「ローマ人の物語 悪名高き皇帝たち」17~20 塩野七生

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アウグストゥスの死後、皇帝となったのはティベリウス。常に若く元気な部下に囲まれていたユリウス・カエサル、決断の際には常にアグリッパとマエケナスに相談することのできたアウグストゥスとは対照的に、ティベリウスは孤愁を感じさせる男。背が高くがっちりとした体格で、貧相という言葉とは無縁だったティベリウスですが、その背は人の想いを拒絶するかのように厳しいのです。そんなティベリウスと彼に続くカリグラ、クラウディウス、ネロといった、歴史的にあまり評価の高くない皇帝たちを取り上げる巻。

ローマ皇帝の中でも、カリグラとネロは飛びぬけて有名ですね。有名とは言ってももちろん悪い方でですが。カリグラはものすごいはじけっぷりだし、ネロは母親殺しと妻殺し、そしてキリスト教徒迫害。ローマ市内に放火。そんな2人と並んでいるところからして、ティベリウスやクラウディウスはどんな酷い皇帝だったんだろうって思ってしまうところなんですが~。
これが全然なんです。確かにそれぞれに悪かった点はあります。社交性に欠けていたティベリウスはそもそも人心を掴む努力を全然してないし、最後の10年はカプリの別荘に隠遁してしまったから、そのせいでローマっ子たちは見捨てられたと思ってしまうし... クラウディウスはすっかり自分の奥さんの言いなりになってしまうという情けなさ。再婚して奥さんが変わっても全然ダメ。でも、塩野さんの筆にかかると、それぞれなりに最善を尽くしたという感じになってしまうんですね。ティベリウスはローマ市民が大好きな催しを全然しなかったから人気は低迷してたけど、その分アウグスティヌスから受け継いだローマ帝国を健全な形に保つことには十分実力を発揮していたし、クラウディウスは元々歴史家だっただけに、皇帝という地位とその重責をよく分かっていて、カリグラが破綻させた財政をきちんと立て直してます。とてもじゃないけど、愚帝という感じじゃありません。
そして単なる愚帝と思わせないのは、カリグラとネロの場合も同様。まあ、黒字財政をたった4年で破綻させたカリグラの浪費っぷりとか、神に成り代わろうとするとこはさすがにどうかと思いますけど(笑)、カリグラの場合は、軍隊のマスコットボーイだった時代から描かれてますしね(カリグラというのは「小さな軍靴」という意味の愛称)、あの可愛かった少年が~!って感じで哀れだし、切ないんです。それにネロだって、いいことだっていっぱいしてるのに、ちょっとした失敗や時機を逸したことが大きく響いて、結局雪だるま式になっちゃったのね... という感じで、十分同情の余地あり。
普通の小説の悪役だって、実はそんなに悪い人間じゃなくて、むしろ主人公よりも人間的に深みを感じさせることだってあるし、それでも構わないんですけどね。評判の悪い皇帝たちのダメな部分を強調するだけでなく、人間的な部分をここまで描き出したというのはすごいと思います。でもね、暗殺されてその治世が終わるからには、後世までその悪名が轟いているからには、もっと憎々しい悪役の魅力というのも読んでみたかったなあ、なんて思ってしまったりするんですよね。ないものねだりなのは分かってるんですが。(笑)(新潮文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「ローマ人の物語 ローマは一日にして成らず」1・2 塩野七生
「ローマ人の物語 ハンニバル戦記」3~5 塩野七生
「ローマ人の物語 勝者の混迷」6・7 塩野七生
「ローマ人の物語」8~10 塩野七生 「ガリア戦記」カエサル
「ローマ人の物語 ユリウス・カエサル ルビコン以前」8~10 塩野七生(再読)
「ローマ人の物語 ユリウス・カエサル ルビコン以降」11~13 塩野七生
「ローマ人の物語 パクス・ロマーナ」14~16 塩野七生
「ローマ人の物語 悪名高き皇帝たち」17~20 塩野七生
「ローマ人の物語 危機と克服」21~23 塩野七生
「ローマ人の物語 賢帝の世紀」24~26 塩野七生
「ローマ人の物語 すべての道はローマに通ず」塩野七生

+既読の塩野七生作品の感想+
「コンスタンティノープルの陥落」「ロードス島攻防記」「レパントの海戦」塩野七生
「チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷」塩野七生

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