「猫町」「萩原朔太郎詩集」萩原朔太郎

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ここには書かなかったんですが、先日パロル舎の「夢十夜」「猫町」「冥途」を再読したんです。金井田英津子さんの挿画は、もちろんとても素晴らしいんですけど... ! でもこれはあくまでも、金井田英津子さんがこれらの作品に持たれたイメージ。あまりにぴったりすぎて、そのことをすぐ忘れてしまうんですが。で、なんだか無性に文字だけの本が読みたくなって、こちらを手に取ることに。

「猫町」の方は、3部構成。第1部は「猫町」「ウォーソン夫人の黒猫」「日清戦争異聞(原田重吉の夢)」という小説が3編、第2部は散文詩が13編。そして第3部は随筆が2編。
どれも読み応えのある作品ばかりなんですが、やっぱり「猫町」が突出してますね。ごくごく平凡な日常の風景が、ある時点でくるりと反転してしまう、そこの妙。これが素晴らしい。それまで長々と書かれてきたことは、全てこの一瞬のためだったのか、と、改めて感じ入ってしまいます。何度読んでも素晴らしい~。そしてこの作品は、解説によるとアルジャノン・ブラックウッドの「古き魔術」という作品も似た趣向の作品なんだそうです。朔太郎がその影響を受けているのかどうか、そもそもその作品を読んでいたのかどうかは不明なんですが、そちらもぜひ読んでみたいな。
そのほかの作品も良かったです。散文詩というのも意外と好きな自分を発見したり。(笑) 特に印象深かったのは、親交のあった芥川龍之介の死にも触れている「老年と人生」かしら。「老いて生きるというのは醜いことだ」と考え、30歳までには死のう、いや、40歳までには、と考えつつ老年に達してしまった萩原朔太郎。でも老いて初めてその楽しさを発見したり、案外肯定的に人生を捉えるようになるんですよね。それがちょっぴり意外ながらも興味深くて。

そして「萩原朔太郎詩集」は、「純情小曲集」「月に吠える」「松葉に光る」「青猫」「蝶を夢む」「桃季の道」「氷島」「散文詩」といった詩集から、三好達治が選んだ代表作を収めたもの。
基本的に詩心があまりない私なので、自由詩はよく分からなくて、どちらかというと定型詩を好むんですが、萩原朔太郎の詩はとても好き。特に初期の作品集である「月に吠える」は、朔太郎ならではの明るく鮮烈な若々しさ、そして生きる力をとても強く感じる作品群だと思います。何かといえば物が腐るし、どちらかといえば精神的に不安定なものを感じる方が当然なのに、そんなところに生きる力を感じるのもどうかと思うんですが(笑)、そこは詩心のない人間の戯言と思って流していただければ。いや、でもこんな詩を書く人が自ら命を絶つことなく寿命を全うしたというのが逆に信じられないほどですけどね。本当に。
印象深いのは、朔太郎特有の表現。「おわあ、こんばんは」と挨拶する猫、「ぎよ、ぎよ、ぎよ、ぎよ」と鳴く蛙。 「ぶむ ぶむ ぶむ ぶむ ぶむ ぶむ」という蝿の、「てふ てふ てふ てふ てふ てふ てふ」と飛ぶ蝶。「のをあある とをあある やわあ」と遠吠えする犬。「じぼ・あん・じゃん!じぼ・あん・じゃん!」という柱時計の音... やっぱりこの人の感性は面白いな。(岩波文庫)

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Commentaires(2)

hachiro-86と申します。はじめまして!
いつも楽しみに読ませていただいてます。

どの感想からも、本が好きでたまらないという
四季さんの気持ちが伝わってくるので、
読んでいてこちらまで楽しくなってしまいます。
私も読書日記のまねごとのようなモノをやっていますが、
いやはや、質といい幅の広さといい、
いつも仰ぎ見るばかり……。

そうそう、その読書日記のタイトルに「青猫」を入れてしまったほど、
私も萩原朔太郎の詩は大好きです。
あの幻想的で都会的な、
でもどこかあたたかくノスタルジックな雰囲気、
他にはちょっと見当たらないような気がします。

なので、こちらで紹介されているのを読んで
なんだかうれしくなってしまいました。
いったんは読みっぱなしにしてしまったのですが、
やはりそれではおさまらないものがあり、つい一言。

ブラックウッドの「古き魔術」ですか…。それは知りませんでした。
探してみようかな。

これからも更新たのしみにしています。
では。

hachiro-86さん、はじめまして。
いつも見て下さってるなんてありがとうございます~。
本が好きでたまらないというのが伝わりますか。嬉しい!
いや、私の感想は、ほんとそれだけなので…(笑)
質なんてとんでもないですよー。幅の広さも。
こればっかりはなかなか難しいですね。

萩原朔太郎の詩は、本当に不思議ですね。
学校の教科書で「竹、竹、竹が生え」とか「のをあある とをあある やわあ」
「いいえ子供、犬は飢えているのですよ」といった表現に出会って
もう、一瞬で心を鷲掴みにされちゃいました。
ほんと、すごく個性的ですよね。確かにちょっと見当たらないです。

あ、「竹」を読む時だけは、種田山頭火の「分け入つても分け入つても青い山」思い出すんですが~。(笑)

乱歩も「猫町」と「古き魔術」をこよなく愛していたそうです。
「古き魔術」って、短編なんですよね。どこに入ってるんだっけ…
と今調べてみたら、創元推理文庫の「ブラックウッド傑作選」にあるみたいです。
こちらでは「いにしえの魔術」という邦題になってます。
でも既に絶版みたい。しかも市内の図書館にも蔵書がない…

コメントいただいて、すごく嬉しかったです。
hachiro-86さんのブログもぜひ拝見させていただきますね。^^

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