「水曜日のクルト」大井三重子

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お気に入りのバラ色のベレーをかぶり、口には大きなパイプ、そして手にはこうもりがさを持って雑誌社に出かけた絵描き。しかし確かに編集室のドアの脇に立てかけておいたはずのこうもりがさがなくなってしまい... という「水曜日のクルト」他、全6編の作品集。

大井三重子さん名義になってますが、これは実は仁木悦子さんのこと。仁木さんがミステリ作品で有名になる前に書いてらしたという童話作品をまとめた唯一の本。...というのを、迂闊にも全然知らずに読んだので! 解説を読んでびっくりーーー。そうだったのですかーーー。でもそう言われてみれば、童話も書いたって、どこかで読んだ気もする...。(大ボケ)
仁木さんの作品は、あまり沢山は読んでないんですけど、「猫は知っていた」なんて大好き! 明るく軽やかで、優しさがにじみ出てくるような作風が、とても素敵な作品。こちらの童話もやはり明るくて軽やかで、優しい作品群でした。どこか国籍不明な、別世界に1歩踏み出している感じも楽しくて。この表紙の絵も可愛いですよねえ。
大切な物を失くして絵描きが困っているのは分かるんだけど、「水曜日のクルト」のいたずらぼうやはやっぱり微笑ましくなってしまうし~、自分の過去を改めて直視させられてしまう「めもあある美術館」も、思い出の中のおばあちゃんの優しさや暖かさが伝わってくるような作品。「ある水たまりの一生」は、「しずくのぼうけん」のような可愛らしいお話だし、「ふしぎなひしゃくの話」はアンデルセンの童話にでも出てきそう。水たまりや靴屋のおじいさんの、他人の悪意に傷つけられながらも、影響されたりしない純粋な心が印象的。「血の色の雲」はとても哀しいお話なんですが、これは大井三重子さんの実体験に基づくものなのだそう。戦争とは、大切な人を守るために他の人を殺すこと。「ころさないで、死なないで」というリリの叫びが胸に痛いです。「ありとあらゆるもののびんづめ」も、素敵! 金物屋のご夫婦の決断は、実際にはなかなかできないものなのではないかと思います。素晴らしい。みんなの優しい心が回りまわって、彼のところにめぐってきたんですね~。という私が一番好きだったのが、この「ありとあらゆるもののびんづめ」なのでした。
そういえば、「ふしぎなひしゃくの話」に登場するひしゃくは「アピトロカプレヌムのひしゃく」と言う名前なんですけど、この名前には何か由来があるのでしょうか? なんだかいわくありげな名前で気になります。(偕成社文庫)

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Commentaires(4)

四季さん、こんばんは。
国籍不明でアンデルセンの童話に出てきそうな、ほんとですねー。少し悲しいお話とかも、透明な感じがして、素直に好きだなあ、と思いました。
「ありとあらゆるもののびんづめ」のあの金物屋のご夫婦、ほんとにそうですよね。できないですよね。こういう人たちだからこんなすてきな贈り物をもらったのかな。
「ふしぎなひしゃく」の「アピトロカプレヌムのひしゃく」、そういわれてみれば、気になり始めました! ほんとに何か由来がありそうな。もしそうなら意味、知りたいです~。
仁木悦子さんの推理小説、未読なんですよー。ぜひぜひ読んでみたいです。まずは「猫は知っていた」を読みたいな。

ぱせりさん、こんにちは~。
ほんと素敵な童話集でしたよね。
アンデルセンや、あとトルストイなんかも思い浮かべながら読んでました。
「ありとあらゆるもののびんづめ」は、やっぱりあの金物屋のご夫婦ですよ!
こういうきちんとした普通の感覚の持ち主って、なかなか出会えないですもん。
(自分だって、そう思いつつ実行できるかどうかは謎だし・笑)

「アピトロカプレヌムのひしゃく」、ものすごく気になります~。
きっと何かあると思うんですけど、こればっかりは全然分かりません。
何か分かったら、ぜひ教えてくださいね。

「猫は知っていた」だけの本は今は絶版と思うんですが、図書館なら置いてるかな?
上に画像を出した本にも入ってるはずなので、ぜひぜひ♪

四季っち、こんにちは~。
この本の存在は何年か前に知ったんですが、
ネットの古書店でも全然出回ってなくて…。
殆ど諦めかけてたところへの復刊話で、とっても嬉しい!

可愛らしくって優しい童話ですよね~。
その一方で、死の影がちらちらしてて、
なんだか切なくなってくるんです。
お兄さんのことやご自身の病気の影響なのかなぁ。
ただ甘いだけの物語じゃないところが、
この童話集の魅力にもなってるんですけどね。

sa-kiっち、こんにちは。
わあ、この本のことご存知だったんですね。さすが!
やっぱり仁木悦子さんからでしょうか。
私なんて、今回の復刊で初めて知りましたよー。
それでなんか気になるしと読んでみたら… なんとなんと!でした。(笑)

うん、ほのかに切なさとか寂しさが漂ってますね。
例えば、安房直子さんも、明るい楽しい甘いだけじゃないでしょう?
そんな感じを思い出しました。
もしかして同年代ぐらいなのかしら?と思って調べてみたら
15年ぐらいズレてましたが~。

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