「帝都最後の恋 占いのための手引き書」ミロラド・パヴィッチ

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ナポレオン戦争時代のセルビア。トリエステの船主でもあり劇団の所有者でもあり、フランス軍騎兵隊の大尉でもあるハラランピエ・オプイッチと、ギリシャ系の母・パラスケヴァの息子として生まれたソフロニエも、今やナポレオン軍騎兵隊の中尉。幼い頃から大いなる秘密を心に抱き、自分を変えたいと強く願ってきたため、彼の中にはいつしか密かで強力なものが芽生え、若きオプイッチの体には変化が現れます...。

22 枚の大アルカナカードと56枚の小アルカナカードから成るタロットカード。この本はそのタロットカードの、大アルカナカードをなぞらえた物語。カードと同じく全部で22の章に分かれていて、最初から順番に読むこともできれば、タロット占いをしながらそれぞれのカードに対応する章を読んでいくことも出来るという趣向。パヴィッチはこれまでも色んな趣向の作品を書いていて、小説の構造や形態で遊びながら、読者を巻き込むタイプの作家さんみたいですね。巻末には実際にタロットカードがついていて、切り取れば占いに使えるようになってるんです。その図柄はミロラド・パヴィッチの息子のイヴァン・パヴィッチが描いたもの。まあ、私には本を切り取るなんてことはできませんが...。(笑)

タロットカードといえば、真っ先に思い浮かぶのがカルヴィーノの「宿命の交わる城」(感想)。それとどんな風に違うんだろう? それにどこから読んでも大丈夫って一体どういうこと? なんて思ってたんですが、やっぱり全然違いますね。まず、巻頭の「本書におけるWho's who 登場人物の系譜と一覧」に、この作品の登場人物に関するデータが揃っていました。ここで書かれている人間関係は結構入り組んでいて、飲み込むのがなかなか大変なんですけど、この5ページさえしっかり読んでおけば、あとはまず困らないでしょうね。なるほど、そういうことだったのか!
私は、まずは最初から通して読んだんですけど、これでもとても面白かったです。1枚1枚のカードに沿った物語は、正位置にも逆位置にも対応しているようだし、最初の「愚者」のカードから22番目の「世界」のカードまで順番通りに通して読んでも、きちんと筋の通る小説となってるのがすごい。最初のスタート地点にいる愚者は、21の通過儀礼を通り抜け、世界を知るというわけなんですね。もちろん、元々のタロットカードの順番そのものがよく出来てるというのもあるでしょうけど、でもやっぱりすごいな。しかもこの文章というか世界観というか、もう遊び心が満載で楽しいんですよー。読んでいて嬉しくなってしまうような、大人のお遊び。今回は最初から通して読んだけど、次はランダムな順番でも読んでみたいな。あー、カルヴィーノも再読したくなってきた。

これは、先月出た松籟社の「東欧の想像力」の4冊目。3冊目の「ハーン=ハーン伯爵夫人のまなざし」も早く読まなくちゃです。(松籟社)


+既読のミロラド・パヴィチ作品の感想+
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「風の裏側 ヘーローとレアンドロスの物語」ミロラド・パヴィチ

+シリーズ既刊の感想+
「あまりにも騒がしい孤独」ボフミル・フラバル
「砂時計」ダニロ・キシュ
「帝都最後の恋」ミロラド・パヴィッチ

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