「妖精のおくりもの 世界妖精民話集」トマス・カイトリー

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トマス・カイトリーの著書「フェアリーの神話学」の解説部分と代表的な民話を収めたのが「妖精の誕生」。そちらに収めきれなかった民話を集めたのが、この「フェアリーのおくりもの」。スカンジナビア、ドイツ北部のリューゲン島、ドイツ、スイス、イギリス、ケルト人とウェールズ人という章に分けて民話67編を紹介していきます。

先日読んだ「妖精の誕生」とセットになるような本で、この2冊を読んで元々の著作「フェアリーの神話学」がほぼ網羅されることになります。ええと、トマス・カイトリーは妖精を「ロマンスの妖精」と「民間信仰の妖精」の2つに大別してるんですね。「ロマンスの妖精」は、アーサー王伝説やシャルルマーニュ伝説に登場するような妖精。その多くが魔法や様々な超能力を身につけた人間の女性で、ギリシア神話の運命の三女神・モイライの流れをひくもの。「民間信仰の妖精」は、自然力と人間の心の能力を人格化したもので、人間でも神でもない「妖精」。この「妖精のおくりもの」で紹介されているのは、その「民間信仰の妖精」の物語です。
カイトリーによると、「民間信仰の妖精」は、エルフ、小人、家の精、川や湖の精、そして海の精の大きく5つに分けられるとのこと。で、例えば同じエルフでも、「エッダ」に登場するのは「アルファル」、スウェーデンでは「エルフ」、デンマークでは「エルヴ」、ドイツでは「エルベ」、イギリスでは「エルフ」というように各地方によって呼び方が変わっていて、その性格も少しずつ違うんですね。やっぱり人と共に移動するにつれて、微妙に変化していったんだろうな。そして今回驚いたのは、アイルランドのイメージの強かった「取り替え子」の物語が、実はスカンジナビアにもあったこと。妖精だけでなくお話も移動してるのに何も不思議はないんですけど、やっぱりちょっとびっくりでした。こういう妖精やお話の発祥した場所とか移動したルートが分かればいいのに。面白いだろうな。(まあ、民族の移動を追っていけば、ある程度分かるんでしょうけど)

「妖精の誕生」では、ペルシアやアラビアといった東洋のフェアリーの話に始まっていたのに、こちらにはその辺りの民話がまったくなかったのが残念なんですが、収められている伝承のほとんどはカイトリー自身が採取しているようなので、さすがにペルシアやアラビアでの採取は無理だったということなんでしょうね。その代わりに、こちらには「妖精の誕生」では取り上げられていなかったリューゲン島やマン島、そしてスイスが取り上げられていたし、とてもバラエティ豊かな民話集になってました。国ごとの妖精譚を読むのも面白いですが、そういった物語や妖精の存在を体系的に捉えられるところがやっぱりこの人の著作の特徴でありいいところかと。(現代教養文庫)


+既読のトマス・カイトリー作品の感想+
「妖精の誕生 フェアリー神話学」トマス・カイトリー
「妖精のおくりもの 世界妖精民話集」トマス・カイトリー

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