「やんごとなき読者」アラン・ベネット

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ある日、女王は散歩していた犬たちに連れられるようにして、厨房のドアの外に停まっていたウェストミンスター区移動図書館の車を訪れることに。この辺りは宮殿の中でもあまり来たことのない場所。昔からあまり読書に興味がなかった女王は、毎週のように移動図書館が来ていることすら知らなかったので驚きます。6冊まで借りられると聞いた女王は儀礼的に1冊選ぶのですが、これが実に読みづらく退屈な本。一応最後まで読むものの、それ以上読む気にもならず、女官に返却させてそれでおしまいになるはずだったのですが... 翌週、公務にうんざりして自ら移動図書館を訪れた女王が選んだのはナンシー・ミットフォードの「愛の追跡」。今度はすぐに夢中になった女王は、移動図書館で出会った厨房の少年・ノーマンの助けを借りて、次々に本を読み始めます。

ああ、面白かったーー。せいこさんに教えていただいた本です。
70代後半の、既に老人と言ってもいい年の人間が、その年になって本を読む楽しみに目覚めたら。
最初は全く興味のなかった「本」。でもふとしたことから読書の楽しさを知り、それがどんどんと広がっていく様子が、エリザベス女王を主人公として描かれていくんですから、これは本当に楽しいです。女王が読書に夢中になっていく過程は、同じ本好きとして「分かる分かる、そうなのよ!」だし、例えば「一冊の本は別の本へとつながり、次々に扉が開かれてゆくのに、読みたいだけ本を読むには時間が足りない」という文章とかね。しかも本を読み始めた時に、ちゃんと指南役兼読書仲間がいてくれたのが大きい! こういう人がいるといないとじゃ全然違いますよね。フィクションなのに、ノーマンがいてくれてほんと良かったわー なんて思ってしまいます。でも本に夢中になるにつれて、公務も以前ほど楽しめなくなるわけで... 少しずつ手を抜くことになるんですね。そんな女王に周囲は困惑顔。元々女王というのは特定の趣味を持つべき存在ではないのです。
この本の中での女王は、見る見るうちに難しい本を読みこなすようになります。もちろんそれはいい指南役がいたことも大きいでしょうけど、実際には経験値としては十分だと思うんですよね、女王って。公務で様々な人に会って世界中を見て回って、普通の人にはできないような経験をいっぱいしてるんですもん。
読書を通して以前よりも様々なことを考え、以前よりも人間の気持ちを深く理解できるようになり、自分自身についても考えることになる女王。そして最終的には本を読むことと書くことに関する考察へ。読書によって、こんなに大きな人間的成長を遂げることができるとは。

エリザベス女王といえば、私はエリザベス女王のメイドが探偵となるC.C.ベニスンの「バッキンガム宮殿の殺人」「サンドリンガム館の死体」「ウィンザー城の秘密」のシリーズを思い出したんですが(可愛いミステリです)、英国王室とか女王を取り上げた作品って結構多いですよね。いいことばかり書かれてるわけじゃないのに、英国王室って懐が深いなあって思います。日本だったら大変ですよね。あ、でも英国王室やその周辺の人は本を読まないから知らないだけだったりしてーー。(笑)(白水社)

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 <本好きにとっては必読の一冊。ひょんなことから読書に耽るようになったエリザベス2世。イギリス的滑稽さとユーモアに溢れているところも楽し... » Lire la suite

Commentaires(6)

四季さん、わたしもこの本とっても楽しみました。
読書好きにとっては、思い当たることがいっぱいで共感することしきり、女王様の読書環境の悪さ(?)に同情しつつ、振り回される周りの人びとのすったもんだも非情の心で楽しんでしまいました。
ただ、この本に出てくるイギリス人作家の名前が、悲しいことにまったく知らないのばかりで^^・・・もし知っていたらもっともっと楽しめただろうにと残念です。

>しかも本を読み始めた時に、ちゃんと指南役兼読書仲間がいてくれたのが大きい! こういう人がいるといないとじゃ全然違いますよね。
同感です~。
生活のなかでなかなかここまでの仲間に出会うって難しいだろうに、ネットのおかげで、こうして好きな本のお話ができる仲間に出会うことができて、嬉しいわたしです。
ほんとに読書仲間の存在って大きいですね~。読書の喜びがぐんとふくらみますもんね。感謝感謝です。

女王様つながりでおもしろそうな本のご紹介、うれしいです。C.C.ベニスン、チェックしておこう♪おもしろそうですね~。

面白かったですよね~♪

ダイアナ妃の名前も出てきて、大丈夫なのかしら?と思いましたw。でも、ほんとイギリス王室を題材にした作品って多いですよね。映画にもたくさんありますし。本も読まないし、映画も見ないんだったりして(笑)。

でも、さすが女王様だけあって、読書による人間的成長の度合いが著しくて驚きました。そういうところも良く描けてますよね、この作品。短くまとまっているけど、たくさんのテーマが盛り込まれていて、しかもユーモラスというのが素晴らしいと思いました。こういう作品を見つけちゃうことがあるので、ジャケ買いはなかなかやめられません(笑)。

>ぱせりさん
ほんと面白かったですね!
本好きなら頷かずにはいられないとこが多かったし
アラン・ベネット自身がそういう本好きなんだなーって思いました。
作家とか脚本家として売れてても、忘れてないというか。
あ、出てくる作家名は、私もあんまり知らなかったんですよ。
例えばヘンリー・ジェイムズは、いくつか読んでるのもあるんですけど
後期の作品がどうのって言われても分からないですしねえ。

女王が、やるとこではピシッとやってくれるところも気持ち良かったですよね。
溜飲、下がりました。
人的読書環境はイマイチだったけど、ご主人のエディンバラ公フィリップ殿下が
何も文句言わなかったでしょう? ちょっと意外でしたが、ほっとしましたよ。

ほんと、ぱせりさんと知り合えたのもネットのおかげだし!
やっぱり読書の輪が広がると、読書の幅もぐんと広がりますよね。^^

C.C.ベニスン、細かいところはあまり覚えてないんですが
とっても可愛かったのは覚えてるので、一度手に取ってみてください~。

>せいこさん
すっごく面白かったです!
自力ではきっと出会えなかったので、教えてくださってほんと感謝です~。
ありがとうございます。
あ、そうそう、映画もいろいろありますよね。英国王室が出てくる話。
映画の方がヤバいんじゃ…?と思ったりもするんですけど
もしかしたら、上流階級の方々は映画も全然観ないのかもしれないですね。(笑)
でもね、いくら貴族は本を読まないって言っても、みんないい大学出てるでしょう?
オックスフォードとかケンブリッジとか。
ジーヴス物でも思ったんですけど、みんなどうやって卒業したんでしょうね…?(笑)

あの成長の早さは、やっぱり女王だからこそなんでしょうね。
普段全然本を読んでなくても、そこらの人間とは素養が違いますもん。
うんうん、短いのに中身の濃い作品でしたよね。しかも楽しくて。
また素敵な作品があったら教えてくださいね!

四季さん、こんにちは♪
TBさせていただきました。
この作品楽しいですよね。
英国の王室って本当にあけっぴろげなんだなと思いながら、自分の読書環境が恵まれている点にも感謝しなくちゃと思いましたよ。

ノーマンはカズオ・イシグロと同じ大学に行ったのですよね。羨ましい限りですわ(笑)
まあとにかく与えられた環境で一冊でも多く読みたいと強く思いました。
今のところ今月のベストはこの作品か『夜想曲集』ですね。

トラキチさん、こんにちは~。TBありがとうございます♪
ほんと楽しい作品ですよね!
英国王室の人はこの本の存在を知ってるんでしょうかね~。
エリザベス女王本人が読んで面白くて夢中になる、なんてことがあれば
楽しいのに!と思うんですが、さすがにそれは無理かしら。(笑)

あ、そっか、カズオ・イシグロと同じ学校だったんだ!
それは羨ましいですねえ。私も行きたい。(爆)
「夜想曲」そんなに良かったんですね。やっぱりすぐ読むべきですかね?
ハヤカワepiに入るまで、あと3年ぐらいかかるのかしら。
短編は苦手なのでどうなのかしらと思いつつ
「音楽と夕暮れをめぐる」という言葉にとても惹かれたり…
ちょっと迷い中です。

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