「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」スコット・フィッツジェラルド

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家で子供を生むのが普通だった1860年代、病院での出産を決めた若き日のロジャー・バトン夫妻。夫妻は南北戦争後のボルチモアで社会的にも経済的にも恵まれた地位にあったのです。9月の早朝、赤ん坊がもう生まれたかどうかを確かめるために病院に急いでいたバトン氏が見つけたのは、かかりつけのキーン先生。しかし医師や看護婦たちの奇妙な態度に、バトン氏は恐れを抱き...。

今まで「グレート・ギャツビー 」しか知らなかったスコット・フィッツジェラルド。(とは言っても、私が読んだ時は「華麗なるギャツビー」だったんですが) この「ベンジャミン・バトン」は、今まで未訳だった短編が、映画化を期に翻訳されたということのようです。金目当てで沢山の短編を書いてるフィッツジェラルド、いいものはいいけど悪いものはとことん悪いのだそう。名作とされている物以外読む必要がなくて、翻訳する必要さえないというのが日米双方の研究者の間で共通了解となっているのだとか。そうだったのか...!

で、この作品。どこまで書いてしまっていいものなのか、正直迷ってしまうのだけど... でも既に色んなところで普通に書かれているようなので書いてしまうと、要するに、生まれた時に70歳ぐらいの老人の姿だったベンジャミン・バトンが、生きていくうちに徐々に若返っていくというSF的設定の話です。生まれた時は、まばらな髪はほぼ真っ白、あごからは煙色の長いひげが垂れています。当然実の親よりも遥かに年上。でもその実の父親は、現実を直視しようとしません。息子のひげを剃ったり、髪を切って黒く染めたり、全然似合いもしない子供らしい格好をさせたり。普通の赤ん坊のような行動を期待して、無理矢理1日中ガラガラで遊ばせたり。(実のお母さんがどう感じていたかなんていうのは全然ないんですが、これはどういう意図なんだろう?)
70歳の姿で生まれたとすれば、予め人生が70歳に設定されているようなものですよね。70年も生きられれば十分だとでも言うつもりなのか、それについては誰も触れていないのだけど...。
最初は楽しく読み始めたんですけど、途中からはちょっと痛すぎました。まるで指の間から零れ落ちていく砂みたいに、掴み取った幸せが零れ落ちていってしまうベンジャミン・バトン。幸せな時期って、本当に一瞬なんですね。普通の人間として生きていても、実際には一瞬のことなのかもしれないけど、それでも人生の流れの中で余韻もあるし、なんとなくそのままいったりもするはず。でもベンジャミン・バトンの場合は、本当に一瞬だということを直視させられることになるのが辛いところ。日本人は団体行動は得意だけど個性が足りなくて、なんて言われることも多いけど、個性というのも他人と同じ流れを生きているという土台があってこそのことですね。これじゃあどうしようもないです。...それでも精神年齢の流れが逆じゃなくて良かった、ってところかなあ。これが逆だったら本当に悲惨すぎるもの。少なくとも最後はね。それが唯一の救いだったように思います。(イースト・プレス)

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Commentaires(5)

ベンジャミン・バトンってフィッツジェラルドが書いた話だったんですね。
今回の映画化で初めて聞いた名前でしたが、内容をちらっと読んで思い出したのが、「飛ぶ夢をしばらく見ない」という映画・本でした。
「飛ぶ夢…」の方がだいぶ前に作られた映画だったので、てっきり原作もベンジャミンより古いのだと思っていたのですが、そうではないのですね。

こんばんは、四季さん。
私も初めて知りました。
そうだったんですか、フィッツジェラルドだったんですね。

フィッツジェラルドの作品は「華麗なるギャツビー」「マイ・ロスト・シティ」と途中で放り出した短編集くらいしか知らないのですが、
何といえばいいんでしょう、絶望だと一縷の光明を何とか見出そうとするエネルギーにシフトさせる事ができるんですが、虚しさはそういう訳にはいかず、投げやりで、とてもしんどい。
そういう空気を纏う作家のように思うんです。
「ベンジャミン・バトン」も彼の作品に特徴的な空気が漂っているのかなぁ…

わー、すみません、お返事がすっかり抜けてました!
「確認」だけして「投稿」をするのを忘れてるんです… なんてこと!
ごめんなさい、ごめんなさい。

>Johnnycakeさん
山田太一作品は「異人たちとの夏」しか読んでなくて「飛ぶ夢をしばらく見ない」は未読なんですが
こちらもなかなかファンタジックな作品のようですね。
なんとなくファンタジーなイメージがない人なので(「異人たちとの夏」もファンタジックなのに)意外です。

「ベンジャミン・バトン」は、どうやら映画と本では設定が違っているようなんですよー。
どんな感じになったんだろう?と思いつつ、映画の方が本よりもツラいことになりそうで…
本だけで満足してしまった私です。(^^ゞ


>garnetさん
そうなんです、フィッツジェラルドなんですよー。
まるで絵本のような可愛い本なので、気軽に手に取ったんですが…
実際には結構しんどい展開でした。あまり気軽に楽しめるような作品ではなかったです。(苦笑)

>絶望だと一縷の光明を何とか見出そうとするエネルギーにシフトさせる事ができるんですが、虚しさはそういう訳にはいかず、投げやりで、とてもしんどい。

「華麗なるギャツビー」しか読んでない私なんですが…
ああ、これ、すごく分かります。
私がなんとなく感じてたことを、そのものズバリ言葉にしてもらっちゃったみたい。
そうですね、そういう空気が流れてると思います。
…じゃあ一体どうすれば…? でしたよ。正直なところ。(笑)  

こんにちは。遅ればせながら映画を見た後、原作も読んでみました。
フィッツジェラルド初体験でしたが、文体が心地よかったです。
ブログの本文はもちろんですが、コメントでのやりとりも興味深いです。
「華麗なるギャツビー」読んでみようと思います。

こんにちは。はじめまして! コメントありがとうございます。
映画と原作、どちらも体験されたのですね。
私は結局映画を観ていなくて、この本を読んだだけなのですが
どちらも、となると色々また違う感想が出てくるのかもしれないですね。

興味深いだなんてありがとうございます。
「華麗なるギャツビー」、ぜひ。また違う空気を味わえると思います。^^

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