「カンディード」ヴォルテール

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かつてウェストファリア地方のトゥンダー=テン=トロンク男爵の城館にいたのは、生まれつき品行が穏やかで無邪気なカンディードという青年。しかしある日のこと、カンディードと美しい男爵令嬢のキュネゴンドが接吻しているところを男爵が発見し、カンディードは城館から追い出されてしまうことに... という表題作「カンディードまたは最善説(オプテイミズム)」他、全6編。

18世紀フランスの啓蒙思想家・ヴォルテールによる哲学コント6編。コントというのはフランス語で、短い物語のこと。要するに哲学的な主題を持つ短い物語のことですね。ヴォルテールは、悲劇や喜劇や叙事詩といった前世紀の古典主義を終生信奉しながらも、人間の不幸や挫折、幸福の探求とといった主題はもっと現実的で真実味のある形(つまり小説や哲学コント)で扱うのがふさわしいと考えていたようです。そして、あからさまに告白したり感傷に浸ることを嫌って、自身の抱える問題や懐疑、苦悩をコントの主人公の青年の姿を借りて表現し、重大で深刻な時ほど照れ隠しのように茶化してみせたのだそう。
SF的設定の「ミクロメガス 哲学的物語」、ペルシャになぞらえながらも実はフランスの実態を描いている「この世は成り行き任せ バブーク自ら記した幻覚」、バビロン時代の賢者の中の賢者をめぐる寓話「ザディーグもしくは運命 東洋の物語」、完全な賢人を目指しながらも、早くも美しい女にたぶらかされて、とんでもない結末を迎えることになる1日を描いた「メムノン または人間の知恵」、ライプニッツの最善説への懐疑が徐々に大きくなってきている「スカルマンタドの旅物語 彼自身による手稿」、そしてとうとう最善説を風刺するところまでたどり着いてしまう表題作。作品は書かれた年代順に並べられているので、ヴォルテール自身の人生を知ると、その実体験が全てその哲学コントに登場してるのが分かって、その変遷がすごく興味深いです。
どれも面白かったんだけど、私が一番楽しく読めたのは「ザディーグ」。でも、これは絶対以前読んだことがあるんだけど! どこで読んだんだろう? その時はヴォルテール名義ではなくて、童話集みたいなのに登場してたような気がするんですが... それも前半の半分か3分の1だけ。どこで読んだんだか、今パッとは思い出せません。ああ、気になるー。この「ザディーグ」、古代バビロンが舞台で「千一夜物語」のように楽しく読める物語なんですけど、その主題は人間の幸福や人生について考えるとても深いもの。本来なら「カンディード」が一番評価されてる作品なんでしょうけど... この2作品は分量もかなりあって同じぐらいの読み応えがあるんですけど、私としては風刺色の強い「カンディード」よりも、もっと正面から素直に書いてるような「ザディーグ」の方が好みでした。(岩波文庫)


+既読のヴォルテール作品の感想+
「バビロンの王女・アマベッドの手紙」ヴォルテール
「カンディード」ヴォルテール

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