「ジャッキー、巨人を退治する!」チャールズ・デ・リント

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恋人だったウィルが捨て台詞を残してアパートを去った後。自分で切り落としたザンバラ髪のまま外に出たジャッキーは、夜の公園で9台のハーレーが1人の少年を追いかけるのを見かけます。よく見るとそれは少年ではなく、子供のように小柄な男。黒ずくめのライダーから放たれた閃光は小男の杖を砕き、小男を崩れ落ちさせます。思わず小男に駆け寄るジャッキー。しかし小男は既に死んでいました。そしてジャッキーが目撃者らしき人影を探した後で再びその現場を見た時、そこに残されていたのは杖の破片だけだったのです...

これは古くから伝わる妖精物語を語りなおして1編の小説にするというシリーズ企画のために書かれた作品で、エレン・カシュナーの「吟遊詩人トーマス」(感想)も、このシリーズの1作として書かれたものなんだそうです。知らなかったー。そして現代を舞台にしたハイ・ファンタジーを書いてみたいとかねがね思っていたチャールズ・デ・リントが選んだのは「ジャックと豆の木」や「巨人殺しのジャック」やスコットランド民話に登場する「ジャック」。

カナダのオタワが舞台で、人間の世界と二重写しのように妖精の世界が存在している、というのが楽しいです。ここに住む妖精は大きく2つに分けられて、王に忠誠を誓う「祥(さきわ)いの民」と、巨人に仕える「祥(さが)なき民」。要するに善の存在と悪の存在ですね。存在することを人間に信じてもらえないと健康を保てない「祥いの民」(善)は、現在どんどん力を失い、数が減りつつあるんですが、それとは逆に「祥なき民」(悪)は力を強めてます。この「祥なき民」はさまよう死者とか幽霊とか、ホラーの本や映画の中に出てくるような存在なので、信じられてはいないまでも人々が興味を持って恐れてるからっていうんですね。この設定が面白いです。確かに「信じてない」という意味では同列だとしても、幽霊や死者を怖がってるというのはありますもんねえ。すごくうまい設定かも。
鉄に弱い妖精も人間社会の近くに住むことによって鉄に耐性をつけちゃってるし、「死の狩人」はハーレー・ダヴィッドソンを乗り回してます。キーがなくとも車のエンジンをかけて乗り回せる妖精もいます。そんな現代的な妖精とは対照的に、主人公のジャッキーは素朴な19歳。パーティやバーなどの喧騒にはまるで興味がなくて、本が好きで家にいるのが大好き。7歳の頃から切ってない金髪に、着ているものはだぶだぶのチェックのシャツに履き心地のいい古びたジーンズという、まるでヒッピーのような姿。人間と妖精が逆転してるみたいなとこも面白いです。そしてあくまでもジャックが中心とはいえ、「ケイト・クラッカーナッツ」やビリー・ブラインド、白鳥になった七人兄弟の物語など色んな民間伝承の素材が作品の中に登場してるのも楽しいところ。
でも、んんー、面白かったんだけど、あまりに勇気と幸運頼りになっているのが気になってしまうというのもあったんですよね。どうしても都合が良すぎるというか。ジャックはそういうキャラクターなんだと言われても、って感じです。「リトル・カントリー」ほどの作品とも思えなかったし、続編「月のしずくと、ジャッキーと」は読むかどうか迷い中。(創元推理文庫)


+既読のチャールズ・デ・リント作品の感想+
「リトル・カントリー」上下 チャールズ・デ・リント
「ジャッキー、巨人を退治する!」チャールズ・デ・リント

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