「ペルシャの鏡」トーマス・パヴェル

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暇があると古文書調べをするのが好きなルイ。夏になると七都地方を巡っては古い要塞城やドミニコ修道院、打ち捨てられたジェズイット派の学寮を見てまわり、バロックの大修道院に長居して、昔の図書館の残骸から貴重な文献や手稿を発見するのです。そして、その時ルイが古くからの友人に案内されたのは、シェスブルグのとある学院蔵書が保存されている穀物倉。何千冊もの本が、版型にしたがってむくの本棚に並べられていました。これはあるドミニコ会修道院付属の図書館が起源となる蔵書で、最も貴重な部分は、数学と天文学の教授であるアロイシウス・カスパールによって集められたもの。そしてこのアロイシウスという人物は、当時ハノーヴァー王立図書館の稀覯書担当司書をしていた、哲学者のライプニッツと親しかったのです。

この物語には1章に1つずつ架空の書物が登場します。アロイシウス・ガスパールによる「ライプニッツの形而上学序説への批判的注釈」、ミゲル=アルバル・ツサニーによる「異端審問教程」、ジュゼッペという若者による「饗宴」、グロスの韻文五幕の悲劇「エル・マハディ」、そしてルイ自身による「ペルシャの鏡」。5つの章全てにおいて、書物の存在がとても大きいのです。読み進めるうちに、いきなり書物の中に引きずり込まれ、しかもその中にも他の章と同じように書物が存在して、という状態になってみたり...。途中でちらりちらりと登場する鏡も印象的。訳者解説によると、ライプニッツは「モナドは宇宙を映す永遠の生きた鏡である」と述べているのだそうで、これは作中の「ひとりひとりの魂が宇宙を総体として映しだす力を持っている」というライプニッツの言葉に通じるのでしょうね。「各実体は宇宙に対する神のあるひとつの見方を示しているのであって、同一の宇宙を見ているといっても、その見方は次々と変わっていくのだよ。そう、ちょうどひとりの散歩者にとって同じ街が観る場所によって様々に異なって見えるように」... これこそがこの作品の本質を示す言葉なのかもしれません。現実と書物が、実体と鏡に映し出された鏡像のような関係になっているようで、まるでエッシャーのだまし絵みたい。
訳者あとがきに、「ライプニッツの「可能的世界」を幻想図書と鏡で幾重にも多重化した入れ子構造の世界」とありました。でもね、そもそもライプニッツのその「可能的社会」がよく分からないのです。それがすごく要になっているはずなのに! だから作品そのものも理解しきれず... うわーん、勉強不足が悔しいです。(工作舎)

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