「心と響き合う読書案内」小川洋子

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未来に残したい文学遺産を紹介する、という趣旨のTOKYO FMのラジオ番組「Panasonic Melodious Library」を書籍化したもの。共通点は「文学遺産として長く読み継がれてゆく本」という一点のみで、古今東西の文学から様々な作品が選ばれています。そして本を選ぶ時に最も配慮したのが季節感だったそうで、そのまま春夏秋冬の4つのブロックに分けて、全52作が紹介されていきます。

国内外を問わず様々な本が、小川洋子さんの柔らかで穏やかな語り口で紹介されていくのが素敵です~。有名な本が多いので、本好きさんにとっては「あ、知ってる、それ読んだ」という本も多いでしょうし、読んでなくても題名は知ってる、という本が多いはず。私自身も既読の本がすごく多かったんですが、それでも色々な発見がありました。
例えば「秘密の花園」や「モモ」みたいに、私自身子供の頃に大好きだった本で、比較的最近に読み返している本は、小川洋子さんの書かれていることがほんと「分かる分かる、そうなのよね」という感じだし、例えば「ラマン」や「悲しみよ こんにちは」みたいに、まだ小娘(笑)だった頃に読んだきりの本は、今の自分ならどう読むのかなと思って新たに読み返したくなったし... この手が一番多いかも。(笑) そして気になりつつも何となく読んでいなかった作品は、私も読んでみたくてうずうず。
どれも印象的だったんだけど、特に印象に残ったのは「アンネの日記」でしょうか。小川洋子さん自身、アンネと同世代の中学の頃に読んだ時はあまりピンと来なくて、でも17~18歳の頃に読んだ時にはすっかり引き込まれたのだそう。ああ、分かる...! 私も、外国の女の子は日本の女の子よりずっと大人だとは聞いてたけど、これほどだったのかーなんて思った覚えがあります。(私自身が標準よりも子供っぽかったせいもあるんだけど) そしてアムステルダムのアンネの隠れ家を訪ねた時のエピソードに、小川洋子さんの思い入れがしみじみと感じられました。あと、小川洋子さん自身が母としての視点で読んでらっしゃる部分もとても印象に残りました。「窓ぎわのトットちゃん」のお母さんのはからい、「銀の匙」の伯母さんの包み込むような暖かさ、「流れる星は生きている」の最後の母親の安堵などなど。

斬新で鋭い視点に感服させられるというのではなくて、同じ感じ方に共感したり、また新たな一面を教えてもらったりという、もっと身近で親しみやすい読書案内。小川洋子さんご自身の立ち位置が、読者ととても近いのがいいんですよね。1人の作家としての視点もとても興味深いものでしたが、作家である以前に1人の読者として本を楽しんでらっしゃるのがとても伝わってきます。そして、長く残っていく文学作品というのは様々な面を持っているもの。同じ人間が読んでも、経験値や立場の変化でその都度新たな発見があるもの。だからこそ、その作品は時代を超えて残っていくんだと思います。私も小川洋子さんのように、そういった文学作品とは息の長い付き合いがしたいな、と改めて感じました。
ラジオでは紹介した本に因んだ楽曲を3曲ずつ放送していたのだそうで、その曲の一覧も巻末に紹介されてました。これまた多岐にわたったジャンルから選曲されていて、ちょっとした意外性が楽しいです。(PHP新書)


+既読の小川洋子作品の感想+
「寡黙な死骸 みだらな弔い」小川洋子
「沈黙博物館」小川洋子
Livreに「偶然の祝福」「博士の愛した数式」の感想があります)

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Commentaires(4)

こんにちは。
「斬新で鋭い視点」というより「同じ感じ方に共感したり、また新たな一面を教えてもらったり」・・・そうだそうだ、と今頷いています。わかるわかる、と感じたり、再読しなくちゃ、と思ったり、読んでいない本なら読んでみたいと思ったり、これって、小川さんが自分に近いところで、自分の側に立ってくれているからなんですね。
ほんとに小娘(^^)のときに読んだ本は、今読んだらどんな風に感じるだろうってわたしも思いました。
後ろについていた本に因んだ楽曲の一覧、わたしはちゃんと見ていなかったのですが、意外性ですか~。興味が湧いてきました。この本からなぜにこの曲?と考えるのも楽しそう。読まなくては~♪

ぱせりさん、こんにちは~。
これは本当に素敵な読書案内でしたね!
やっぱりこういう本には、選んだ人の人となりが出るんだなあと思いました。
読みたくなる読書案内は多いですけど、これほど再読したくなったのは初めてです。

場所が違いますが、ファージョンの本の小部屋のお話、嬉しかったです~。
あんな素敵なイメージを持っていていただけてたとは!
ああ、ほんとうに本の部屋で本に埋もれていられたら…
…なあんて言いつつ、実際、私もそんな家に育ってるのですが。(笑)
「ムギと王さま」、久しぶりに読み返したくなってきました。
特に「小さな仕立て屋さん」とか「西ノ森」とか、大好きで~。
なんて書いてたら、マーティン・ピピンにも久々に会いたくなってきちゃいましたよ。
ファージョン、いいですよね。大好きです。^^

四季さん、お邪魔します^^

四季さんがおっしゃるように身近で親しみやすい読書案内でしたね。

小川さんの作家としての視点はもちろん、母親としてまた本好きな同じ一読者としての視点もとても素敵でますますファンになりました。

>私も小川洋子さんのように、そういった文学作品とは息の長い付き合いがしたいな、と改めて感じました。

同感です!
未読も既読含め長く付き合える作品たちとの出合いを楽しみたいと思っています。

「ラマン」や「悲しみよ こんにちは」など、私は小娘(笑)の時に読んでなかったんです。
今からでも大丈夫かなと思いつつ・・・挑戦してみたいです。

はぴさん、こんにちは!
こちらにまで来て下さるなんて嬉しいです~。

読書案内って大好きなんですけど
書いてる人の人となりがほんと出るものだなあって、読むたびに思います。
これはほんと、親しみやすい読書案内でしたよね。
小川洋子さんの親しみやすさが大きな魅力になってるんだなあと思いました。
ラジオ番組も聞いてみたいです。
番組はまだまだ続いてるようだから、また続編も出るのかもしれないし
それが今から楽しみです~。それまでにここに載ってる本を読んでおかなくちゃ!

「ラマン」や「悲しみよ こんにちは」は、小娘(笑)の時よりも
ある程度大人になってから読んだ方が、本当の意味で楽しめるような気がします。
フランスの10代の女の子って大人すぎますよ!(笑)
それに憧れつつ読むのもいいと思うんですけどね~。

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