「一九八四年」ジョージ・オーウェル

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世界がオセアニア、ユーラシア、イースタシアの3つの超大国に分裂した近未来の社会。真理省の記録局に勤める党員・ウィンストン・スミスの仕事は、<ビッグ・ブラザー>率いる党の方針転換や様々な出来事によって、次々に変更を余儀なくされる歴史を改竄し続けること。歴史は次から次へと改竄され、しかし改竄された証拠は何ひとつとして残らず、全ての嘘は歴史へと移行したとたんに永遠の昔からの真実とされてしまうのです。そんな体制に、ウィンストン自身、強い不満を抱いていました。そんなある日、ウィンストンに接触してきたのは黒髪の若い美女・ジュリア。ウィンストンはジュリアと恋に落ち、テレスクリーンによる監視や思想警察の目をかいくぐってジュリアと逢い引きを重ね、やがては伝説的な裏切り者が組織したという<ブラザー同盟>に加わることになるのですが...。

ええと、普通は村上春樹さんの「1Q84」からこちらにくる方が多いと思うし、そもそもこの本がハヤカワから新訳で出たのもその流れなんでしょうけど、私はこっちだけ。以前ブラッドベリの「華氏451度」(感想)を読んだ時に、この作品もシャレにならないぐらい怖いという話を聞いて興味を持っていたのでした。しかも現在読破中のハヤカワepi文庫だし!(嬉) その「華氏451度」は1953年に書かれた作品ですが、こちらは1949年に書かれた作品。こちらの方がほんの少し早いですね。典型的なディストピア小説です。
こういう作品を読むといつも思うんですけど... 発表された当時も世論を騒がせたんでしょうけど、実際に書かれた時よりも現代の管理社会の中で読んでこそ、この怖さが実感できるかもしれませんね。近未来として書かれていたことが、実は全然未来の話じゃないってことに気がつかされることが多いんですもん。恐ろしいほどの合致。本を読んだ人が、そこに書かれているものを作り出そうとしたわけでもないでしょうに。たとえば星新一さんの「声の網」(感想)を読んだ時も思ったんですけど、素晴らしいSF作家が書く作品って、未来を恐ろしいほど見通してますね。

この作品は、その「声の網」や「華氏451度」ほど、まさに「今」という感じではなかったのだけど... 実はそうでもないのかな。もう既に「ニュースピーク」とか「二重思考」が生活の中に入り込んでいるのかな。こういう思考的なものって、気がついたらすっかり支配されてるんだろうなと思うと怖いです。ちなみに「ニュースピーク」は、言葉をどんどん単純化・簡素化する新語法。それによって思考をどんどん単純化して、思想犯罪に走れないようにするもの。反政府的な思想を持っても、それを十分に書き表すことができなくなってしまうというわけです。そして「二重思考」は、「戦争は平和なり、自由は隷属なり、無知は力なり」という言葉に代表されるように、矛盾する2つの事柄を同時に等しく信じて受け入れることができるようになること。そもそも歴史を改竄し続ける「真理省」、戦争を生み出し続ける「平和省」、思想犯を拷問にかけて人間性を矯正する「愛情省」という各省の名称自体が二重思考の産物。そして考えてみると、確かにピンチョンが解説に書いているように、現代アメリカの「国防省」もまた、新たな戦争を作り出す省なんですよねえ。ああ、ウィンストンとジュリアの物語自体もまた、そうなのかも。まずこういった高度に思想的な物語の中にロマンスが存在すること自体、二重思考なのかもなんて思ったりもします...。そして「愛すること」の反対は、「無関心なこと」でしょうか。うーん。
来るべき社会の姿を含め、様々なことを考えさせられる作品です。(ハヤカワepi文庫)

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Commentaires(4)

この表紙は渋いですね!
この本もはるか昔に読んだままうろ覚え状態です。^^;
ラジオ体操みたいなのをいい加減にやっていてちゃんとやりなさいとかってBig Brotherから言われたりしている部分があったようななかったような…。
テレビ番組でBig Brotherってのがありますが、それがこの1984から来ているってのを知らない人たちがいっぱいいて、オーウェルも知名度低くなったのねぇ、と最近思いました。
いつかじっくり再読したい本のひとつです。

この画像で見ると黒一色に見えるんですけど
実際には星空のように、白い点が散ってるんですよ。
そこが「実はSFなんだよ」と言われてるようで、なんだか楽しいです。
あ、私はこの作品は今回がまるっきり初めてなんですよー。
そうそう、ラジオ体操みたいなのの場面、ありますあります。
で、テレスクリーン越しにインストラクターの女性に怒られるのです。^^

訳者あとがきによると、イギリス人が「本当は読んでないけど読んでるふりをする本」の
第1位が、なんとこの作品なんだそうですよ!
でもこれは読むべき本ですね。というか、風化させたくない作品ですね。
発表当時に読むよりも、今読んだ方がその怖さが実感できるような気がします…
(と言いつつ、感想がなかなか書けないのですが~)

旧訳の方ですが、これは私も読みました。怖いなぁ、、と思いましたね。ヘタなホラー小説よりぜったい怖い。っていうか、痛い、か・・。
ウィンストンは体制反抗の意味で日記をつけていますが、それが本人の尊厳のもとなのでしょうか。ナカナカ考えさせられるところです。

でも、1984年なんて、もう25年も前なんですよね。。

shosenさん、こんにちは~。
うんうん、ヘタなホラーより絶対怖いですよね。
だって、ほんとシャレにならないんですもん!
ウィンストンの日記もすごく意味深長ですよね。私にはきちんと掴みきれてないけど…
彼はまだ反体制的な文章を書くことができるけど、それでもやっぱりニュースピークの影響を
免れてはいなくて、でしょうか。ああ、改めて日記の部分だけ読み返したくなります。

でもそうなんですよね。もう25年前なんですものねえ。
デビッド・ボウイもこの作品を映画化したがったらしいですね。

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