なのにその奥には色んな感情が詰まってて、ふとした拍子に零れ落ちてきそう。...なんて思いながら読んでいたら、フィリップ・グランベールはこの作品を2ヶ月ほどの間に夢中で書き上げたものの、最初書いたものは文章が感情に流されていて使い物にならなかったんだそうです。疲れ果て体調を崩しながらも書き直し続けた時、最後に「残ったのは骨の部分だけでした。結局それだけが必要だったのです」... その言葉には本当に納得。
特に印象に残ったのは、最初は自分で作り出した悲しみに浸っていた主人公が、ルイーズのおかげで両親の物語を再構成すると、今度は口をつぐみ、逆の立場になったこと。...でも他人の悩みを聞き、その悩みから解放する精神分析医という仕事をしながらも、自分の悩みから解放されるには、こうやって書くという行為が必要だったのかなあ。なんて感慨深く思ってみたり。(新潮クレストブックス)

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父さんと母さんは何か隠してる…。ひとりっ子で病弱なぼくは、想像上の兄を作って遊んでいたが、ある日、屋根裏部屋で、かつて本当の兄が存在していた形跡を見つける... » Lire la suite

ある秘密 (新潮クレスト・ブックス)posted with amazlet at » Lire la suite

父と母は何か隠している……。ひとりっ子で病弱なぼくは、想像上の兄を作って遊んでいたが、ある日、屋根裏部屋で、かつて本当の兄が存在していた形跡を見つける。両... » Lire la suite

Commentaires(6)

四季さん☆こんばんは
この物語は両親の秘密ではあるけれど、何かの形で残さなければと思って書き出したのでしょうが、著者はかなり悩んだのでしょうね。
それにしても、どうして人間は戦争を繰り返してしまうのでしょうか。
戦争は憎しみと悲劇しか残さないのにね。

Rokoさん、こんにちは~。
書くことによって、一家の秘密が暴かれてしまうわけだし
得るものもあったでしょうけど、失うものも大きかったでしょうね、きっと。
それでも書かなければという思いがあったというのも伝わってきますが…
本当に憎しみと悲劇しか残らないのにね。
戦争も人種差別も悲しすぎますね。

四季さん、こんにちは♪
TBさせていただきました。
高校生ゴンクール賞でフランスの高校生が選んだということ、凄く価値のあることだと思います。
ページは薄いのに内容が濃すぎて本当に驚きました。

それにしても新潮クレスト・ブックス内容が濃いので点数がつけにくいですね(汗)
日本の高校生にもこんな小説読ませてあげたいですね。
『悪童日記』にこれから入ります。

トラキチさん、こんにちは~。TBとコメントありがとうございます。
ほんと、この作品が高校生に選ばれるというのがすばらしいですよね。
さすがフランス。日本じゃあ、まだちょっと無理なんじゃないでしょうかー。
もちろん、日本人の高校生でも読めば感銘を受ける人がいっぱいいると思いますが…。

「悪童日記」の感想、楽しみにしてますね。
オススメ本を聞かれた時、一番最初に思いついたのが「悪童日記」だったので~。^^

この本、読みました。
短くて、あっというまに読めてしまう本でしたが、その内容の濃さ、深さに圧倒されてしまいました。
「自分の悩みから解放されるには、こうやって書くという行為が必要だった」と言うの、同感です。
これだけ重い話なのに、読後は清清しい気持ちでした。

ぱせりさんも読まれましたか!
この本の薄さからは、ちょっと想像できないような本でしたよね。
こういう本を受け止められるようになったのって、ようやく最近かも。
とても濃いし深いし、軽々しく「分かる」なんてことは言えませんが…
本当に読んで良かったです。^^

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