「夢の通い路」倉橋由美子

Catégories: /

[amazon]
夜が更けて夫も子供たちも犬も寝静まった頃。化粧を直して人と会う用意をする桂子さん。鏡を見ると、そこに映っているのは、夜の化粧のせいで妖しい燐光を放つ「あちらの世界」の顔。外に来ている人の気配を感じた桂子さんは、家を抜け出します。そこにいたのは佐藤さん。しかし佐藤義清という名前の長身痩躯の紳士は、実は西行なのです。

桂子さんシリーズの外伝的作品... でいいのかな。魅惑的な「あちらの世界」の面々と交歓する桂子さんの物語。桂子さんと出会うのは西行、二条、後深草院、藤原定家、式子内親王、六条御息所、光源氏、藤原道長、紫式部、和泉式部、エルゼベート・バートリー、メーディア、則天武后、かぐや姫etcetc...という、虚実取り混ぜた豪華絢爛な面々。でもどんな人々と共にあっても、桂子さんの女神ぶりは相変わらずで~。相手に合わせて、しなやかに上品に踊っていますね。本当はとてもエロティックなはずなのに、そこには獣の生々しさは全くなくて、どこか植物的なんですが... ここで私が感じたのは、植物というよりも水。さらさらと流れる水のようなエロティシズムのような気がしました。現実と異界との転換点としても、水というのはとても相応しいのではないかと思うのですが~。
古今東西の様々な人物が登場するだけに、他の倉橋作品以上に様々な素養が現れていて、それもとても面白かったです。登場する面々の中でも特に印象深かったのは、処女の血を搾り取ったというエルゼベート・バートリ伯爵夫人、そしてエウリピデスの描いた物語は真相とは違うと語るメーディア。ここに描かれる血のお風呂や血のワインの魅惑的なことったら。さらに桂子さんが二条と語る、トリスタンと金髪のイズーの物語の話も面白かった! トリスタンとイズーが秘薬を飲んだ理由に、これ以上説得力のある回答は思い浮かばないな。(講談社文庫)


+桂子さんシリーズの感想+
「ポポイ」倉橋由美子
「夢の浮橋」倉橋由美子
「城の中の城」倉橋由美子
「交歓」倉橋由美子
「夢の通い路」倉橋由美子
「よもつひらさか往還」倉橋由美子

+既読の倉橋由美子作品の感想+
「偏愛文学館」倉橋由美子

| | commentaire(2) | trackback(0)

Trackbacks(0)

「夢の通い路」倉橋由美子 へのトラックバック一覧:

URL TrackBack de cette note:

Commentaires(2)

四季さん、こんばんは。

「夢の通ひ路」は私も大好きな短編集です。
ベッドで一晩一話ずつ読むと、妖しい夢を見そうですね(笑)
古典的素養があふれていていかにも倉橋さんらしい趣味で、読者にも教養を要求しそうです。確かに「外伝」で、桂子さんシリーズを読んでいる方には何倍も美味しいかも...

くらくらするくらいエロティックなのに、おっしゃる通り水が流れるような「交歓」ですよね。こちらの世界では望むべくもないのでしょうけれど。
残酷さで名を馳せているエルゼベート・バートリーもなんだか可愛らしく、クリームと入浴剤は私も頂きたいくらい(笑)
ギリシア神話の中で、イアーソーンはどうも好きになれなかったので、メーディアが「イアーソーンの馬鹿には愛想を尽かすだけ...」と言い捨てるのにはすっきりしました(笑)
倉橋さんの持論なのでしょうけど、女性の「嫉妬」は男性への愛情ゆえでなく基本的には女性側の自尊心の問題なのだ...という点で一貫していますね。
同性ながら、なかなか女というものは恐ろしいものです(笑)


Bonoさん、こんにちは。
「夢の通い路」、すごくいいですねー!!
ほんと、寝る前に読んだら妖しい夢をみてしまいそう…
今まで読んだ倉橋さんの作品の中で、今のところこれが一番好きです。
でもそれも桂子さんシリーズを読んでるからこそ、なんですよね。きっと。

そうそう、エルゼベート・バートリーもなんだか可愛いし~。
本来なら薄気味悪く怖いはずの血のお酒や血のお風呂が
あれほど魅惑的に描かれているとは驚きました。
そしてメーディアのあの台詞! 私も溜飲が下がりましたよ。
やっぱりイアーソーンは、脳みそが筋肉ばかだったんだな!って。(笑)
ものすごく説得力があるやりとりでしたよね。
そこだけとっても、倉橋さん、素晴らしいです。

女性の嫉妬に関しても、そう言われてみるとそうだなあって。
という私も、周囲の女性の目がなければもっと気楽に…
…いやいや、やっぱり恐ろしいものですね、女性って。(笑)

コメントする(要JavaScript)

Note


MAIL FORMBBS

購読する ATOM


Powerd by MovableType4.24-ja
Copyright 2004-2011 四季. All rights reserved.