「リンゴ畑のマーティン・ピピン」「ヒナギク野のマーティン・ピピン」ファージョン

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4月のある朝、アドバセン近くの牧草地を歩いていたマーティン・ピピンは、道端の畑でカラス麦の種をまいている若い男を見かけます。一握りの種をまくごとに、種と同じほどの涙の粒をこぼし、時折種まきを全くやめると、激しくむせび泣く男の名前はロビン・ルー。彼は美しいジリアンに恋焦がれていました。しかしジリアンは父親の井戸屋形に閉じ込められ、男嫌いで嫁にいかぬと誓った6人の娘たちが、屋形の6つの鍵を持ってジリアンを見張っているというのです。マーティン・ピピンはロビン・ルーの望み通り、ロビンの持つプリムラの花をジリアンに届け、代わりにジリアンが髪にさしている花を持ってくるという約束をします... という「リンゴ畑のマーティン・ピピン」。
空が緑に変わりかけ、月や星が出始めた頃。ヒナギク野にいたのは、ヒナギクでくさりを編んでいる6人の女の子と1人の赤ん坊。そこにやって来たのはマーティン・ピピン。自分の子供をベッドに連れに行くためにやって来たマーティンは、6人の女の子たちのために寝る前のお話と歌を1つずつ、そしてそれぞれの子供たちの親を当てることになります... という「ヒナギク野のマーティン・ピピン」

ファージョン再読祭り、ゆるゆると開催中です。今回読んだのは旅の歌い手・マーティン・ピピンの本2冊。2冊合わせて1000ページを超えるという児童書とは思えないボリュームなんですが、読み始めたらもう止まらない! いやあ、もう本当に懐かしくて懐かしくて... 夢中になって読んでいたのは、もっぱら小学校の頃ですしね。本当に久しぶりです。

「リンゴ畑のマーティン・ピピン」は、サセックス州に伝わる「若葉おとめ」という遊戯の元となる物語を語ったという形式の作品。この遊戯は、囚われの姫を助けにきた旅の歌い手とおとめたちのストーリー。古風な歌の歌詞もとても典雅だし、三部構成で、第一部では若葉のもえぎ色、第二部では白と紅、第三部では黄色い服になるという視覚的にもとても美しい遊戯なんです。でもこれ、実はファージョンの創作。
恋わずらいのジリアンを正気に戻すためには、誰も聞いたことのない恋物語を聞かせるのが一番ということで、マーティン・ピピンが6つの物語を語ることになるんですが、この話が本当に大人っぽいんですよね。子供の頃もドキドキしながら読んでたんですが、大人になって再読しても、やっぱりドキドキしてしまうーっ。これはやっぱり子供向けの作品じゃないでしょ... と思いながら読んでいたら、やっぱり違いました。訳者あとがきによると、30歳の男性のために書かれた物語なんだそうです。女性向けではなく男性向けだったというのが意外ですが、確かにこれは30歳の男性でも十分楽しめる物語かと。6つのお話の中で特に好きなのは「王さまの納屋」と「若ジェラード」。そして「オープン・ウィンキンズ」。って、子供の時と変わらないんですけど! そんなに進歩してないのか、私!
お話とお話の間の「間奏曲」では、イギリスの娘たちが楽しむ素朴な遊びや占いの場面もありますし、それぞれのお話の後にはそれぞれの乳搾りの娘と彼氏(なんて言葉じゃ軽すぎる... やっぱり「若衆」でしょうか!)との諍いの原因も告白されたりして、枠の部分も十分楽しめます。

そして「ヒナギク野のマーティン・ピピン」は、その次世代の物語。なんとこちらの聞き手は、「リンゴ畑」の6人の乳搾りの娘たちの子供たちなんです。暗くなってきてもなかなか寝に行きたがらない女の子たちのためのお話と、それぞれの女の子たちの親当てゲーム。「リンゴ畑」では6人の外見の説明がほとんどないせいか、全員の性格の違いを掴むとこまではいかないんですが、こちらは6人が6人とも全然違ってるので、この子の親は誰?というのを通して「リンゴ畑」の6人を改めて知ることができます。
こっちのお話で特に好きなのは、これまた子供の頃と変わらず「エルシー・ピドック夢で縄跳びをする」と「トム・コブルとウーニー」。あーでも「タントニーのブタ」や「ウィルミントンの背高男」「ライの町の人魚」も捨てがたいー。なんて言ってたら全部になってしまうんだけど。エルシー・ピドックのお話は、これだけで独立した絵本にもなってますね。
そして「リンゴ畑」と同じく、間奏曲がまた楽しいんです。子供たちはみんな、マーティンに親を当てられてしまうのではないかとドキドキ。当てられないための駆け引きもそれぞれなら、当てられそうになった時や、大丈夫だと分かった時の反応もそれぞれ。マーティンは結局子供たちの涙に負け続けてしまうんですけどね。間違えたマーティンを容赦なくいじめる方が子供らしい反応かもしれませんが、私としては間違えたマーティンを慰めるような反応の方が子供の頃も好きだったし、今でもそう。って、やっぱり進歩してない私ってば。(笑)(岩波書店・岩波少年文庫)


+既読のファージョン作品の感想+
「ムギと王さま」「天国を出ていく」ファージョン
「年とったばあやのお話かご」「イタリアののぞきめがね」ファージョン
「町かどのジム」エリノア・ファージョン
「リンゴ畑のマーティン・ピピン」「ヒナギク野のマーティン・ピピン」ファージョン
「銀のシギ」エリナー・ファージョン
「マローンおばさん」エリナー・ファージョン
「ガラスのくつ」エリナー・ファージョン
「エルシー・ピドック、ゆめでなわとびをする」「ねんねんネコのねるとこは」エリナー・ファージョン

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