「バスク奇聞集」堀田郷弘訳編

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ピレネー山脈を仰ぎビスケー湾を臨むフランス西南部に広がるバスク地方。ここに古来より居住しているのは、バスク語を母国語に持つバスク民族。バスク民族は起源不明の神秘的な民族で、バスク語もまた、近隣のフランス語やスペイン語といったラテン語系の言語とは異なり、未だに世界のどの言語にも系統づけられていないものなのだそうです。そして、峻峰ピレネーの山なみに守られて、近隣の諸民族とはまた違う特異性を保ち続けているバスク地方に伝わるのは、女性的な魅力と妖怪の恐ろしさを合わせ持つ妖精・ラミナや、超人的な力を持ちながら無垢な子供にだまされる怪物タルタロといった自然が妖怪化したもの、熱心なカトリック信仰が土俗民話が結びついた、キリスト教の説話的なものや魔女たちの民話、そして動物と共存するバスク人らしい言葉を話す動物たちの民話など。これらの民話は、古くからバスク人たちの間で口承により伝えられてきたものなのです。

ラミナやタルタロの民話も、いかにも民話らしくて面白いんですが、この本でユニークだったのは断然「主キリストとペテロ聖人の奇跡」の章。既に知ってる民話の登場人物がキリストとペテロに入れ替わってるだけ、というのも多かったんですけど、今まで読んだことないパターンのも色々と。で、このキリストとペテロ、なんだか人格的に変なんです...。泊めてもらった家で翌日の麦打ちをやる約束をしておきながら、いつまで経ってもベッドから出ようとしなくて主人を怒らせてるし! 旅をしてる最中に女と悪魔が猛烈な口喧嘩をしているのを見て、ペテロはいきなり双方の頭を切り落としてしまってるし!(あとでまたくっつけるんですけど、間違えるんだな、これが) 石に躓いたり牛糞を踏んで滑って、ペテロが怒ってるし! ...ペテロはなんだか小ずるくて全然人間できてないし、キリストだって、ちょっとしたことで根に持ってペテロに仕返ししてるし、一体何なんでしょうね、この2人は。しかも、おなかがすいたペテロが麦の落穂を拾い始めて、それをキリストが見咎めるという話があるんですけど、この場面の挿絵が凄すぎる!(大笑)
バスク人たちは、こんなキリストとペテロでも信仰心が揺らがなかったんですかね? それとも逆に人間味を感じて親近感だったとか? 私だったら、こんな人たち信仰したくなくなっちゃいそうだけどなー。(笑)(現代教養文庫)

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