「トムは真夜中の庭で」「真夜中のパーティー」フィリパ・ピアス

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トムは腹を立てていました。夏休みは弟のピーターと庭のリンゴの木の枝と枝の間に家を作ろうと前々から計画していたのに、ピーターははしかにかかり、トムはうつらないようにするために、アランおじさんとグウェンおばさんの家に行かなければならなくなったのです。アランおじさんたちが住んでるのは、庭のないアパート。万が一はしかにうつっていた時のために外に出ることもできず、友達もおらず、トムは日々退屈しきっていました。運動不足で夜も寝られなくなってしまったトムは、毎晩のように時計の打つ音を数えるのが習慣となります。古い置時計は、打つ音の数を間違えてばかり。しかしそんなある晩、夜中の1時に時計が13回打ったのです。夜の静けさに何かを感じたトムは、こっそりベッドから抜け出します... という「トムは真夜中の庭で」。
隣の家に住んでいたのは、"よごれディック"。数年前に奥さんに逃げられて以来、ディックは一人暮らしで、母さんに言わせると、ブタ小屋のブタのような暮らしぶり。運転はできないのに2台の車を持ち、1台ではウサギを、もう1台ではメンドリを飼い、卵を売って暮らしていました... という「汚れディック」他、全8編の短編集

古時計が13回打った時にだけ現れる庭園とハティという名の少女。昼間はがらくたばかりが置かれている狭苦しい汚い裏庭があるだけの場所に、広い芝生と花壇、木々や温室のある庭園が広がっていて...! 退屈だったはずの夏休みが、わくわくする真夜中の冒険に一変してしまいます。子供の頃に何度も読み返した作品なんですが、中学以降は読んでなかったかも... ものすごく久しぶりの再読なんですが、これがやっぱり良くて! 大人になって読んでも全然色褪せていないし、それどころかさらに一層楽しめるというのが素晴らしい。
でも楽しい冒険も徐々に終わりに近づいて...。小さかったハティがいつしかすっかり大きくなっていたと気づくところは切ないです。しかもそれに気付かされるのが、他人の目を通してなんですから! でも最後に彼女の名前を叫んだ時、きちんとその声が届いたというのがなんとも嬉しいところ。年齢差を越えた2人の邂逅には胸が温まります。
この作品、子供の頃読んでた時はやっぱりトム視点で読んでたと思うんですけど、大人になった今読むと、もちろんトム視点が基本なんですけど、ハティもかなり入ってたかも。読む年齢に応じて、その経験値に応じて、新たな感動をくれる本なんですね。あー、こういう子供の頃に大好きだった本を読み返すたびに、本棚に入れておいてくれた父に改めて感謝してしまうなあ。

そして「真夜中のパーティー」の方は、今回初めてです。どれもごく普通の日常から始まる物語。特に不思議なことが起きるわけでもないし、日常のちょっとした出来事と一緒に子供たちの思いが描かれているだけ。でもそれがとても鮮やかなんですね。真夜中のパーティーが親にばれないように工夫する姉弟たち、ついついニレの木を倒してしまった少年たち、貴重なイシガイを川に隠す少年たち、せっかく摘んだキイチゴを無駄にしてしまい、怒る父親から逃げ出す少女、池の底からレンガの代わりにブリキの箱を拾った少年...。特に印象に残ったのは、川の底に潜りこもうとするイシガイを見ながら密かに逡巡するダンの姿かな。これは本当にドキドキしました。兄のようなパットが大人たちに糾弾されるのに憤慨した小さなルーシーの反撃も良かったなあ。溜飲が下がります。あと、間違えてブリキの箱を拾ってきた少年のあの達成感・充実感ときたら! 読んでいるその時には、それほど大した物語には思えないのですが、後から考えると印象的な場面がとても多かったことに気づかされるような、深みのある短編集でした。(岩波少年文庫)

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Commentaires(6)

四季さん、こんばんは。
子どもの時好きだった本を大人になってから読み比べてみることができる幸せを味わえるって、(しかもこんな素敵な本で)なかなか得難いことですよね。
四季さんのおとうさまも素晴らしいです。

わたしは、この二冊とも大人になってから初めて読みました。「真夜中のパーティ」のぴりっとした短編もすてきですけど、やっぱり「トムは真夜中の庭で」を初めて読んだときの感動は忘れません。今思えば、気がつかないほうがおかしいのに、最後まであんなふうになるなんて思わなくてびっくりでした。
ずいぶんあとになって再読したときには、バーソロミュー夫人の「ベッドの近くのコップのなかにつけてある入れ歯は月の光のなかで不気味に笑っていた」なんて表現にびっくり。残酷なことをリアルに表現するなあ、と驚きました。
読むごとに新たな感動や発見を見せてくれる物語ですね。

四季さん、少年文庫、どんどん進んでいて、全巻読破、いけそうですね。
四季さんの読了本を眺めながら、つぎつぎあれもこれも読みたい、と思いつつ、目移りしています。

ぱせりさん、こんにちは~。
これは児童書とはいえ、大人でも十分楽しめる本ですよね。
というよりむしろ、大人になってから読んだ方が理解できるのかも。
子供の頃大好きだった本を大人になって再読すると、必ず何かしら新しい発見があって嬉しいです。
でも父は、当時一体どうやって本を選んでいたのか…
今から考えても相当すごいセレクトだったんですけど、自分で読んで気に入った本を集めたのか…
当時は今ほど児童書が多くなかったので、選びやすかっただろうと思うんですが
本当に自力で?(笑)なんて考えてしまいます。仕事も忙しかったはずなのに。
でもブックガイドなんてない時代だし。
そういえばその辺りを聞いたことがないので、すごく不思議になってきました。(笑)

うん「真夜中のパーティー」もいいんですけど、やっぱり「トム」ですよね!
これって改めて読むとすごい構成力ですよね。ほんと素晴らしい。
ケンブリッジ大学の修士まで進んだ知性派だそうですが、なるほど納得です。
うんうん、バーソロミュー夫人の入れ歯は強烈ですよねー。
子供の頃はちょっと怖かったです。

少年文庫、どんどん読みたいんですけど、100番台のだけでも160冊! 500番台も100冊近く!
サイトをやってるこの10年で読んだのが、再読を含めて60冊ぐらいなんですよ。
まだまだ先は長いです~。

こんにちは♪
四季さんの感想を拝見して、
ものすご~~く「トムは真夜中の庭で」が読みたくなりました!
大人になっても色あせず、さらに楽しめるって、
良い児童書に共通して言えることですよね^^
そんな児童書で、まだまだ読んだことのないものがたくさんあるのかと思うと、
もういてもたってもいられない感じ!
「りんごの丘のベッツィー」も今日借りてきましたよ~^^

そうそう、岩波少年文庫制覇計画に参加したいと思って、
岩波のサイトを見てみたら、予想以上に作品数が多くてびっくり・・・!
よ、読めるのかしら・・全部・・?(笑)
とりあえず、読まなきゃ始まらないって事で、
少しずつ読んでいこうと思っています^^

全部読み終わって四季さんに報告するとき、
私もうおばあちゃんかもしれません。笑。

P・S
↓の記事で、Johnnycakeさんとpicoさんが
企画に興味をもってくださって嬉しいです~^^

もろりんさん、こんにちは~。
ああ、この本もきっともろりんさんお好きだと思います!
もう本当に永遠の名作。素晴らしいです~。
ほんと優れた児童書はいくつになっても楽しめるし、その時々で得るものがありますね。
私もきっと、まだまだいっぱいそういう本を読み逃してるんだと思います… が!
そういう本との出会いも縁だし~。
大人になった今出会う本は、そういう縁だったということなんですよね、きっと。
「リンゴの丘のベッツィー」だって、今じゃなきゃ読めない本なんですもん。
もろりんさんの感想も、楽しみにしてますね~。

岩波少年文庫、沢山ありますよね。今の時点で全部で250冊ぐらい。
それでも私が子供の頃に読んだ本で、復刊されてないのがまだまだあるのです。
いつか復刊されるのかしら?
でも大人の本に比べるととっつきやすいのが多いし、とにかく名作が多いので
あまり頑張らなくても読み進められるような気がします。
2人とも、最後はおばあちゃんになっちゃうかもしれませんが!(笑)
それも楽しいですよね。
月に1冊でも2冊でも、無理せずぼちぼちといきましょう。^^

Johnnycakeさんとpicoさんが企画に参加して下さるといいですね。
他の方々も、ぜひぜひ!

こんにちは、四季さん。  お久しぶりです♪

先日、久々に「トムは真夜中の庭で」を再読し、エントリーを起こしたので
TB させていただきました。  本当にこの本は子供時代も、大人になって
からも堪能できる素晴らしい作品ですよね♪

KiKiさん、こんにちは!
ここんとこ全然ネットをしてなくて
お返事がものすごく遅くなってしまいました。ごめんなさい~。
今回のTBは1つだけだったようですね!
何かコツが分かりましたか~? それともMTの機嫌が良かったのかしら。^^

この作品は本当に大好きです~。いいですよね。
子供の時読んで楽しめて、大人になってから読んでまた楽しめる
1粒で2度美味しい作品ですよね。

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