「一人の男が飛行機から飛び降りる」バリー・ユアグロー

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「賭けをした男が牛の体内にもぐり込む。もぐり込んでみて、結局そこに居すわることにする。牛の内部は暖かく柔らかだ。とても暗いけれど、皮膚を通って入ってくるわずかな光で何とかやって行ける。食べ物は問題ないーー牛乳ならいくらでもあるのだ。「絞りたてよりなお新鮮」と男は一人でジョークを言ってくすくす笑い、靴下を脱ぐ。べつに服なんか必要ないのだから。服を丸めてしかるべきへこみに押し込む。服の運命やいかに、と男は考える...」こんな文章で始まる「牛乳」他、全149編の超短編集。

とんでもない話が次から次へと展開されていく、まるで悪夢を書き連ねたような短編集。どれもまるで実際に夢の話を聞いているような感じで、脈絡がなくて非論理的。小説としてはまるで筋が通っていません。でもこれがとっても面白いのです~。そもそも夜にみた夢の話というのは、余程話すのがうまい人間ではないと、なかなか他人に面白く感じさせられないもの。それだけ夢の中の空気感を客観的に伝えるというのは難しいものだと思うんですが、バリー・ユアグローの場合は違いますね。もし本当に夜にみた夢の話をしても、きっと面白可笑しく語ってくれるのではないでしょうか。ここに収められている作品はどれもとても映像喚起力が強くて、しかもリズムがいいので、どんどん読み進めてしまいますし、文字として書いてあること以上にいろいろ想像してしまいます。トーキング・ヘッズのデイヴィッド・バーンは「デューク・エリントンの曲のなかでも僕がとりわけ気に入っている一連の歌のように、そこでは崇高と滑稽が合体している」「自分の夢をどうしても覚えていられない僕にとって、ユアグローの小説は格好の代用品である」と語り、出版社は「フランツ・カフカとモーリス・センダックとモンティ・パイソンが同時に夢を見てるような」という宣伝文句を使っているそうですが、その言葉がまさにぴったり。意外とブラックな笑いなのに、読んでいる間はそのブラックさにあまり気づかず、無邪気に笑っていられるような感じです。(デューク・エリントンのお気に入りの一連の曲って何だろう??)

ただ、149作品がどれも同じように「変」な話ばかり。1~2ページと短い作品ばかりだし、それらの作品は互いに関連性もないので、全部続けて読むのは少ししんどいかもしれません。バリー・ユアグローの2作目「一人の男が飛行機から飛び降りる」と3作目「父の頭をかぶって」がイギリスで2冊合本のお買い得版として出版されたことから、今回の日本語訳もそのように出版されたようなんですが、これは1冊ずつでも十分だったような気が...。枕元に置いておいて、その晩開いたところをいくつか読む、というのがこの本の楽しみ方としては一番正解のような気がします。(新潮文庫)

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Commentaires(2)

こんにちは~^^
この本、わたしも持っています~。面白いんだけど、途中でしんどくなっちゃって、半分くらいしか読んでいないです。笑。
そっか~枕元においてパラパラって読むのが向いてますね!

脈絡がない話を面白く読ませるってすごいことだな~と思います。
四季さんの「意外とブラックな笑いなのに、読んでいる間はそのブラックさにあまり気づかず、無邪気に笑っていられるような感じです。」っていうの、そうそう!って感じです。ほんと、夜に見る夢って、楽しい夢よりけっこうブラックだったりすることが多いかも。朝起きて思い出してみると、「なんて夢みてるのわたし!」ってぎょっとしたり。笑。

あらっ、もろりんさんも持ってらしたんですね~。
そうそう、面白いんだけど、あんまり続くとちょっとしんどいんですよね。
1つ1つは凄いのに、続けて読むとインパクトも薄れてしまってもったいないので
これは枕元本にいいかなあ、と。富士日記とはまた違う意味で。って真逆?(笑)

私は最近はめっきり夢を見なくなってしまったのですが(というか起きたらすっかり忘れてる)
確かに夜見る夢ってブラックな方が多いかも~。
ここに入ってる作品って、そういう意味でも、本当の夢みたいですね。
で、朝起きて、牛の中に入ってた自分を思い出してぎょっとするわけですね…
いや~ん。(笑)

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