「ロシア異界幻想」栗原成郎

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全6章でロシア人にとっての死生観や異界について語っていく本。
第1章 「この世」と「あの世」のしきい ... ロシアの農民への死の予告や死の迎え方、戻ってくる死者について
第2章 家の霊域に棲むもの ... ロシアの家の隅にしつらえられる祭壇やペーチカ、家神・ドモヴォイについて
第3章 ロシア・フォークロアにおける「死」の概念 ... 民族宗教詩や昔話の中の死
第4章 「聖なるロシア」の啓示 ... 民族宗教詩「鳩の書」について
第5章 ロシア的終末論 ... 反キリストについて
第6章 天国と地獄の幻景 ... スラブ神話における宇宙の成り立ち

ロシアの農民たちにとっての死や、ドモヴォイやペーチカについて書かれている最初の2章は具体的なエピソードが多いし、とても興味深いです。こういう土着の習慣や信仰というのは、ロシア文学を理解する上でも重要なポイントになるのかもしれないですね。そして第3章・第4章に出てくる民族宗教詩というのも全然知らなかったので、そういうのもとても勉強になりました。
でも私が個人的に一番読みたかったのは、キリスト教が入ってくる以前の純粋なスラヴ神話に関する第6章。そういう話はあんまり載ってないのかなーとちょっと諦め気味になってたので、これが本当に嬉しかった! 古代スラヴ人がそういった神話を書き残すすべを知らなかったために、その多くは失わせてしまっているというのが、ものすごく残念。でも少なくとも、古代スラヴ人は宇宙を巨大な卵として捉えていたようです。「宇宙卵」を産んだのは、世界を創造したと言われる2羽の「宇宙鳥」。

宇宙卵の殻は天、薄皮は雲、白身は水(大海)、黄身は地、である。黄身(地)は白身(水)に囲まれた形で卵の真ん中に浮かんでいる。黄身の上方の部分は人間の住む世界であり、下方は黄泉の国、死者たちの世界である。黄泉の国へ行くには、地を取り囲んでいる大海を越えて行かなければならない。あるいは深い井戸を掘って地を貫いて行かなくてはならない。

地(地上界と地下界を含む)と九つの天は一本の「世界樹」(「宇宙樹」)によって繋がれている

「世界樹(宇宙樹)と」いうのが面白いですね。これは北欧神話と同じ。しかも北欧神話でも、世界の数は全部で9つ。民族が違えば、たとえ住んでいる場所が距離的に近くても、まるで違う世界観を持っている方が普通なのに、この共通点は興味深いです。あと他の章にあったんですが、古代スラヴ人は、死ぬとみな卵とかガラスのようなつるつるとした高い山を登らなければならないと信じてたそうなんですね。そういう話も実際、北欧の民話を集めた「太陽の東 月の西」に載ってたし、思ってる以上に共通点がありそう。ああ、もっとこういう話が読みたいー。(岩波新書)

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