「ムーミン谷の夏まつり」「ムーミン谷の冬」トーベ・ヤンソン

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6月。ムーミン谷近くの山が噴火して大きな地震が起こり、遠くから海の水が押し寄せてきます。洪水のせいでムーミン谷はすっかり水浸し。避難しなくてはならなくなったムーミントロールたちの前に流れてきたのは、ムーミン一家よりももっと人数の多い家族が一緒に乗れるぐらいの大きな家でした。一家は早速その家に引越しをすることに... という「ムーミン谷の夏まつり」。
11月から4月までは冬眠するムーミンたち。しかし新年を少し過ぎた頃。ムーミントロールはふと目を覚まし、それきり眠れなくなってしまったのです。家の中は夏と一緒でも、妙に静かで寂しくて... ムーミンママの布団の上で丸まって長い冬の夜を過ごしたムーミンは、朝になると外に出てみることに。スナフキンに会いに南へ行こうと思ったのです... という「ムーミン谷の冬」。

ムーミンシリーズの4作目と5作目。
「ムーミン谷の夏まつり」は、1作目の以来の危機勃発の物語。でも彗星が地球にぶつかるというあの時にもまるで動じなかったムーミン一家が、洪水ごときでうろたえるわけもなく。(笑) 避難というよりも、もうほんと普通にお引越しですね。ピクニックのような和やかさ。みんなが新しい家に落ち着いた後でも、ムーミントロールとスノークのおじょうさんが木の上に置き去りにされるという事件が起きるんですが、ムーミンパパもムーミンママもあまり心配してないし~。はぐれたと分かった最初こそ嘆き悲しむムーミンママなんですけど、「ほんとに、あの子たちのことが、そんなにかなしいのかい」と言われて、「いいえ、ちょっとだけよ。だけど、こんなにないてもいい理由があるときには、いちどきにないておくの」ですもん。そこで一しきり泣いたら、後は希望のみ。なんて前向きなんだ!(笑)
今回は、ムーミントロールの気障な台詞にひっくり返りましたよ。「わたしがすごくきれいで、あんたがわたしをさらってしまうというあそびをしない?」というスノークのおじょうさんに対して、ムーミントロールの答えは「きみがすごくきれいだ、なんてことは、あそびにしなくていいんだよ。きみは、いまだって、ちゃんときれいなんだもの。ぼく、たいていきみをさらっちゃうよ。あしただけどさ」ですよ! それと、いつも孤高な人生を歩んでいるスナフキンが、公園の「べからず」立て札を片端から引き抜いてやろうと、ニョロニョロの種を蒔いたり、一緒に逃げ出した24人の子供たちの世話をしたりとなかなか楽しい展開です。

「ムーミン谷の冬」は、シリーズ初の冬の物語です。目を覚ましてしまうのはムーミンとちびのミイ。
冬眠中の11月から4月までの期間というのは、ムーミンたちにとって存在しないも同じ時間。北欧が舞台なのに、ムーミンが雪を見たこともなかったというのが驚きなんですが、ここに描かれているのは、まさに北欧の冬。夏とは全然雰囲気が違います。死んだように静まり返った雪の世界。「夜が明ける」とはいっても、半年は夜となる北欧は、白夜の反対の極夜の状態。1日中、薄闇のモノトーンの世界なんでしょうね。家の中にも外にも、寂寞としたイメージが漂っています。雪は音を吸収するでしょうから、一層不気味だったのでは。
「ここは、うちの水あび小屋だぜ」と言うムーミンに対して、「あんたのいうとおりかもしれないけど、それがまちがいかもしれなくてよ。そりゃ、夏にはなるほどこの小屋は、あんたのパパのものでしょうさ。でも、冬にはこのおしゃまのものですからね」と返すおしゃまさん。そう言われてしまうと一言もありませんね。よく知っている場所のはずなのに、ここは既に異世界。夏と冬でこれほど世界が変わるというのがすごいです。北欧に住む人々にとっては普通なのかもしれませんが、とてもインパクトがありました。
そしてそれだけに、春の到来がとても素敵。まだまだ雪が厚く積もり、氷も厚くはって寒いながらも、やがて水平線にお日さまが最初は糸のように細く顔を出し、それから少しずつ高く上るようになり、やがてムーミン谷にも弱い日ざしが差し込むようになります。そして雪嵐。こんな風に北欧の人々は春を迎えるんですね。目が覚めたムーミンママの「わかってますよ」という言葉がとても温かいです。ああ、特に大事件はおきない話なんだけど、シリーズ5冊読んだ中でこの作品が一番好き!(講談社文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「ムーミン谷の彗星」トーベ・ヤンソン
「たのしいムーミン一家」トーベ・ヤンソン
「ムーミンパパの思い出」トーベ・ヤンソン
「ムーミン谷の夏まつり」「ムーミン谷の冬」トーベ・ヤンソン

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Commentaires(5)

こんにちは、四季さん。
ムーミン、何度も挑戦しつつ、いつも途中で挫折してばかりいましたが、唯一読めたのが「ムーミン谷の冬」でした。
しかもとっても好きな本になりました。
北欧の冬の神秘的な暗さ、美しさ、春の喜び、それからムーミンの「一年じゅうを生きぬいた、さいしょのムーミンとロールなんだぞ、ぼくは」という誇らしそうな言葉も、みんなみんな素敵でした。
四季さんがシリーズ中この作品が一番好き!と言われているのを読み、「ああ、やっぱりそうなんだ、だからわたしでも読めたんだ~」と思っています^^
でも、他の作品にもいつかまた挑戦してみたいな。
(ムーミン以外のヤンソンさんはとっても好きなんですよ~)

四季さん、お久しぶりです。こんにちは!

ムーミンシリーズ、堀江敏幸さんの『おぱらばん』を読んでから、読んでみたくなたのですが・・・。

実は、前にも読もうと思ったことがあって、『たのしいムーミン一家』の文庫を買ったのですが、その時は最後まで読めませんでした^^;

でも、なぜかムーミンの名言集『ムーミン谷の名言集』を持っていたりします。
この名言集をパラパラと眺めていると、ムーミンシリーズもう1回読んでみようかと思うほど素敵な言葉があります。

四季さんの感想を拝見しても、作品の中の素敵な言葉がたくさん紹介されていて、やっぱり読んでみようかな~と思っちゃいました^^

>ぱせりさん
なんと、ぱせりさんがムーミン作品を挫折されていたとはー。知りませんでした。
私はトーベ・ヤンソンの他の作品を読んでないので、比べることができないんですが…
…というか、他にも作品が沢山あることを今初めて知ってびっくり!なんですが(なんてこと!)
ぱせりさんも「ムーミン谷の冬」はお好きなんですね。良かった最後まで読めたのがこの作品で!
ほんとこの雰囲気が素敵ですよねえ~。北欧ならではの冬の描写ですよね。
こんなの北欧に住んでる人にしか書けないなあって思いましたよ。
ぱせりさんが引いてらっしゃるムーミンの言葉も、感想には書かなかったけど私も大好きです。
ほんと素敵な作品ですよね。
まだあと3作残ってるんですが、これ以上好きなのはもう出てこないような気もします。

次にまた挑戦される時は何がいいでしょうね?
「ムーミン谷の夏まつり」が一番と仰る方も多いようですよん。^^

>みらくるさん
おおお、みらくるさんが反応して下さるとは嬉しいです。^^
でもでも、なんと、みらくるさんも挫折されていたのですね…
ということは、これは他にも挫折してる方が結構いらっしゃるかもしれないですね。
ええと、ここだけの話、「たのしいムーミン一家」は、私の既読の5冊のうち最下位で…
構成的にあまり整理されてない感じなので、最初の本としてはちょっと読みにくいような気がします。
1冊目としては… うーん、やっぱり「彗星」がいいかな?
(講談社文庫では「たのしい~」が1作目ですけど、他の版では「彗星」になってました)

あ、でも名言集を持ってらっしゃるなら、好きな言葉から読む作品を選ぶというのもアリですね!
そういうのも楽しそう。というか、私もその名言集見てみたいですー。
このシリーズ、ほんと名言が多いんですもん。書き留めるのが大変で。(笑)
堀江敏幸さんの作品にもムーミンが登場してるとは、それはとっても気になります。
「おぱらばん」読んでみなくちゃ!

ちなみに5冊読了した今の時点で、私の中の順位は

「ムーミン谷の冬」>「ムーミン谷の彗星」>「ムーミン谷の夏まつり」>
「ムーミンパパの思い出」>「たのしいムーミン一家」

こんな感じになってます。^^

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