「イオニアの風」光原百合

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ゼウスの一族がオリュンポスの神々としてこの世界の統治者となり、天も地も安定し始めた頃。平和が訪れた地上では動物たちも順調に増え続け、そんな動物たちを管理する種族を大地から作り出すことになります。そしてゼウスの意向を受けたプロメテウスが作ったのは、神々と同じような姿の生き物。しかしただ従順な、神々の意志を忠実に実行する知恵を持つだけの種族を作るはずだったのに、プロメテウスの親指から流れた神血のせいで、人間は自分の意志を持つことになってしまったのです。怒るゼウスはプロメテウスを逆さ吊り刑に処し、人間を滅ぼすための大洪水を起こします。しかしただ1人の人間がゼウスの心を変え...。そしてそれからさらに時が流れ、オリュンポスでは今、人間の歴史に神々が介入することの是非を問う会議が開かれていました。

ヘレネとパリス、メネラオスとヘレネ、テレマコスとナウシカア。人間の歴史への神々の介入をかけて行われた賭けは3つ。神々はその賭けに介入を許されていなくて、選び取るのは人間自身... なのですが。

神々同士の会話の場面では、読み始めこそ「あ、こんな話し方するんだ」とか、私自身が以前から持ってた神々のイメージとは少し違ってたりもしたんですが、その辺りはすぐに馴染みました。イメージが違っていているところが、逆に面白かったりもしましたしね。特にモイライ! 私の中ではもう白髪のおばあさんのようなイメージしかなかったので、これは意表を突かれました。可愛い! しかもあのペタペタ、素敵! 読み終えた頃にはすっかりこの世界に愛着がわいてしまっていましたよ。そして、テレマコスとナウシカアのことを書きたいと思ったのがこの作品が生まれるきっかけというだけあって、やっぱりこの3つ目の話が一番読み応えがあって楽しかったです。(「いにしえからの慣わしにしたがって三度」というのは全くの同感だし、最初の2人のエピソードも良かったですけどねっ) ええと、トロイア戦争絡みの1つ目2つ目のエピソードはともかくとして、この3つ目のテレマコスとナウシカアについては、全くのオリジナルですよね...? テレマコスとナウシカアの話ってあるのでしょうか。確かに同じ時代だし、繋がりはあるのに、結び付けて考えたことってなかったなあ。じれったい2人が可愛いったら。
そして読んでいて一番印象に残ったのは、生まれた神々がそれぞれに司るもの、自分に与えられた役割について探るというくだり。その辺りに関しては、実は全然考えたことがなかったんですが、「なるほど~、本当にこんな感じなのかもしれないなあ~」。そしてここで、密かに努力を重ねながらも、それをまったく表に見せないヘルメスがまたいいんですね。作品全体を通しても、特に印象に残ったのはヘルメスでした。光原百合さんご自身もあとがきで「おしゃべりでいたずら好きで気まぐれで、意地悪なところと情け深いところをあわせ持つ」と書いてらっしゃいますが、本当にその通りの様々な表情を見せてくれるヘルメスがとても素敵で、イメージぴったり。そして今まで良いイメージのなかったアレスもまた違った意味で印象的でした。粗野で乱暴で、脳みそが筋肉でできたような戦好きというイメージだったんですが、ヘルメスの思いを読むことによって、また違った視点から捉えられるようになったかも。アレス自身の努力によって変えられたはずの部分ではあるけれど、確かにそういった知恵を持っていないのはアレスの責任ではなく... 哀しい存在ですね。
構想20年、実際に書き始めてから9年、ということで、読んでいてもその意気込みがとても強く感じられる作品でした。楽しかったです♪ 私はギリシャ神話が大好きだからもちろんなんですけど、あまり詳しくない人でも、これはきっと楽しめると思います~。逆にその人の中でのギリシャ神話の基本となってしまうかもしれないですね。(中央公論新社)


+既読の光原百合作品の感想+
「ありがと。 あのころの宝もの十二話」ダ・ヴィンチ編集部編(「届いた絵本」)
オール讀物11月号(文藝春秋)(「扉守」)
小説NON 11月号(祥伝社)(「希望の形」)
小説推理・オール讀物・星星峡(「1-1=1」「クリスマスの夜に」「オー・シャンゼリゼ」)
「最後の願い」光原百合
光原百合ベスト3@My Best Books!
「尾道草紙」尾道大学 創作民話の会
「銀の犬」「親切な海賊」光原百合
オール讀物 2007年10月号(「写想家」)
「嘘つき。 やさしい嘘十話」ダ・ヴィンチ編集部編(「木漏れ陽色の酒」)
オール讀物 2008年11月号(「旅の編み人」)
「新・本格推理 不可能犯罪の饗宴」二階堂黎人編・オール讀物 2009年8月号(「ピアニシモより小さな祈り」「花散る夜に」)
「イオニアの風」光原百合
「扉守 潮ノ道の旅人」光原百合
Livreに、これ以前の作品の感想があります)

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Commentaires(2)

四季さん、おはようございます♪

構想20年、実際に書き始めてから9年、すごいですね!
ギリシャ神話、全然詳しくないんですが子どもの頃好きでよく読んでいたんです。
これもいつか手にとってみたいです。

そして先日は光原さんの本のオススメありがとうございました^^
どれも面白そうで迷ってしまう(笑)
まずは『時計を忘れて森へいこう』にしようかな・・・
少しずつチェックしていきますね。

はぴさん、おはようございます~。
わあ、はぴさんもギリシャ神話がお好きだったんですね~。
私も子供の頃から大好きで。
まず、そこらじゅうに色んな神々がいる、というところからワクワクしましたが
到底神々とは思えないような人間臭さで、読んでいてもドキドキで~。
この作品は、そんな神々が自由に動き回ってて、すごく楽しかったです!
はぴさんもぜひぜひ♪

でもまずは「時計を忘れて森へいこう」かな。
これ、ミステリなんですけど、ほんとに心温まるお話なので~。
きっとはぴさんにも気に入っていただけるのではないかと。
という私もこの作品が光原作品との出会いだったんです。
ぜひ手に取ってみてくださいね。^^

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