「テロル」ヤスミナ・カドラ

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アミーン・ジャアファリは、ベドウィン(アラブ系遊牧民)出身でありながらイスラエルに帰化し、テルアビブの瀟洒な家で最愛の妻・シヘムと共に裕福で幸せな生活を送る外科医。しかしその幸せな生活は突然終わりを告げます。病院近くで自爆テロが起きたのです。怪我人たちの世話に追われてようやく帰宅したアミーンを待っていたのは、19人の犠牲者が出たその自爆テロの首謀者が妻のシヘムだという知らせ。シヘムが妊婦を装って腹に爆弾を抱えて自爆したのが、確かに目撃されていたのです。呆然とするアミーン。なぜシヘムが幸せな生活を捨ててそのようなことをしなければならなかったのか...。自らの容疑がようやく晴れたアミーンは、学生時代からの友人・キムの助けを借りて、妻の行動について調べ始めます。

幸せな人生だと思い込んでいたアミーンの土台が崩れ落ちる一瞬。その崩落感が見事に表現されている作品。よく知っているはずの自分の夫や妻が、実はまるで知らない面を持っていた、という物語は他にもありますけど、ここでは単に夫婦間の問題だけでなくて、民族的・政治的・宗教的問題も絡まりあうので、話はさらに複雑。しかも自爆テロというのはやっぱり強烈ですよね。妊婦の姿をして爆弾を抱えて自爆するなんて、余程の覚悟がない限りできないはず。幸せにしたつもりの妻にそのようなことをされるだけでも相当の衝撃なのに、徐々に事情が明らかになってきて、アミーンは妻のことを何も理解していなかったことを思い知らされることになります。幸せにしたと思っていたことが、自己満足に過ぎなかったということ。結局のところ、人間は自分の見たいものしか見ないってことなんですねえ。
イスラエルに帰化したアラブ人、という設定が、日本人である私には今ひとつ掴みきれてないとは思うんですが... 「カブールの燕たち」とは段違いに良かったです。(ハヤカワepiブック・プラネット)


+既読のヤスミン・カドラ作品の感想+
「カブールの燕たち」ヤスミナ・カドラ
「テロル」ヤスミナ・カドラ

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Commentaires(2)

コメントありがとうございました。
 下の作品もそうですが、これまた興味深い作品ですね〜。
 イスラエルとアラブの激しい憎悪の連鎖はわれわれには分かりきれないし、まかり間違っても分かったなんて言っちゃいけない話なんでしょうが、、こういう発想そのものが湧いてこないですし、それがリアリティをもって感じられる世界がそこにあるということにまずはっとさせられます。
 個人的には、この問題のそもそもの問題を起こしたイギリスにちょっと責任をとってどうにか解決して欲しいものですが、宗教も絡んでくるのでもはやどうしようもないくらいこじれにこじれちゃっているんでしょうねぇ。日本も韓国や北朝鮮・中国と一部ではものすごくごちゃごちゃとした関係ではありますけれど、ここまでくっきりとした世界はないですからねぇ。
 

樽井さん、こんにちは。
イスラエルとアラブの憎悪関係には、本当に凄まじいものがありますね。
この作品からもその一端を窺い知ることができましたよ。
日本人の私に本当に理解できるとは到底思えないですが、もっと色々と知りたくなりました。
そもそもね、私はイスラエルにいるアラブ人はイスラエルから出たがってるとばかり思ってたのです。
でもこの作品の主人公のように、ベドウィンだったのに逆にイスラエルに入るアラブ人もいて…
他にも色々と目からウロコな部分がありました。

欧米の介在によってさらにややこしくなってしまったアジアの地域、本当に多いですよね。
そうでなくても、元々民族的にも宗教的にも難しい問題が多い場所なのに。
その辺りも、島国育ちの日本人にはなかなか難しい部分ですよね。
でも「知らない」じゃあ、済まされないんですよねえ…
勉強しなくちゃ!

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