「夜想曲集 音楽と夕暮れをめぐる五つの物語」カズオ・イシグロ

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丁度春になろうとしているベネチア。カフェバンドも一週間前から戸外で演奏するようになっていたある朝、ヤネクは観光客に混じって座っているトニー・ガードナーを見かけます。トニー・ガードナーはヤネクの母が大好きだった歌手。共産圏の国でレコードの入手が難しかったにもかかわらず、ほぼ全てのLPを持っていたほどだったのです... という「老歌手」他、全5編の短編集

カズオ・イシグロ初の短編集。でも短編集とは言っても、その主題はどれも同じ。カズオ・イシグロは、本書全体を五楽章からなる一曲として味わってもらうために、これらの5作品を全て書き下ろしたのだそうです。「ぜひ五篇を一つのものとして味わってほしい」とのこと。
確かにこれは、主題が繰り返し変奏され続けていく一編の音楽のような作品ですね。男と女の間にあるもの、そして人生の黄昏。副題に「音楽と夕暮れをめぐる~」とありますけど、ここでの「夕暮れ」は、一日のうちの時間的なものももちろんあるんですが、むしろ人生そのものにおける「夕暮れ」を意味しているのでしょうし... そして登場人物たちは文字通り音楽を演奏したり聴くことを好んでるんですが、ここでの「音楽」とは、この作品そのものなんでしょう。ジャズでもクラシックでも、1つのテーマが形を変えながら何度も登場すること、ありますよね。まさにあれです。
5編のうち、一番印象に残ったのは最初の「老歌手」。始まりはどうだったであれ、今は深く愛し合っている彼らの姿に人生を感じます。甘やかなほろ苦さと、ふとよぎる切ない哀しさ。そしてこの「老歌手」に登場するリンディ・ガードナーは、表題作「夜想曲」に再登場。どれもそれぞれに良かったんだけど、この2編が一番好きだったな。(早川書房)


+既読のカズオ・イシグロ作品の感想+
「日の名残り」カズオ・イシグロ
「遠い山なみの光」カズオ・イシグロ
「わたしたちが孤児だったころ」カズオ・イシグロ
「浮世の画家」カズオ・イシグロ
「私を離さないで」カズオ・イシグロ
「充たされざる者」カズオ・イシグロ
「夜想曲集 音楽と夕暮れをめぐる五つの物語」カズオ・イシグロ

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Commentaires(4)

こんにちは。
香り高い短編集でしたね。
音楽と夜、愛の黄昏をテーマにした短編集で、
時代背景もほぼ同じ、
5つの楽章からなる交響曲のような統一感がありました。

わたしは第2編・第4編の軽妙なユーモアに
ちょっとびっくりしました。
イシグロって、こういうのも書くんだなあと。

木曽のあばら屋さん、こんにちは!
ほんと、とても素敵な短篇集でしたね。
短編は苦手なのでどうしようかと思ったのですが、こういうのなら!
統一感があると、それだけでワンランクアップするような気がします。

うんうん、今まで知らなかったカズオ・イシグロの一面もありましたね。
まさかカズオ・イシグロ作品で笑う日が来ようとは、でしたよ。
第2編なんて、スラップスティックなコメディとして演じることもできそう。
第4編も、情景を想像すると可笑しいですよねー。
包帯ぐるぐる巻き、ですしね。(笑)

四季さん☆こんばんは
イシグロさんの音楽好きな気持ちがそこかしこに出ていて、こういう感じもいいなぁって思いました。
リンディ・ガードナーさん、なかなかお茶目でしたね。

Rokoさん、こんにちは~。
こういうのもいいですよね。いつもの作風とはちょっと違っていて。
そうそう、リンディ・ガードナーさんお茶目でしたね~。
「夜想曲」では、「老歌手」に出てた時とはまたイメージが変わっていて
そういうとこも楽しいですよね♪

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