「妖精メリュジーヌ伝説」クードレット

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ある日クードレットが主から命じられたのは、その祖先にあたる人物や出来事などの史実を物語に編むこと。クードレットの主はポワトゥのさる大領主で、パルトゥネの殿様と呼ばれており、その一族は妖精の血を引いているといわれていました。それは気高いリュジニャン城を築城し、数々の町を築かせたメリュジーヌのこと。クードレットは早速妖精メリュジーヌとその伴侶となるレモンダンの泉のほとりでの運命の出会い、結婚、そして彼らの10人の息子たちの物語を書き始めます。

メリュジーヌ伝説は、元々はケルト的な妖精伝説。現存するテキストとしては、ジャン・ダラスによって1393年に書かれた散文の「メリュジーヌ物語」、そして1401年以降に書かれたクードレットによる韻文作品「妖精メリュジーヌ伝説」が最も古いようで、これはそのクードレットの方。でもその2つの作品以前から、メリュジーヌにまつわる口承伝承がフランス各地に存在していたようです。
この物語に登場するメリュジーヌは、上半身が美しい女性で下半身が蛇。普段は人間の女性の姿で過ごしてるんですが、実の母親の呪いによって、土曜日だけ下半身が蛇になってしまうんですね。だからメリュジーヌの夫は、土曜日のメリュジーヌがどこに行こうとも何をしていようともその秘密を探らないという約束なんです。でもこういう約束は必ず破られるもの。要するに、「鶴の恩返し」と同じ「見るな」のタブー。でもこの作品はそれだけではなく... ここに登場するリュジニャン一族は実在していて、その一族の歴史を語る物語でもあったのでした。そこにびっくり!
読んでいてとても強く感じたのは、キリスト教の影響。作中では登場人物たちが繰り返しキリスト教、特にカトリックの信者であることが強調されていて、それはメリュジーヌも同様なんです。最初の出会いの時から、神の御名を出してレモンダンの警戒を解こうとしてますし、実際結婚式はカトリックの司祭によって執り行われます。でも、その妖精たちの故郷は、アーサー王伝説で有名なアヴァロン! 文中には「トリスタンの一族の血を引いた者」や「魔法使いマーリンの弟子」という言葉も登場するし、キリスト教色が濃いとはいえ、原形がまだまだ残ってるんですねえ。

10人の子供がいようとも、いつも変わらず美しい恋人であり続けるメリュジーヌ。このメリュジーヌの存在は多くの詩人を引き付けたようで、色んな作品の中でメリュジーヌの存在が感じられるのだそう。例えばアンドレ・ブルトンの「ナジャ」や「秘法十七番」。ゲーテの「ウィルヘルム・マイスター」の中の挿話の題名は、「新メリュジーヌ物語」。あと、調べてたら、メリュジーヌは「メリサンド」とも呼ばれると分かって、それもびっくりです。メリサンドといえば、メーテルランクの「ペレアスとメリザンド」(感想)じゃないですか。そうか、これも水の女だったんだなー? 「ペレアスとメリザンド」でメリザンドが初めて現れたのは泉のほとりだし、こちらもそうですもんね。この「妖精メリュジーヌ伝説」は、訳が子供向けのような語り口であったこともあって、読みながらそれほど物語に入り込めなかったのが残念だったし、せっかく原文が韻文なのに散文に訳されてしまってるのが残念だったんですけど、他のメリュジーヌの物語やそれに触発された作品も読んでみたいな。(現代教養文庫)

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今日は、いただきもののお休みです♪う~ん…何をすればいいのか戸惑ってしまいます( » Lire la suite

Commentaires(4)

四季さん、ご無沙汰しています。
たまたま先日、チョコちょこもブログでメリュジーヌに触れたのですが
ベリー公の時禱書Les Très Riches Heures du Duc de Berryの「3月」に
Lusignanの城が描かれています。
その城の右上に、メリュジーヌが金色のドラゴンの姿で飛んでるんですよ☆
何度か見ている絵だったのですが、ちっとも気付いていませんでした(笑)
TrackBackさせていただきますね。

チョコちょこさん、こんにちは!
メリュジーヌ、ナイスタイミングだったんですね。^^
わあー、リュジニャン城にメリュジーヌが飛んでる絵があるんですか!
それはぜひ見てみたい~。
ベリー公の時禱書の3月ですね。
どこで見られるかしら… と思ってネットで検索をしてみたら。
早速みつけました。
本当だ、金色のドラゴンが飛んでる!! 素敵素敵~。

またのちほど、ゆっくりブログにお伺いさせていただきますね。^^

メリュジーヌってどこかで聞いた名前だと思ったら、山岸涼子の漫画「妖精王」に出てきてたんでした。恩返しの話なんですね。
原作が英文だったら入手できると思うんですが、そうではないようですね。残念。

あ、「妖精王」にも出てくるんですか!
ケルト神話とか色々な絡みがあるようで気になってるんですが、まだ読んだことなくて…
山岸良子作品は「日出処の天子」しかまともに読んでないんです。
「妖精王」も読まなくちゃ!!

この作品は、原文はフランス語ですね。
英語ではMelusineもしくはMelusinaと言うようですが…
見つけるのはちょっと難しいかもしれないですねえ。

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