「新・本格推理 不可能犯罪の饗宴」二階堂黎人編・オール讀物 2009年8月号

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光原百合さんの作品2つ。
その日「マノミの木」目当てに茉莉花村にやって来たのは、馬で10日ばかり行った先にある耀海(かぐみ)の若き領主夫妻。奥方の水澄が重い病にかかり、どんな病でも治すマノミにすがるしかないとやって来たのです。しかしマノミは魔の実。マノミ酒を飲んで命が助かれば、その代わりに最愛の人の記憶を失うのです... という「花散る夜に」。(新・本格推理 不可能犯罪の饗宴)
大学を卒業後、地元の尾道に戻った静音は、ひょんなことから神埼零というピアニストのコンサートに行くことに。音楽にはあまり詳しくないながらも鳥肌が立つような感動を覚えた静音は、それ以来、地元で演奏がある時は事務方スタッフとして手伝うようになり、いまや神崎零とも調律師兼マネージャーの木戸柊ともお馴染み。そして今回の演奏会が終わった後、静音は自宅にあるピアノのことを相談します。静音の家のピアノは音が出ないピアノ。相変わらず応接間に置かれているものの、静音の家ではみな諦めていたのです... という「ピアニシモより小さな祈り」。(オール讀物)

「花散る夜に」は、「嘘つき。やさしい嘘十話」に収録されていた「木漏れ陽色の酒」の続編。「最愛の人の記憶を失ってしまう」というのは、やっぱり何度考えてもキツい設定だわーと思いつつ。それだけだと話の範囲がどうしても狭まってしまいそうな気もするんですが、それは素人考えでした。ああ、なんて素敵なエンディング。
淡い金緑色のマノミの酒もなんですが、今回のマノミの花の散る場面の美しいことったら。この花びらの辺りで、ああこの作品はミステリなんだなあ、なんて改めて思ったりしてました。そして、ふと気づいてみれば。今回の領主夫妻の名前は「蒼波」「水澄」、前回は「水際」と「沙斗」。いずれも水に関係する名前なんですね。あの世とこの世の間にいる人々に、マノミの酒が効かなければもう助からない人々に、とても相応しい気がします。

「ピアニシモより小さな祈り」は、大好きな潮の道幻想譚シリーズ。これは尾道の街を舞台にした、ちょっぴり不思議なファンタジー。今回はピアノのお話。読んでいる後ろから、澄んだピアノの音が流れてくるような気がします。音と共に光の波が広がっていき、金色のオーロラに包まれるようなピアノの演奏、私も体験してみたい。でもそんな美しいピアノの音とは対照的な、切なくて哀しくてやるせない想いも存在して。最後の「ピアニシモより小さい音でしかなくとも...」という言葉がすごく良かったです~。そして和尚さんは相変わらずだし、静音は気が強い中に可愛いらしさがあって素敵だし、自分の魅力を知ってる人も、自分の魅力にまるで気づいてない人も、どちらも魅力的でした。私としては... 自分の魅力にまるで気づいてない人の方が好みかも。(笑)


そして光原百合さん情報です。
ギリシャ神話系ファンタジー「イオニアの風」の発売が決定になったそうです。発売日は8月25日。中央公論新社から。光原さんの本は装丁が素敵な本が多いのですが、今回も素敵な本になったそうで~。とっても楽しみ。
それと潮の道幻想譚シリーズは、これで単行本1冊分の短編が出揃って、これから単行本に向けた作業に入るとのこと! 最初の方のお話の記憶が朧になってるので、改めて最初から読み返すのがとても楽しみです。
あと、今刊行中の「詩とファンタジー」に光原百合さんの「夏の終わりのその向こう」が掲載されてるんですけど、それには「星月夜の夢がたり」で挿絵を担当された鯰江光二さんが絵をつけてらっしゃるんですね。その作品は、来年刊行予定の絵本に収録されることになるんだとか。内容は、ギロックの叙情小曲集の全曲をモチーフにしたファンタジーで(絵はもちろん鯰江光二さん)、小原孝さん演奏によるCDも付くんだそうです。光原百合さんは、尾道学園の創立50周年記念で校歌をご一緒に作られた時からの小原孝さんのファン。それ以来、すっかりピアノに開眼されて、小原さんが弾かれるギロックに魅了されて... 今回の「ピアニシモより小さな祈り」も、そうやって書かれることになったのですねえ。
ああ、どれも楽しみー!!(文藝春秋・光文社)


+既読の光原百合作品の感想+
「ありがと。 あのころの宝もの十二話」ダ・ヴィンチ編集部編(「届いた絵本」)
オール讀物11月号(文藝春秋)(「扉守」)
小説NON 11月号(祥伝社)(「希望の形」)
小説推理・オール讀物・星星峡(「1-1=1」「クリスマスの夜に」「オー・シャンゼリゼ」)
「最後の願い」光原百合
光原百合ベスト3@My Best Books!
「尾道草紙」尾道大学 創作民話の会
「銀の犬」「親切な海賊」光原百合
オール讀物 2007年10月号(「写想家」)
「嘘つき。 やさしい嘘十話」ダ・ヴィンチ編集部編(「木漏れ陽色の酒」)
オール讀物 2008年11月号(「旅の編み人」)
「新・本格推理 不可能犯罪の饗宴」二階堂黎人編・オール讀物 2009年8月号(「ピアニシモより小さな祈り」「花散る夜に」)
「イオニアの風」光原百合
「扉守 潮ノ道の旅人」光原百合
Livreに、これ以前の作品の感想があります)

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