「アラン島」シング

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ダブリン大学を卒業後、音楽者を目指してドイツに行き、作家に転向しようとしてフランスに行ったというシング。ラシーヌに傾倒していたシングにイェーツが勧めたのは、アラン島を訪れること。シングはその勧めに従って1898年5月から1902年までの間に4回に渡ってアラン島に滞在して土地の人々にゲール語を習い、その土地に伝わる伝説や迷信を聞くことになります。これはその4回に渡るアラン島滞在記。

アラン島はアランモア(北の島)、イニシマーン(中央の島)、イニシール(東の島)という3つの島から成り立っていて、シングはその3つの島にカラハ(土地の人間の乗る小舟)で行き来しながら、島民の家に滞在してアイルランド語やゲール語を習い、土地の老人たちに様々な話を聞く日々。島の人々との生活ぶりが飾らない筆致で描かれていきます。最初は余所者扱いで少し距離があったんでしょうけど、徐々に島の生活に馴染み、島民と親しくなっていくシング。
ここに書かれているのは、ほぼ100年前の生活なんですが、私が以前からアイルランドという土地に対して持っていたイメージそのまま~。土地はあっても肝心の土があまりないから、土を大切に掘り出して砂と海草を混ぜて、平たい岩の上一面に広げて、そこでじゃがいもの栽培をするんですよ! 大変そうー。でも島の人々は素朴で暖かくて、自然体。ケルトの民話や妖精譚が自然に生活の中に息づいているのがとても素敵。島のおじいさんからも、後から後から妖精の話が出てきますしね。ここに出てくる妖精譚には既にどこかで読んだ覚えがあるものも多くて、この作品から知られるようになった物語もあるのかも? それにイェーツ辺りも同じように話を採取してたんでしょうね。そしてこの生活の中で得たものは、シングの戯曲の中で見事に実を結んでいるのだそう。そちらも読んでみたいな。
ただ、私が読んだこの岩波文庫の姉崎正見訳は最近復刊したものなんですけど、昭和12年当時の旧字・旧かな遣いのままなんですよね。みすず書房の栩木伸明訳の方が読みやすいのではないかと思います... この栩木伸明さん、「琥珀取り」「シャムロック・ティー」の方なので、読みやすさは間違いないかと。(岩波文庫)


+既読のシング作品の感想+
「アラン島」シング
「シング戯曲全集」ジョン・M・シング

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Commentaires(2)

こんにちは。
わたしは、アラン島についての前知識は何もなくて(なんと場所さえも知らなかったのです~)、さらにシングなんて一冊も読んでいなくて、ただこれは「燈火節」に出ていた本、というだけで読んだんです^^
それでもかなり楽しめましたが、やはり四季さんの文章を読みつつ、ああ、わたしの入れない小道や森にも入っていって楽しんでいる、いいないいな、と羨ましくなってしまいました。もっとあとでまた読んでみたい本です。
わたしは暖炉の火を絶やさないようにすることや、その火のそばで物語られるお話の雰囲気がとっても好きでした。
わたしの読んだのは、まさにみすず書房の「大人の本棚」(このシリーズもいいですね!)のものでした。この訳者さん、「琥珀取り」などを訳した人だったんですね。それはうれしいです。「琥珀取り」「シャムロックティー」狙っているのです。四季さんを追いかけたい、と思いつつ、なかなか追いつけずにいます。

ぱせりさん、こんにちは~。
私もシングなんて一冊も読んでなかったですよ!
というか、アラン島はアラン編みのセーターでうっすらと知ってましたが
「燈火節」を読むまで、シングの名前を聞いたことすらなかったという…(笑)
でもケルトを含めてアイルランドの文学は以前から好きなので
ほんのちょっぴりですが、入りやすかったというのはあるかもしれないですね。
ああ、暖炉を囲んでの団欒、そこで語られるお話、あの雰囲気は素敵でしたよね~。
土地の古老が物語るというだけでも思いっきりツボなのに(口承文学が大好きなんです)
ほんと、アイルランドではまだまだ妖精が生きてるんだなって思いました。

「大人の本棚」のシリーズも素敵ですね。
まだシュペルヴィエルの「海の上の少女」しか読んでないんですけど
これもすごく素敵だったんです。このシリーズも気になります。^^

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