「ショーシャ」アイザック・B・シンガー

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ワルシャワのゲットーとも言えそうなクロホマルナ通りにラビの息子として生まれ、ヘブライ語、アラム語、イディッシュ語とタルムードによって育てられたアーロン。一番仲が良かったのは、天才児と言われたアーロンとは対照的に、周囲から知恵遅れと思われていた少女・ショーシャ。ショーシャは9歳になっても6歳のような話し振り、2学年遅れて通っていた公立学校からも、もう通わなくていいと言われてしまうほど。それでもショーシャと遊ぶ時だけは、アーロンは他の誰にも言えないようなこと、空想や白昼夢のことまで全部言うことができたのです。しかし1914年に第一次大戦が始まり、アーロンの一家もやがてワルシャワを去ることに。

アイザック・シンガーの自伝的小説。アイザック・シンガー自身、ポーランドのユダヤ人家庭に生まれているし、アーロンと年齢的にもほぼ同じなら、住んでた場所も経歴も家族のこともかなり重なってるみたいです。大きく違うのは、ショーシャのことだけ。この作品ではアーロンはショーシャに20年ぶりに再会することになるんですが、現実でアイザック・シンガーが再会できたのはショーシャではなく、ショーシャの娘だったんだとか。そう考えると、この作品はアイザック・シンガーが送りたかった人生というか、失われた人生というか、そんな感じがしてきます。

もうこのショーシャがとにかく可愛らしくて! 第一部では知恵遅れのイメージが強いんですけど、第二部のショーシャは1人の恋する女の子。もうこれは反則でしょ!ってぐらい可愛い。そして主人公も、そんなショーシャを大切に愛してます。ただ、それだけに、そのまま済むはずがないだろう、なんて思ってしまったりもするのだけど...。
でもそんなショーシャの可愛らしさに比べて、アーロンの魅力がイマイチだったかな。主人公に作者自身が色濃く反映されているせいで、妙なとこで謙虚だった? アーロンは女性にも不自由してないし、年上の友人たちにも可愛がられてるし、アメリカから来た女優のベティとその情人のサム・ドレイマンにも初対面でとても気に入られるんですよね。で、とんとん拍子に芝居の脚本を書くことが決まっちゃう。本当なら、かなり魅力的な才能溢れる青年のはずなんですけど、何なんでしょうね、この冴えなさは...。文才についても最後までよく分からないままで、でも最終的には世界的な作家になってたようだし、なんかこの辺りがどうもね。自伝的ではあっても小説として書くのであれば、もう少し書き込んで欲しかったところです。でも同じ書かれていないといえば、ナチスによるホロコーストも同様なんですが、こちらは書かれていないのが逆に良かったんですけどね。登場人物たちは第一次世界大戦も第二次世界大戦も体験してるし、ヒトラーの名前は何度も登場するし、戦争の犠牲になった人もいるのに、まるで戦時中という感じがしなくって、私にはそれがとても読みやすかったです。

作中で登場する「世界の本」というのが素敵。こういう本が存在すると思っただけで、いいことも悪いことも、全てが受け入れられそうな気がします。 実際には再会することのなかったショーシャもまた、この本の中にいるんですね。そうか、この作品はシンガーにとって「世界の本」そのものだったのかも。だからこそ、悲惨な戦争の描写もほとんどなかったのかもしれないなあ。(吉夏社)


+既読のアイザック・B・シンガー作品の感想+
「お話を運んだ馬」「まぬけなワルシャワ旅行」I.B.シンガー
「やぎと少年」アイザック・B・シンガー
「ショーシャ」アイザック・B・シンガー

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読書会の課題本ですよね!

今ゆっくり『アンネの日記』を読んでいるところなんですが、
こちらも読みたいと思い始めました。

そしてこの方は児童書も書かれているんですね。
『お話を運んだ馬』チェックしておきます。

「アンネの日記」から「ショーシャ」。ナチス繋がりになりますね。
戦争の扱い方が全然違っていて、びっくりされるかもしれないですが~。

「お話を運んだ馬」もぜひぜひ。私としては、むしろこちらの方がオススメかもしれません。
何というか、そちらの方が体の中にすとんと落ちてくるような気がするんですよね…
表題作が本や物語に関するお話で、それもすごく素敵ですし♪
あ、でも「ショーシャ」と繋がるような物語もあるので、併せてどうぞ~。

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