「ダンセイニ戯曲集」ロード・ダンセイニ

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3年前に敵であるダルニアック王に敗れ、今は奴隷の身となっているアルギメネス王。奴隷たちと一緒に土を掘っている時に古い刀を見つけます... という「アルギメネス王」他、全9編の戯曲集。

劇作家としても有名だったというロード・ダンセイニの戯曲全9編。というか、日本に作品が入って来た最初のころは戯曲家として知られていたようです。私にとってはファンタジー作家なのだけど。いや、「ファンタジー」という言葉が軽すぎるように思えるほど、別格の存在なのだけど。

かつて王であったことを思い出すと怖くて仕方がないと言うアルギメネス王と、そういう思い出があることが幸せだと言う奴隷のザアブ。自分が反乱を起こしたら従うかと訪ねるアルギメネス王に向かって、たとえ本物の王ではあっても奴隷の外見をしている者にではなく、王らしい外見に従うと言うザアブ。短い戯曲の中にも人間の本質に触れるような様々なやり取りがあって、はっとさせられます。
ここに収められた9編の舞台はアラビアだったりエジプトだったりバビロニアだったりと、アイルランド出身のロード・ダンセイニにとってはエキゾティックな異国だったに違いない場所。そんな異国の美しさが際立ってます。特に印象に残ったのは、「何千の悪魔の親の、ひからびた欲深じじい奴!」なんて言われながらも、その美しさが目の前に広がるように感じられる沙漠。王の沙漠への渇望が我がことのように感じられるほど。そしてダンセイニは、カトリックが有力なアイルランドの人とは思えないほど異教的な神々を描く人なんですが、その異教の神々の姿もとても印象的。小説よりも、無駄をそぎ落とした戯曲という形式だからこそ、一層際立っているのかもしれないですねえ。「光の門」という作品では、天国の門が登場するんですけど、結局見えた「無」や聞こえてくる笑い声が何とも言えない...。それに他の作品でも、人間の小賢しい知恵にちょっぴり付き合って、いいように人間をもてあそび、それを何とも思わないような残酷な神々の姿が印象に残ります。何とも思わない、というのは、多少酷いことをしても心が痛まないとかそういうのじゃなくて、文字通りの意味で「何とも思わない」です。
それぞれの作品がちょっとびっくりするほど面白かったし、これらの劇が実際に演じられているところを観てみたくなりました。どこかギリシャ悲劇に通じるような気もします。ええとその場合はエウリピデスじゃなくて... アイスキュロスというよりもソフォクレスかな?(すみません、てきとーなこと書いてます) そしてこの戯曲は松村みね子さん訳で、それは先日読んだ「新編 燈火節」(感想)の片山廣子さんなんです。最初の時のままの旧字・旧かな遣いの訳が読みたかったなと思ってしまうのだけど、現代の仮名遣いに直しても、やっぱりいいですね。同じく松村みね子さん訳の「シング戯曲全集」もぜひ読みたいです。(沖積舎)


+既読のロード・ダンセイニ作品の感想+
「ぺガーナの神々」ロード・ダンセイニ
「魔法使いの弟子」ロード・ダンセイニ
「魔法の国の旅人」ロード・ダンセイニ
「世界の涯の物語」「夢見る人の物語」ロード・ダンセイニ
「妖精族のむすめ」ロード・ダンセイニ
「エルフランドの王女」ロード・ダンセイニ
「影の谷物語」ロード・ダンセイニ
「時と神々の物語」「最後の夢の物語」ロード・ダンセイニ
「ダンセイニ戯曲集」ロード・ダンセイニ
「牧神の祝福」ロード・ダンセイニ

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Commentaires(2)

こういう本を読んで「それぞれの作品がちょっとびっくりするほど面白かった」と言えちゃう四季さんってすごいです^^
いつか・・・いつか挑戦してみたいです。そのためにはもっと読書筋力つけなくては。
「最初の時のままの旧字・旧かな遣いの訳が読みたかったな」というの、わかります。(「燈火節」の月曜社さんはえらい^^)

ええっ、そんな取っ付きにくいような本じゃなかったですよー。
戯曲という形式で、どうしても好き嫌いが分かれるかもしれませんが
ロード・ダンセイニのほかの作品よりもシンプルな分、読みやすい気がします。
ぱせりさんの読書筋力なら、十分以上です。^^

ほんと月曜社さんは改めてすごいなって思っちゃいます。
ああいう本出すの、きっとものすごく勇気要りますよね。感謝感謝。

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