「ポポイ」倉橋由美子

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近未来。生首を預かってもらえないか、と婚約者の佐伯に言われた舞は驚きます。それは数日前に、今でも政界で大きな影響力を持つ元首相である舞の祖父の所に乱入したテロリストの首。その晩、祖父が脳梗塞で倒れたため、祖父とテロリストとの密談の内容は不明であり、佐伯は生首を最新の医療技術で保存することによって何らかのことが探り出せないかと考えていました。舞が引き受けると、佐伯は早速生首を舞の元へと運びます。舞はその生首に「ポポイ」という名前をつけることに。

声明文を読み上げて切腹、といえばもちろん三島由紀夫なんですけど、首だけになった美少年と聞いて私がまず思い浮かべたのは「サロメ」。やっぱりこれは「サロメ」でしょう~。生首が舞の部屋にやって来た時に、舞が「私の予想ではそれは銀の盆に乗っているか青磁の水盤に活けてあるはずだったけれど」と思う部分があるのですけど、ここからしても明らかにそうですよね。サロメと舞の印象も、どこか似通ってる気がします。少女から大人の女になる、まさに境目の時期にある女性たち。少女の残酷さも大人の女のエロティックさも持ち合わせてて、男性は振り回されずにはいられない... というか。うーん、うまく表現できませんが。でも美少年の生首にポポイなんて名前をつけて、髭剃りをしたり男性用のパックをしたり、古代ローマ人風に髪型を整えたり、音楽を聞かせたりするなんて、悪趣味極まりないと思うんですけど、それが何とも言えない世界を作り上げていますね。本当はとてもおぞましい情景のはずなのに、この上なく美しくも感じられてしまうのが不思議。...そして読み終えた後に思い浮かべたのは、ボリス・ヴィアンの「日々の泡」でした。話そのものは全然違うんですけど、この作品の首が、あの睡蓮となんだか印象が重なってしまって。
倉橋由美子さんの小説を読むのは、実はこれが初めてなんですが、この作品の中ではそれほど重要ではない登場人物でも既にかなり造形が出来上がってるんですねー。不思議に思って調べてみたら、舞の祖母・桂子を中心とするシリーズがあるようで。彗のことなんかもすごく気になるので、ぜひ他の作品も読んでみたいなあ。(新潮文庫)


+桂子さんシリーズの感想+
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+既読の倉橋由美子作品の感想+
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倉橋由美子「ポポイ」 穏やかではないかもしれないけど、これは美少年の首を飼う物語。「ポポイ」というのは、主人公の舞がこの首につけた名... » Lire la suite

Commentaires(4)

四季さん、こんばんは。
『ポポイ』、何とも耽美な佇まいでよいですよね~。
サロメと聞いて、うんうんと納得!そして、睡蓮もしっくりきてまたまた納得!
わたしは物語に出てくる音楽も印象に残りました。
嗚呼、再読せねば!!!

桂子さんシリーズは一冊きりしか読んだことがありませんが(絶版もちらほら)、
なかなかよいですよー。
物語にのめり込んでしまいます。
ほろ酔いな感じになってしまいます。

ましろさん、こんにちは~。
そうそう、音楽も印象的でしたよね。特にドビュッシー!
あの雰囲気にはとても馴染んでたんですけど
この少年が本当にドビュッシーを好むようになるのかと思いつつ…
でもやっぱり普通の状態じゃないんですものね。
私も思わずかけてしまいましたよ。(笑)
聡子さんの作ったディスク、聴いてみたいです。

桂子さんシリーズ調べてみたんですが、ほんと絶版が多いですよね。
新品で手に入るのは「よもつひらさか往還」だけ?
図書館や古本屋で探してみようと思います。

うんうん、ほろ酔いな感じになりますね。癖になりそうです。^^

四季さん、こんばんは。
すっごい久しぶりにトラバが通りました、わーい♪

倉橋さんのお話は、あちこちで繋がっているんですよね。
私は絶版本を気付かずに持ってるんですが(ブログに記事書いて、コメントで絶版だと教えていただいたり)、
桂子さんシリーズの「夢の通い路」とか、「倉橋由美子の怪奇掌篇」など、短編が読み易いように思います。
長編の「スミヤキストQの冒険」も読み直してみようと思いつつ、そのまんまなんですよねえ。

つなさん、こんにちは~。
わあほんとだ、TB通りましたね。嬉しい!
それに毎回トライして下さってありがとうございます~。
通ったことももちろんだけど、そのことがとても嬉しい私です。^^

倉橋さんの本、なんだかもうやたらと絶版だらけですよぅ。
好きな方は多いと思うのに、なんででしょうね。
「聖少女」は復刊されたみたいだし、ぼちぼちと出てくれるといいんですが…。
つなさんはいろいろお持ちなんですね。羨ましいです。

短編の方が読みやすいんですか~。そうなんだ。
「夢の通い路」「倉橋由美子の怪奇掌篇」ですね。今度探してみます!
ありがとうございます。

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