「ダブリナーズ」ジェイムズ・ジョイス

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3度目の卒中でとうとうフリン神父が亡くなったと聞いた「僕」は、翌日の朝食の後に、フリン神父が住んでいたグレイトブリテン通りの小さな家を見に行きます... という「姉妹」他、全15編の短編集。

「ダブリン市民」「ダブリンの人びと」といった題名で知られている作品の新訳。解説を見ると、「ダブリナーズ」と訳したのは「横文字をカタカナにして事足れりとする昨今の風潮に流されたのではない。タイトルのDublinersという音をそのまま残したいというこだわりから、ようやく行き着いた訳語だ」とありました。確かに都市名に-erをつけて出生者であり居住者であることを示す言葉は、ごく限られてるんでしょうけど...(Berliner、Londoner、Montrealer、New Yorker、Zuricherぐらいらしい) そしてその言葉に特別と言っていいニュアンスがあるのも分かるんですけど... 日本で認知されているのは New Yorker ぐらいですよね。Londoner だって「ロンドンっ子」なんて訳される方が一般的なんだもの。「ダブリナーズ」ですか。うーん、どうなんだろう??
なんて考えてしまう題名が象徴するように、訳者の意気込みがとても強く感じられる訳でした。一読して感じたのは、とても賑やかな訳だということ。リズムを刻むような訳。と思っていたら、音をかなり大切にした訳だということが、解説に書かれていました。この作品そのものが元々音楽的に書かれているので、その音楽を可能な限り「奏出」することを心がけたのだそうです。例えば「執達吏」と言う言葉に「ひったくり」というルビがふられてるし... 確かに言いたいことはすごくよく分かります。分かるんですけどね。でも実際のところ、どうなんでしょう。訳者の思っているほどの効果が上がっているのかな? 私としては、むしろ他の訳がとても読んでみたくなってしまったんですけどー。うーん、やっぱり私には「新訳」は全般的に相性が悪いような気がしますー。
肝心の作品の中身としては、ダブリンを舞台にした群像劇といったところ。繋がりがあるのかないのか曖昧な感じで進んでいきます。1つ1つはとても普通の物語。ジェイムズ・ジョイスという作家から想像したものとは、対極と言っていいほどの普通さ。さらりと読めすぎてしまって、逆に戸惑ってしまうようなところも...。それでも、これこそが人間の営みであり、人生なのだと、これがダブリンなのだという感じ。ジョイスはダブリンのことを愛していたのかしら。私としては、決して愛してはいないけれど、「愛憎半ばする」なんて強い感情があるわけではないけれど、それでもどうしてもそこから離れられないという存在だったような気がします。要するに腐れ縁?(笑)(新潮文庫)

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