「ローマ人の物語 ユリウス・カエサル ルビコン以降」11~13 塩野七生

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ルビコン川を渡ったカエサルと彼に従う第十三軍団は、何の抵抗も受けずに北伊属州と本国ローマをへだてる境界の町・リミニの城に無血入城を果たします。ここで待っていたのは、現職の御民官・アントニウスとカシウス。四千五百ほどの兵しか持たずに、しかも戦闘に不向きな真冬のこの時期にルビコン越えなどしないだろうというポンペイウスと元老院派の予測を完全に覆したカエサル。その後の行動にも迷いがなく、ポンペイウスをはじめとする元老院派の多くが首都ローマを脱出することに。

ハンニバルが言ったという「肉体のほうが先に成長してしまい、内臓の発達がそれに伴わない」という言葉が、その通りなんだなあと実感できてしまう時代。
塩野七生さんのカエサルへの愛情が感じられるのは前巻と同じなんですが、面白さという意味ではこっちの方が上だったかも。前の巻では、「ガリア戦記」以前の話は面白かったものの、肝心の「ガリア戦記」が今ひとつ面白く感じられなかったんですよねえ。それは塩野七生さんがどうこういうよりも、元々の「ガリア戦記」のせいのような気もしますが。というか、それ以前に自分のせいですね、きっと。ガリア人の民族名とか個人名が全然覚えられなかったので... 「ガリア戦記」の簡潔な文章は素晴らしいし、そこからはカエサルの頭の良さがうかがい知れて、そういうところはすごいです。
そして文章的、内容的には「ガリア戦記」に劣るとされているようですが、こちらの「内乱記」の方が、私には読み物としては楽しいようで~。基本的にカエサル視点で描かれているので、ポンペイウスには若干不利なのではないかと思うんですけど、それでもやっぱりカエサルの方が格上ですね。11巻では軍人として、12巻では政治家としてのカエサルの姿が余すことなく描かれていました。戦時では力を発揮しても平時には失策ばかりのアントニウスや、平時には力を発揮できる才能があるのに軍事的才能が乏しいために、軍事的才能が豊かな若者がつくことになったオクタヴィアヌスなどを見てると、カエサルの非凡さがよく分かるー。ほんと先の先まで読んでたんですね。そしてカエサルにコピーライターの才能もあったというのは、まさに!(笑)
カエサルの周囲には様々な人がいたわけなんですが、その中ではキケローの姿が印象に残ります。政治的信条からカエサルの敵にはなっても、友人であることは一貫して変わらなかったというキケロー。知識はあっても先読みができないキケローは、なんだか肝心なところで損してばかりだったようにも見えるんですけど、カエサルの友情を信じながらもドキドキしてるキケローが妙に愛嬌があって可愛いです。書くことが大好きだったというキケローの手紙の書きっぷりも楽しいし。そういうキケローを通して見えてくるカエサルの魅力、というのもいいですね。でもほんとカエサル暗殺は、本当に尻すぼみだったんですね...。これほどまでにお粗末な暗殺だったとは。情けない。(情けないといえばアントニウスやクレオパトラもね)(新潮文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「ローマ人の物語 ローマは一日にして成らず」1・2 塩野七生
「ローマ人の物語 ハンニバル戦記」3~5 塩野七生
「ローマ人の物語 勝者の混迷」6・7 塩野七生
「ローマ人の物語」8~10 塩野七生 「ガリア戦記」カエサル
「ローマ人の物語 ユリウス・カエサル ルビコン以前」8~10 塩野七生(再読)
「ローマ人の物語 ユリウス・カエサル ルビコン以降」11~13 塩野七生
「ローマ人の物語 パクス・ロマーナ」14~16 塩野七生
「ローマ人の物語 悪名高き皇帝たち」17~20 塩野七生
「ローマ人の物語 危機と克服」21~23 塩野七生
「ローマ人の物語 賢帝の世紀」24~26 塩野七生

+既読の塩野七生作品の感想+
「コンスタンティノープルの陥落」「ロードス島攻防記」「レパントの海戦」塩野七生
「チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷」塩野七生

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 こんばんは。樽井です。
 こちらにカキコはひさびさです。イタロ・カルヴィーノ、置いてくれている本屋さんを発見しましたので、これでようやく読み始められます。一発目は「木登り男爵」にしました。
 さて。
 カエサルくん。これ、本当に面白かったですし、彼が卓抜した英雄であったということがよくわかります。あのしょうもないというか行き当たりばっかりで先行きも全く考えずにやってしまった暗殺がなければこのあとのローマ帝国がどうなっていたんだろうといつも思います。
 中国の英雄に比してもスケールの大きな英雄だったし為政者だったんだなぁとほんに思います。あの百分の一の能力でも麻生サンにあれば。。。

こんにちは。
まあこれは塩野さんの目を通したカエサル像ではあるのですが、
本当に魅力的ですね。
確かにキケロは面白いキャラクターですね。
無二の親友かと思えば、カエサルの暗殺に狂喜したりもしますが、
ある意味カエサル以上に感情移入できます。

「ガリア戦記」私はPHP出版のもので読みました。
これはこれで確かに面白いです。

>樽井さん
こんにちは~。おお、カルヴィーノを読まれますか。
「木のぼり男爵」というのは、とてもいいセレクトだと思います!
楽しい時間を過ごせますように♪

そしてカエサル。ほんとすごい人物ですよね。
もちろん今回私が読んだのは塩野七生さんの描いたカエサル像に過ぎないわけですが
ほんと惹き込まれました。
本当の意味でカエサルのライバルとなる人物(ハンニバルに対するスキピオのような)が
いなかったことだけが惜しかったなあ、と思うのですが、こんな人は1人で十分ですかね?(笑)
それとあの暗殺! あれは一体何だったんでしょうね。もうほんとしょーもない…
正直がっくりしましたよ。頭悪すぎ。

でもあのまま生き続けてたら、カエサルを失った時のローマはもっと打撃を受けたかしら、
なんて思ったりしたんですけど、その頃にはオクタヴィアヌスが育ってるわけだし…
なんだかもう付け入る隙がないですね。
中国の英雄と顔合わせさせても面白いかも? そういう小説書く人いないかな?(笑)
日本の政治家にも少し学んで欲しいですね。
歴史は繰り返すわけだし、古代ローマには学ばなくちゃいけないことが色々とありますよね。

>木曽のあばら屋さん
こんにちは~。
以前木曽のあばら屋さんに、カエサルの巻は超面白いと教えて頂きましたが
ほんと面白かったです。惹き込まれてしまいますね。
カエサル自身も魅力的だったんでしょうけど、塩野さんのカエサルに対する愛情がまた!
そして、キケロがこんなに愛嬌のある人物とは思ってなかったので、
今回はそういう点でも収穫がありました。
途中でシェイクスピアの「ユリウス・シーザー」「アントニーとクレオパトラ」を
併せて読もうかなと思ってたんですけど
それよりも「キケロー書簡集」「キケロー弁論集」なんかの方が楽しそうかも。(笑)

「ガリア戦記」は色々な版が出ていますね。私は岩波文庫で読んだんですが…
他の訳がどんな感じなのか、ちょっと見てみようと思います。

 ふと思いついて蛇足なカキコミですが。。
 カエサルの話といえば、かっこわるいカエサルを描いた作品として佐藤賢一さんの「カエサルを撃て!」という作品だったかと思うのですが、この作品のカエサルはかなりかっこわるいし性格が悪いです。いやみな時のナポレオンみたいな感じで描かれていました。ああいうカエサルは初めてでした。

樽井さん、こんにちは。
「カエサルを撃て!」という作品は初耳です。
佐藤賢一さん、ローマ時代のお話も書いてらしたんですか。
しかもかっこ悪くて性格も悪いカエサルだなんて! 珍しい~。(笑)
ちょっと手に取ってみたくなりますね。
教えて下さってありがとうございます。図書館にあるかしら。

そして樽井さん、木曜日がお誕生日だったんですね。
おめでとうございます~。
って、既に遅いし… ここで書いてしまってスミマセン。(^^ゞ
また改めてお伺いしますね。

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