「シャムロック・ティー」キアラン・カーソン

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一番最初の記憶は、寝かせられていた部屋の壁紙の色。色に興味を持ち、言葉を学ぶにつれて色のこと徐々に分かっていきます。緑色は嫉妬の色であり、希望の色であり、愛と多産の色。ナポレオンが流刑になったセントヘレナ島で死んだのは、寝室の壁紙に塗られたヒ素系鮮緑の顔料が毒気を発散していたから。1888年8月 27日、クラカトア火山島が噴火崩壊した後、空に輝いていたのは緑色の月。聖霊降臨節が終わってから待降節までの間、司祭が日曜日に着用するのは緑色の祭服。ローマ皇帝ネロが迫害を観覧したのは緑柱石のプリズムを通して。1434年7月20日、フランドルのブリュージュの町に現れたのは、緑色の肌をした男の子と女の子...

「琥珀捕り」と同じく、大きな流れがありつつ、枝葉末節がまたとても楽しい物語。今回は様々な色の乱舞があり、シャーロック・ホームズやコナン・ドイル、ブラウン神父、ウィトゲンシュタイン、メーテルリンク、オスカー・ワイルドその人や作品のエピソードが登場しつつ、様々な聖人たちの話があります。そしてそんな様々な小さな物語の要となっているのが、15世紀の初期フランドル派の画家・ヤン・ファン・エイクの「アルノルフィーニ夫妻の肖像」。ロンドンのナショナル・ギャラリー所蔵のこの絵は、人物像がとても独特で私は薄気味悪さを感じてしまうんですけど... 真ん中の鏡なんかを見ていると、まさにこういった物語を生み出すのに相応しい物語だなあって思いますね。
全体的な作りももちろん面白いんですけど、この作品の一番の魅力はこの枝葉末節な部分の楽しさというのは「琥珀捕り」同様。でも枝葉な部分が大きすぎて、全体的な枠を圧倒して、気がついたらひっくり返されてしまってるんですよね。次から次へと綺麗で楽しい夢を見させてもらっているうちに、はっと気づけばそういうことだったのか... と我に返ることになります。そしてシャムロック・ティーとは。作品そのものに酩酊させられてしまったような読後感。

本を読んでると時々、もう理屈でもなんでもなく「好きーーー!!」となる作品があるんですけど、これもその1つ。そういう作品って読み始めた瞬間、というよりも手に取った瞬間、いやもしかしたら本を目にした瞬間分かりますね。本屋でこの本を見た時、欲しくてたまらなくなりましたよ。その時は「琥珀捕り」も読んでなかったし、キアラン・カーソンという作家も知らなかったのに。でもそういうことってありますよね? そしてそういう直感には素直に従うのが吉。
一般的な意味ですごくいい作品、大好きな作品もいっぱいあるけど、これや「琥珀捕り」は、もうストーリーがとか登場人物がとかモチーフがとか、そういうのを超越したレベルで好きな作品。そんな本、1年に1冊出会えるかどうかだって分からないのに、今年は早くも2冊出会えてしまうなんて... すごいかも。(東京創元社)


+既読のキアラン・カーソン作品の感想+
「琥珀捕り」キアラン・カーソン
「シャムロック・ティー」キアラン・カーソン

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Commentaires(6)

こんにちは。

キアラン・カーソンの本、「琥珀捕り」もそうなんですがすごく気になってます!
読みたいとおもってるんですが・・・。
ただ、アマゾンのレビューなんかを見ると残酷な部分があったりするみたいで二の足を踏んでます。

というのは、私が読めない本があるとするならば、人間でも動物でも「暴力的」な描写があるものです。具体的に表現してないといいんですが・・・。

作品全体の雰囲気はすごく好きでいそいそと読み始めても、それが理由で挫折することもあります。(エーコの「薔薇の名前」なんかいい例です。未だにラストが気になります!)

ただ、そういう部分があったとしても「読むべき本」というのはあると思いますので、「シャムロック・ティー」も含めその辺どうなのか四季さんに教えていただけたらと思います。

すみませんが、アドバイス(?)よろしくお願いします!

Mrs.Holmesさん、こんにちは。
キアラン・カーソン、Mrs.Holmesさんも気になってらっしゃいましたかー。

ええと、「薔薇の名前」は、実は未読なんです。
私はMrs.Holmesさんとは違って、聖書の訳文が私の知ってるものと微妙に違うのが
気持ち悪くて仕方なくて読めなくなってしまったので…^^;
そういう理由で読めない人間、きっと珍しいと思います。人それぞれですよね。(笑)

で、シャムロック・ティーですが、確かにそういう場面もあります。
たとえば序盤にこんな文章がありました。

>マルガレータはたいまつの炎で焼かれ、絞首門に頭髪で吊るされ、油が煮えたぎる大桶に投げ込まれました。

殉教場面です。確かに陰惨ですよね。
でもどちらかといえば、歴史的記述のような乾いた印象でもあります。
私としてはそれほどでもないと思ったりするんですが… Mrs.Holmesさんにはどうでしょう?
むしろ綾辻作品みたいなミステリの方が、詳細に情景描写してると思うんですが…

「琥珀捕り」や「シャムロック・ティー」は、私は大好きなんですが、
ハマる人とハマらない人がはっきりと分かれてしまいそうな作品でもあります。
我慢してでも読み続ければ最後にはカタルシスが… というタイプの作品ではないので
あまり好みではない場合は、無理しない方がいいと思います。

でも、アマゾンのレビューを鵜呑みにして諦めてしまうのも勿体ないし!
実際に少しだけ試してみられたらいいのではないでしょうかー。
「シャムロック・ティー」なら、本文の5ページ目で上述の文章が出てきますし
最初の5~6ページだけでも、十分雰囲気がつかめるのではないかと~。
書店や図書館にあったら、ぜひぜひ試してみてくださいね。^^

アドバイス、ありがとうございました!

>我慢して読み続ければ最後にはカタルシスが・・・というタイプの作品ではないので

>最初の5~6ページだけでも、十分雰囲気がつかめるのではないかと~。

なるほどなるほど。非常にわかりやすい指摘をありがとうございました!

チャレンジしてみます!

Mrs.Holmesさん、こんにちは。
実際どうだったか、また教えてくださいね~。

四季さん、こんにちは。
シャムロック・ティー、やっと読めました。
琥珀捕りの姉妹編、と覚悟して読んでいたつもりでしたが、つながり方が琥珀捕りより緻密というか、渦が大きいというか・・・ほんとうに「酩酊」されました。くらくら。
あまりに膨大な「枝葉末節」なので、大切なことを10個以上は読み落としているに違いないです。再読するたびにきっと新しい発見にワクワクする本になりそうです。
琥珀捕りとこの本で一年くらい読み続けていられそう、ってすごく納得です。
(わたし、琥珀捕り、買ったものの、まだ一行も再読していないのです・・・でもいつでも読める♪と、手元に持っているのがうれしいな^^)

ぱせりさん、こんにちは~。
読了、おめでとうございます!(パチパチ)
うんうん、そうですよね。>渦が大きい
最初に様子を見つつそーっと足の先だけ突っ込んでみるんだけど
うっかり足を取られてしまうと、もう全身どっぷり浸かってしまって
そのままぐるぐるに巻き込まれちゃう。クラクラ。
でもその酩酊感がいいですよね。
あ、私もそんなにきちんと読みとれてないですよー。
多分いっぱい読み落としてると思います。
作者もそこまでは期待してないんじゃないかと…(笑)
再読するたびに新しい発見があるというのも、素敵ですよね!
そんな本が手元にまた1冊。
と思うと、それだけで嬉しくてニマニマしてしまいます。

ふふふ、1年ぐらい読み続けてられそうっ感覚がて分かって頂けて嬉しいな。
無人島に持っていくなら、こういう本がいいかもしれないですね。(笑)
後ほどゆっくりとお伺いいたします~。

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