「むずかしい愛」カルヴィーノ

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トマーグラ歩兵が列車の車室で座っていると、そこに背の高い豊満な女性がやってきて、彼の隣の席に腰を下ろします。見た目はどこか地方の未亡人。他の席もあいているのに自分のようなむさ苦しい兵士の隣にわざわざ座るとは...? という「ある兵士の冒険」他、「ある○○の冒険」という形で統一された全12編の短篇集。

「ある○○の冒険」... うーん、「冒険」と言われてみれば確かに冒険とも言えるんですが、事前の準備をした上で乗り出していく類の冒険ではなくて、どちらかといえばハプニングに近いもの。日常の偶然から生まれたちょっとした出来事から発展した、ちょっとした冒険ですね。いつもの日常からほんの少しずれた場所で、主人公たちは何かしら新しい景色を見ることになったり、何かに気づかされることになる、そんな物語。そして「むずかしい愛」という題名なんですが、真面目な愛の物語というわけではありません。それどころか、解説には「愛の物語の不在」だと書かれているほど。

ここで語られているのは恋愛譚ではなく、愛の物語の不在である。現実の(とよべるかどうかさえ覚束ない)愛のなかでなら、おそらく誰もが感じるであろうコミュニケーションのむずかしさを、カルヴィーノは、それは困難なのではなく、ほぼ不可能と考えているらしい。愛を語ることは、その不在を語ることからしかはじめられない、というより、不在を語ることこそが愛を語る唯一の方法だということなのかもしれない。(P.220)

愛の不在とは言っても、そこに愛が全くないわけではないんです。主人公たちはいつもの日常からほんの少しずれた場所で、ごくごくささやかな、ほのかな愛を見出すことになるんですから。でもそこに生まれた愛が、一般的な意味での「恋愛」として成長することはなく...。そういった意味では、やはり「むずかしい」というのがぴったりなのかも。
短い物語がそれぞれになんだかとっても可愛らしかったです。読んでるうちにどこか不思議になってしまうほど、何ていうかまとまりがいいんですよね。ある意味、きれいにまとまりすぎてると言った方が相応しいかも? でもやっぱり可愛らしかったです。(岩波文庫)


+既読のイタロ・カルヴィーノ作品の感想+
「宿命の交わる城」イタロ・カルヴィーノ
「不在の騎士」イタロ・カルヴィーノ
「レ・コスミコミケ」イタロ・カルヴィーノ
「なぜ古典を読むのか」イタロ・カルヴィーノ
「まっぷたつの子爵」「木のぼり男爵」イタロ・カルヴィーノ
「イタリア民話集」上下 カルヴィーノ
「魔法の庭」イタロ・カルヴィーノ
「見えない都市」イタロ・カルヴィーノ
「マルコヴァルドさんの四季」カルヴィーノ
「冬の夜ひとりの旅人が」イタロ・カルヴィーノ
「柔かい月」イタロ・カルヴィーノ
「カルヴィーノの文学講義」イタロ・カルヴィーノ
「パロマー」カルヴィーノ
「くもの巣の小道」イタロ・カルヴィーノ
「むずかしい愛」カルヴィーノ

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Commentaires(2)

これはカルヴィーノとしてはとてもきれいにまとまった短編集でしたね。
四季さんはそろそろカルヴィーノ、コンプリートではないですか?
私はまだ「パロマー」「レ・コスミコミケ」を積んでいます。なんだか読むのがもったいないみたいな。

読むのがもったいないって、ものすごく分かります。
私ももう読むべき長編が残ってないのが、ものすごく寂しくてー。
あと評論とか短編が2~3冊あるようなんですけどね… ま、そちらはぼちぼちいきます。
それより「宿命の交わる城」辺りを再読したくなってきました。(笑)

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