「交歓」倉橋由美子

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山田が脳卒中で亡くなり、初七日がすぎると、桂子さんは研究室を片付けるために大学へ。山田が使っていたBRAINと呼ばれているコンピューターを自宅に持ち帰ります。書斎でマニュアルをめくっていると、そこから出てきたのはBRAINを試作した会社の会長・入江晃という人物の名刺。桂子さんは、山田が入江のことを大学の教養課程の時の級友だと話していたことを思い出します。告別式にも入江からの生花が届いていました。そして林龍太から無名庵を買い取った人物も、おそらくその入江なのです。

桂子さんシリーズ。先日読んだ「城の中の城」から、ほぼ10年後のお話。桂子さんは40歳、智子さんは16歳、貴くんは15歳、山田氏はいくつぐらいなんだろう。60代になる一歩手前ぐらいでしょうか。優子さんというお嬢さんも生まれていたようですね。宮沢耕一にも色々と変化があったようで、現在はパリ在住。
この作品で一番大きいのは、とうとう入江氏が登場したこと! もっと年配の人なのかと思ってたんですけど、山田氏と級友だったのかあ。あ、でももうじき60代(推定)となると、やっぱり年配とも言えるのでしょうか。既にかなりの人脈と金を持ってるようですが、まだ政界入りを果たす前。「ポポイ」を読んだ時、なんで愛人なんだろう...?って思ってたんですが、これを読むとなんとなく理解できるような気がしました。
途中でギリシャ神話の話も登場していましたが、まさに神々の交歓といった印象。でもたとえ入江氏がゼウスだとしても... いえ、入江氏はゼウスみたいな好色な人物ではないんですが、存在感的にゼウスはぴったり。でも、桂子さんに当てはまる女神が案外といないものですねえ。ヘラは似合わないし、知的なところからアテナ... というには桂子さんは色っぽすぎるし。逆にアプロディーテーというには知的すぎますしね。時にアテナのように、時にはアプロディーテーのように。時と場合によっては大胆に振舞うこともできるのが、桂子さんの一番の魅力。こういう人物を、女性作家が描いたというのがいいんでしょうね。男性作家が書いたら、印象がまるで変わってしまいそうです。でも、倉橋由美子さんという方の思考回路には、男性的な部分も多く入っていたに違いない...。ま、こんな人、本当にいるのかしらー?!とは思うんですけどね。そこはそれ、やっぱり「神々の交歓」だから。ということで。(笑)(新潮文庫)


+桂子さんシリーズの感想+
「ポポイ」倉橋由美子
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「城の中の城」倉橋由美子
「交歓」倉橋由美子
「夢の通い路」倉橋由美子
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+既読の倉橋由美子作品の感想+
「偏愛文学館」倉橋由美子

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Commentaires(2)

四季さん、こんばんは♬

久しぶりに「城の中の城」「交歓」を読み返してみました。
山田氏は、都合良く(!)あちらへ旅立ってしまいますね(笑)。
「城の中の城」では専守防衛で、「大きくておとなしい犬」などと言われていた山田氏でしたが、Brainの中身から思いがけないほどの底知れなさが明らかになって、ゼウスではないにしてもやはり神々の一人だったようです。
四季さんのおっしゃる通り、ゼウスのような入江さんをパートナーに得ても、桂子さんはヘラではないですね。女神ではあるのでしょうが、両性具有的...こちらも底知れない女性ですが、入江さんなら大丈夫ではないかと...(笑)

作中の編集会議や文学論がとても面白く、「偏愛文学館」に通じる倉橋さんの趣味の一貫性を感じます。
こういう小説を読んで「格差」などと野暮なことを言ってはいけない訳で...(笑)
作者の趣向で上等なご馳走を美味しく頂いた...と満足すればよいのでしょうね。

Bonoさん、こんにちは~。
倉橋由美子さん、命日だったのですね。
Bonoさんが久々に読まれたというのは、その関係なのでしょうか。

山田氏は、ほんと都合良く、でしたね。(笑)
「夢の浮橋」の時から印象がどんどん変化してしまって
結局この人はこの人で底知れない人だったなあと、ちょっと驚きましたよ。
確かにこの人も神々の1人ですね。
でも一度入江氏が登場してしまうと… 入江氏はやっぱり器が違いますね!
桂子さんと、とてもお似合いだと思います。底知れない2人~。
あ、確かに桂子さんは両性具有のようでもありますね。^^

倉橋由美子さんの作品って、今回の文学論もそうだし
「城の中の城」のキリスト教病気論もそうだったんですけど
枝葉の部分がすごく面白いですね。

>作者の趣向で上等なご馳走を美味しく頂いた...

ほんと、まさにそんな感じですね!
結構なお手前でございました。(って、お茶席ではないのだけど・笑)

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