「くもの巣の小道」イタロ・カルヴィーノ

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トンネル露地の部屋に姉と2人で暮らしている少年・ピン。姉は売春婦。相手が敵兵でも気にしません。ピン自身はピエトロマーグロの親方の靴屋で働いているはずなのですが、親方は1年の半分は牢屋暮らしをしている状態。結局、たちの悪い悪戯をしたり卑猥な言葉や悪態を吐き散らしながら、大人の世界に首を突っ込む日々。2人の母は既に亡くなり、存命中は訪ねてきていた船乗りの父親も、それ以来すっかり間遠になっていました。ある日酒場の大人たちに、姉の客のドイツ人水兵からピストルを盗んで来いと言われたピンは、姉と水兵がベッドにいる間に部屋に忍び込みます。

第二次世界大戦中のイタリアが舞台に、落ちこぼれのパルチザンの部隊に参加したピンを描く物語。でもファシズムとか、それに対抗するパルチザンの存在は背景に過ぎないような気がします。迫ってはくるんですけど、実際の戦闘場面なんかほとんどないですしね。あくまでもピンの物語。

このピンという少年、大人と対等に付き合ってもらおうとして頑張って背伸びをしてるんですけど、実際にはちゃんと相手にしてくれる大人なんてなかなかいないんですよね。結局ただの悪たれ扱いされてる。だからといって、子供同士の仲間もいないんです。その辺りのお母さん連中は自分の子供に、あんな育ちの悪い子と付き合っちゃいけませんって言ってるぐらいですから。そして気がつけば、ものすごく孤独な存在になってるピン。話すことが下ネタばかりなのは、売春婦の姉と2人の暮らしが長いから。実はその話題しか知らないだけ。しかも大人相手に対等な口を利くためには、際どいことを言って注目を浴びるしかないと思ってるから。だから「ませた子供だ」とかそういうのとは、また全然違う。多少目端が利いてしまうだけに、逆にとても痛々しい。本当は歌がとても上手なので、そういうところで感心させればいいようなものなんだけど...
本当はまだまだ子供なのに、子供らしさが全然ないのは(子供らしさがないだけで、子供っぽさはある)、やっぱり戦争と家庭環境のせいなんでしょうね。せめて母親がもう少し長く生きていれば。それか戦争中でなければ。昨日までの友達が明日は敵になっていたり、味方だと思っていた人物が裏切って何人もの人間が殺されたり、という場面を目の当たりにさせられてしまうピン。戦争って、こんな風にして子供から子供らしさを奪うものでもあるんですね。ピンはどこに行っても居場所を探してます。そんなピンに差し伸べられた手は大きくて暖かかったんですが... 読後に残ったのは、圧倒的な哀しさでした。

でも、以前「カルヴィーノの文学講義」を読んだ時の印象では、この「くもの巣の小道」があんまり重苦しくなってしまったから「軽さ」を目指すことになったのかなって感じだったんですけど、この作品を読んでみるとちょっと印象が違っていてびっくりです。実際には、この作品にも既に十分「軽さ」があるじゃないですか。もちろん十分重くもあるんですけどね。「軽さ」がありながら、その視点は容赦なく実態を抉り出しているという印象です。(ちくま文庫)


+既読のイタロ・カルヴィーノ作品の感想+
「宿命の交わる城」イタロ・カルヴィーノ
「不在の騎士」イタロ・カルヴィーノ
「レ・コスミコミケ」イタロ・カルヴィーノ
「なぜ古典を読むのか」イタロ・カルヴィーノ
「まっぷたつの子爵」「木のぼり男爵」イタロ・カルヴィーノ
「イタリア民話集」上下 カルヴィーノ
「魔法の庭」イタロ・カルヴィーノ
「見えない都市」イタロ・カルヴィーノ
「マルコヴァルドさんの四季」カルヴィーノ
「冬の夜ひとりの旅人が」イタロ・カルヴィーノ
「柔かい月」イタロ・カルヴィーノ
「カルヴィーノの文学講義」イタロ・カルヴィーノ
「パロマー」カルヴィーノ
「くもの巣の小道」イタロ・カルヴィーノ
「むずかしい愛」カルヴィーノ

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