「肩胛骨は翼のなごり」デイヴィッド・アーモンド

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新しい家に引越しした翌日の日曜日、入ってはいけないと言われた壊れかけのガレージの中で彼をみつけたマイケル。両親が家の中にいる隙に懐中電灯を手にガレージに忍び込んでみると、山と積まれた茶箱のうしろの暗い陰に彼は塵とほこりにまみれて横たわっていました。最初はてっきり死んでいると思い込むマイケル。しかし「なにが望みだ?」という声が聞こえてきて... それは「スケリグ」でした。

この表紙に惹かれて手を取る人も多いだろうと思うんですが... 私にとっては逆にこの表紙がネックでなかなか手に取ることのできなかった本です。しかも読み始めて、何度もソーニャ・ハートネットの「小鳥たちが見たもの」を思い出してしまって、そのたびに警戒してしまったし... でもまた全然違う物語でした。良かった...(まだあの時の動揺から立ち直りきれてない私)
主人公のマイケルは、「小鳥たちが見たもの」のエイドリアンみたいに孤独と寄り添っているような少年ではなくて、サッカーと作文が得意な普通の少年。引越しはしたけれど、今までの学校にも通うことができるし、仲の良い友達もいます。でも引越し先の家はまだまだ快適に住めるような状態には程遠くて、しかも生まれたばかりの赤ちゃんは一応退院はしたんだけど、まだまだ予断を許さない状況なんですね。赤ちゃんが心配でマイケルも両親もどこか上の空。

元気なスポーツ少年のはずのマイケルが見せる繊細さも印象に残るんですが、マイケルが引っ越し先で仲良くなるミナという少女がとても魅力的。ミナは学校に行かずに家で母親に様々なことを学んでいて、何事においてもとても独創的だしパワフルなんです。マイケルは彼女に色んなことを学ぶことになるし、意気消沈中のマイケルは彼女にぐいぐいと力強く引っ張られることになります。彼女のこの力強さがあったからこそ、みんな救われることになるんですね。...でもやっぱりミナだけの力ではないですね。読後に一番強く感じたのは、この3人のバランスの良さとでもいうべきもの。誰かが誰かに助けられっぱなしというのではなくて、お互いに助け助けられて、欠けているものを補い合って、「生きる」方向へと向かっているのを感じます。これで1人欠けていたら、もしくは1人がまるで違うタイプの人間だったら、これほどのパワーは発揮されなかったでしょう。そしてどんな結末でもあり得たでしょうね。この作品を「甘(うま)し糧」のような物語にしているのは、3人それぞれの力が「1+1+1=3」ではなくて、もっと大きな力を発揮していたからだと思うのです。

スケリグは一体何者だったんでしょう。イメージとしては、トルストイの「人はなんで生きるか」に登場するミハイルだったんですけど、それにしては埃やアオバエの死骸にまみれた姿で登場するし、食事の場面では品のなさを見せつけてるし、まるで浮浪者みたい。生肉を食べているような息の臭いもありますしね。でもこの物語では、スケリグがミハイルではなかったからこそ、という気がしてならないです。マイケルやミナのように、ありのままのスケリグを受け止められるかどうかが大切だったのかもしれません。(創元推理文庫)

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 「肩甲骨は翼のなごり」(デイヴィッド・アーモンド/山田順子:東京創元社)、ちょっと心惹かれるようなタイトルである。実は、私も子供の頃に、人間に尻尾の痕跡... » Lire la suite

Commentaires(4)

こんにちは。
あの表紙は確かに怖いと思います。
個人的には惹かれるものを感じてはしまうのですけれど。
物語としてはすごくいいですよね。
児童文学のはずだけど,
どちらかというと大人向けな印象があります。
他の作品も早めに文庫化されて欲しいですね。
創元だからだいぶん先のことにはなるのでしょうが。
それにしてもミナは本当に魅力的。
あのような少女が成長したらどんな素敵な女性になるのか見てみたいです。

四季さん、おはようございます!
とうとう読まれましたねー♪わー(笑)
確かにこの表紙は、いろいろ意見が分かれそうですね。
ハードカバーのときは、わたしもちょっと躊躇しましたもの。
そして、ハートネットの「小鳥たちが見たもの」を連想するのも、
なんとなくわかるような気がします。
あれにはわたしもかなりずしんときました。
スケリグがミハイルのイメージというのも、
なるほどなぁーと思いました。言われてみると、重なるなぁと。

この作品を甘し糧にしている理由…わたしにはうまく言葉にできなかったけれど、
四季さんの感想を読んで、そうか!って思いました。
さすが、四季さんです。読みも深い!
マイケルやミナのようなありのままの姿を受け入れる姿勢は、
わたしも学ばなくてはならないことだとも思いました。

森山さん、こんにちは!
この表紙ね、単行本時代からずーっと苦手意識を持ってたんですけど
見ると幼児虐待をイメージしてしまうからだということにようやく気づきました。
どうやら頭の中でそういうストーリーを作り上げてしまってたみたいです…
読んでみて、あ、そういうことだったのか。と腑に落ちました。
今頃気づくなんて(幼児虐待のイメージね)遅いんですけど。(笑)

うん、私もずっと児童文学だと思い込んでたんですけど、大人っぽい作品ですね。
でも調べてみたら、うちの地元の図書館では一般書扱いだったんです。
児童書にすると、読者を限定してしまうからかしら?
意図は分かりませんが、少年の物語だけど一般書で正解だなーと思いましたよ。
他の作品はどんな感じなんでしょう。興味が湧いてきました。
早く文庫になってくれるといいですね。

うんうん、ミナがどんな女性になるのか見てみたい!
あのお母さんがとても素敵だったので、きっと素敵な女性になると思います~。

ましろさん、こんにちは!
そうなんです、読みました。ましろさんのおかげですよ~。
とってもいい作品なのに、あやうくスルーするところでした…
背中を押して下さってありがとうございます。
「小鳥たちが見たもの」を連想したのは、この表紙のせいもあるのかも。
読み始める前から、もうなんだかドキドキしてしまいました。(^^ゞ

ええっ、そんな深いだなんて! 読みの浅さで定評がある私なのに。(笑)
でもほんと、漠然と感じてることはあってもうまく言葉に置き換えられなくて
本とパソコンを前に、うーん… と、しばし固まってしまいましたよ。
あ、ミハイル、分かってくださって嬉しいです♪
ただ、あの作品にはあのミハイルの造形がよく似合ってると思うんですけど
同じことをこの作品でしてしまうと、安っぽくなってしまいそうですよね。
この作品では、このスケリグの造形がとても重要だったような気がします。
でも見かけだけで判断してはいけない、なんて言うとまた上辺だけな感じだし
んんー、何て言ったらいいんでしょう。ここんとこ、ほんとうまく言い表せないんですが…
結局、「ありのまま」なんて言葉しか出てきませんでした。(^^ゞ

今見てみたら、公開されてないトラックバックフォルダにまっしろな気持ちからの
TBが入ってましたよ。とりあえず届いてくれたみたいです。嬉しい♪
こちらから先にTBしたのが良かったのかもしれないですね。

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