「フランス幻想民話集」「フランス妖精民話集」「フランス怪奇民話集」植田祐次訳編

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今はもうない現代教養文庫は、こういう伝承民話集の本を色々と出してたんですよね。以前も「ケルト妖精民話集」「ケルト幻想民話集」「ケルト魔法民話集」(感想)、「ブルターニュ幻想 フランス民話」(感想)、「ジプシー民話集」(感想)なんていうのを読んだんですが、今回はフランスの民話集を3冊。「幻想」「妖精」「怪奇」です。

本題とは関係ないのだけど、こういう時に使われる「幻想」という言葉が、今ひとつ掴みきれていない私です。白水uブックスで「○○幻想小説傑作集」なんていうのが出てるのを何冊か読んだんですが(○○は国名)、これって「幻想」というより「怪奇」では? なんて思う作品が多かったんですよね。「幻想」って、現実から離れた空想的な... ええと、ファンタジックなものを指すんだと思ってたんですけど、違うんですかね? 純粋な言葉の意味としてはホラー味はあんまり関係ないと思うのだけど、文学的にはホラー味を含むのが常識なんでしょうか...?

今回読んだ「フランス幻想民話集」も、ちょぴり怖いお話が多かったです。全体的に死の影が濃くて、後味が良くなくて... 一種独特な陰鬱さ。「恋人たち」「悪魔」「領主」「求道者」「死者」「亡霊」の6章に分かれてるんですが、「悪魔」「死者」「亡霊」はともかく、「恋人」の章ですら結構スゴイ。美しい娘の心を得ようと、彼女が欲しがるもののために頑張る男が、最後にはとうとう失敗して心臓を失ってしまう話とか、実の母親に恋路を邪魔される人間と鳥の悲恋話とか、悪魔にたぶらかされる美しい娘の悲惨な話とか、女を誘惑しては捨てる浮気な男に、死んだ女性たちがこぞって仕返しをする話とか! 普通のハッピーエンドが1つもないじゃないですか。いやでもすごく面白いのだけど。あ、この本には「青ひげ」も入ってました。ペローの「青ひげ」とはまた違うけど、基本的なとこは一緒。
そして今度は「フランス妖精民話集」を読んでみると。こちらはうって変わってどこかで読んだ童話のような話が多かったです。グリムやペロー、北欧の民話に見られるような話もあれば、神話的なものもあって(実際に「プシュケ神話」の章もある)、基本的には美しく気立ての良い少女が、途中いささか苦労するにせよ、最後に幸せになる、あるいは醜い男がそのありのままを愛してくれる女性を見つけ、最後には素晴らしい王子さまになる、という物語が中心。「フランス幻想民話集」とは雰囲気が違いすぎてびっくり!
そして「フランス怪奇民話集」。ええと、怪奇ってこういうのなんですかね? 確かに死者が起き上がって復讐にやって来たり、生きている人間をむさぼり喰ったり。あるいは死者が世話になった人物に恩返しをしたり。悪魔に狙われたり。そういう風に書くと怖そうだし、実際、生と死の境目が曖昧になったような話が多いんですが... あんまり怖くないし、むしろ農民が悪魔をやっつけてしまったり、「イワンのばか」的なユーモアを感じるような? これなら「幻想民話集」の方が余程怖かったよ! あっちの方が「怪奇」だと思うんだけど、こっちが「怪奇」? そういうものなんでしょうか? うーん、よく分からん。

ということで、3冊の中では「フランス幻想民話集」がダントツで面白かったです。あと「フランス怪奇民話集」の解説の、死の通過儀礼、死と復活の儀式の話や、再生によって神性を得たとも考えられるモチーフの話も面白かった。こういう読み解き方を知ると、民話を読むのがぐんと面白くなるんですよね。以前読んだ中沢新一さんの「人類最古の哲学」(感想)にもそういうのがあってものすごく面白かったんだけど、他にもそういう読み解き方に関する本があったら読みたいなあ。
ご存知の方がいらしたら、ぜひ教えてくださーい。(現代教養文庫)

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Commentaires(4)

四季っち、こんにちは~。
「幻想」と「怪奇」の関係ですけど、
たまたま昨夜読んだ本に
ファンタジーの語源は「まぼろしや幽霊」って書いてありました。
(ってことは、ファントムも同じ語源かな)
日本人が思うより、西洋でのファンタジーの幅は広いのかも。
そのファンタジーを「幻想」と訳してるけど、
日本では「怪奇」が「怪談」として発達してたことで、
「幻想」の中でも「怪奇」は独立したジャンル扱いなのかなって思います。

sa-kiっち、こんにちは~。
わあ、早速ありがとうございます。
へええ、まぼろしや幽霊ですか。まぼろしはまだしも、幽霊まで入っちゃうんだ。
(うんうん、ファントムもきっと同じ語源ですね)
となると、思ってる「ファンタジー」とはまた違ってきてしまいますね。
子供の頃から馴染んでるファンタジー作品といえば、まずは魔法が出てくるという感じだし
その辺りで、勝手に範囲を狭めて考えちゃってたということなんですねえ、きっと。

今、ウィキペディアで「幻想文学」のとこを見てみたら
「超自然的な事象など、現実には起こり得ない、架空の出来事を題材にした文学の総称」
とありました。
超自然的な出来事にホラー味を感じてるのは、読者の勝手?(笑)
そうですね、日本には古来の怪談もあるし。
訳の問題もあるし、特有の文化や意識の差というのも大きそうですね。

こんにちは。
 怪奇と幻想、そうですねぇ、確かに四季さんのおっしゃるように日本の感覚というか語感とあちらの感覚はしっくりこないことがありますね。これは訳の問題なのか、カテゴリの分類の違いなのか。クトゥルフ神話もどこかの特集では幻想小説とされていましたが、、、直視しただけで発狂するような神様が出てくるような話が幻想的かと言われると、、うむむむむ。幻想というと、美しいイメージがありますからねぇ、日本語的には。
 

樽井さん、こんにちは~。
幻想と怪奇だけでなく、他にも色々とありそうですよね。
たとえばあちらのホラー映画はスプラッタと悪魔憑き絡みが多いわけだし
もしかしたら、その辺りにも意識の差異というのは存在するのかも。
あらー、クトゥルフ神話も幻想ですか。
うん、私も「幻想」と聞くと、どこか美しいイメージがあります。夢幻、みたいな。
クトゥルフはそういうのとはちょっと違いますものねえ。
「幻想小説傑作集」みたいなアンソロジーは、どうも大半がホラー短篇集のようなので
ホラーが苦手な私としては要注意です。(笑)

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