「シング戯曲全集」ジョン・M・シング

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雨の夜、細長い山間の奥にある農家にやって来たのは旅の男。一夜の宿を求めて来た男は、部屋に死体があるのを見て驚きます。自分がいきなり死んでも、妹以外は誰も決して体に触ってはいけない、触ると呪いがかかる、と言っていた亭主の言葉を守って、おかみさんが1人で守っていたのです... という「谷の影」他、全6編。

「新編 燈火節」(感想)を読んだ時から読みたいと思っていた「シング戯曲集」。片山廣子さんは松村みね子名義でいくつか翻訳を手がけていて、これもその1つ。以前読んだ「かなしき女王 ケルト幻想作品集」(感想)や、先日読んだ「ロード・ダンセイニ戯曲集」(感想)も、松村みね子訳です。
同じシングによる「アラン島」も先日読了済なんですが... この戯曲を読むと、アラン島での体験やそこで聞いた物語が本当に劇作に生かされてるんだなあというのがよく分かりますね。最後の「悲しみのデアドラ」だけは、ケルト神話に残る逸話がモチーフとなってるんですけど、それ以外の5編はどれもアイルランドの貧しい人々を主人公にしたもの。実際に舞台設定が島になってるのは1編だけですが、「悲しみのデアドラ」以外はどれもアラン島におきかえても構わないような作品ばかり。実際、上にあらすじを書いた「谷の影」は、シングがアラン島で聞いた話の中に入ってましたしね。シングにとって、アラン島の存在って本当に大きかったんですね。ドイツやフランスに遊学し、アラン島に長期に渡って滞在していたシングという人は、きっと経済的にとても恵まれた家の出身だったんだろうと思うんですが、貧しい人々の暮らしを身近に知ったのも、アラン島に行ったからこそだったのかもしれません。
そしてシングの作風は、異教の香りの感じられる「ダンセイニ戯曲集」とはまるで違いました。だから訳文の雰囲気が全く違うんです。ダンセイニの訳では格調の高さが感じられたんですが、こちらはとても庶民的。貧しくも逞しく生きる民衆の姿が目の前に迫ってきます。そして意外なほどユーモアたっぷり。私としてはダンセイニの方が好みなんですが、「新編 燈火節」を読んだ限りでは、松村みね子さんの中ではシングの存在の方が大きかったのかな? 松村みね子さんといえば良家のお嬢様として育ったはずなので、それが少し意外ですが... でもこちらも楽しかったです。(沖積舎)


+既読のシング作品の感想+
「アラン島」シング
「シング戯曲全集」ジョン・M・シング

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