「怪談 牡丹燈籠」三遊亭円朝
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江戸時代。旗本・飯島平左衛門の邸では、正妻亡き後、妾のお国が幅を利かせるようになり、お国と正妻腹の娘・お露との仲は険悪に。そのためお露は女中のお米と共に邸を出て、平左衛門が購入した寮に別居することになります。そして、そんな2人をある日訪れたのは、顔馴染みの医者・山本志丈と、志丈に連れられて来た浪人の萩原新三郎。現在21歳でまだ妻帯していない新三郎はすこぶる美男。お露は新三郎に、新三郎もお露に心を奪われます。しかしなかなか会う機会もないまま、お露は新三郎に焦れ死。お露が亡くなったと聞いて、嘆き悲しむ新三郎。しかしそれから間もなく、新三郎はお米に再会。2人とも元気だったと知り、喜びます。そしてお露は女中のお米と共に、牡丹灯籠を手に毎晩のように通うようになり...。しかし新三郎の世話をしている関口屋伴蔵がこっそり蚊帳を覗くと、そこにいたのは幽霊としか思えない女を抱く新三郎の姿。このままでは命がないと知った新三郎は、良石和尚から金無垢の海音如来をもらい首にかけ、家には魔除けの札を張るのですが...。
人情噺や怪談噺が得意だったという初代三遊亭円朝による創作落語。これは中国明代の小説集「剪灯新話」に収録されている「牡丹燈記」が、落語の演目のために翻案されたもの。でも本来の「牡丹燈記」に由来する部分は全体から見るとほんの僅かなんですね。そのほとんどは円朝自身が作り上げた物語。今や「四谷怪談」や「皿屋敷」と並んで、日本三大怪談とされているんだそうなんですが。
実際に演じられた落語の速記をとって、それを本に仕立てたというものだという説明が序にあるんですが、落語ならではのテンポの良い台詞回しや滑らかな物語の展開がまず見事。怪談としての本筋と言えるお露と新三郎の物語に、飯島家のお家騒動や敵討ち、供蔵とその女房・お峰の因果噺が絡んで、物語は重層的に展開していきます。これほどまでに分厚い物語だったとはびっくりー。私はてっきり怪談部分だけなのかと思ってましたよ。でもその主役のはずの怪談自体は、正直それほど怖くなくて... やっぱり生きている人間の方がよっぽど怖いですね。男と女の色と欲、忠義と裏切り、そして殺人。1つの物語にこれだけのものが盛り込まれて、それでいて最後には綺麗にまとまるというのもすごいなー。これこそが名人の語り口というものでしょうか。落語にしては相当長い話なんじゃないかなと思うんですけど、きっと聞いてた人はもう本当に聞き入ってしまったでしょうね。実際に演じられた高座が見てみたくなるし、今はもう円朝自身による語りが見られないのがとっても残念。いや、他の落語家さんの語りでもいいんですけどね。今度やってるのをみつけたら、ぜひ聞いてみなくては!(岩波文庫)
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