「ローマ人の物語 すべての道はローマに通ず」27・28 塩野七生

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現代人から「インフラの父」とさえ呼ばれているローマ人。インフラストラクチャー(社会資本、基礎設備、下部構造)ほど、それを成した民族の資質を表すものはない、というのが塩野七生さんの考え。ローマ人にとっては「人間が人間らしい生活をおくるために必要な大事業」であり、それらの全てを備えていないと都市とは認められていなかったいうインフラについて重点的に取り上げていく巻です。

次は五賢帝最後のマルクス・アウレリウス・アントニウスなのかな?と本を広げたら、違いました。今回はインフラのお話ばっかりで、ローマの皇帝たちは一休み。
ええと、インフラにもハードなものとソフトなものがあって、ローマ時代のハードなインフラと言えるのは、街道、橋、港湾、神殿、広場(フォールム)、公会堂(バジリカ)、円形闘技場、半円形劇場、競技場、公衆浴場、上下水道など。そしてソフトなインフラとは、安全保障、治安、税制、医療、教育、郵便、通貨制度などなど。この巻で主に取り上げられているのは、ハードなものとしては街道、橋、水道。ソフトなインフラとしては医療と教育。他のは改めて取り上げられたりはしてないんですが、これまでの巻でも随時触れられてきてますしね。

まず面白かったのが、ローマと支那という西と東の大帝国の対照的な姿。同じような技術力を持ちながらも、支那(まあ、基本的には秦のことだと思うんだけど)は万里の長城を築き、ローマは街道を築く。縦になってるか横になってるかの違いだけで、技術力はほぼ同じ。でも、人の往来を絶つ万里の長城を築いた支那人とは対照的に、ローマ人は自国内の人々の往来を促進するローマ街道を築くんですね。どちらの民族も作ろうと思えば壁でも道でも作れたはずなのに、自国の防衛のためにまるで正反対の行動を取っているというのがスゴイ。
あと、共和制時代は財務官(ケンソル)や執政官(コンスル)が、帝政となってからは皇帝が立案して、元老院(セナートウス)が決定を出した、というインフラ事業なんですが、その費用を国庫で賄うのは当然のこととしても、権力者や富裕者が私財を投じて建設し寄贈した公共財も多いというのも、すごいことですよね。日本の政治家は、自分の地元に高速道路や新幹線を通すことは考えるけど、私財なんてまず出さないでしょうし~。でもローマ人は、そんなこと当然のことのようにやってるわけで。その辺りの考え方の違いもすごいですよね。視野の大きさも全然違うし。そしてこれこそがローマ帝国の長寿の秘訣だったのでは。だからこそ、塩野七生さんも単行本の1巻分をまるまる割いてインフラを語りたいと考えたのでは。

「はじめに」で、この巻は歴史的にも地理的にも言及の範囲が広いから読むのが大変なはず、とさんざん書かれてるんですけど... 例えば「ハンニバル戦記」や「ユリウス・カエサル」のような面白さや快感は期待できないから覚悟して欲しいと散々脅されてるんですが、ふたを開けてみれば、すんごく面白かったです。ユリウス・カエサルはもちろんのこと、初のローマ街道・アッピア街道、初の水道・アッピア水道を作ったアッピウス・クラウディウスも素晴らしい。そしてこれらのインフラこそが、古代ローマを現代に繋げる架け橋と言えそう。地図や図面、写真が沢山見られるのも良かったです。(新潮文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「ローマ人の物語 ローマは一日にして成らず」1・2 塩野七生
「ローマ人の物語 ハンニバル戦記」3~5 塩野七生
「ローマ人の物語 勝者の混迷」6・7 塩野七生
「ローマ人の物語」8~10 塩野七生 「ガリア戦記」カエサル
「ローマ人の物語 ユリウス・カエサル ルビコン以前」8~10 塩野七生(再読)
「ローマ人の物語 ユリウス・カエサル ルビコン以降」11~13 塩野七生
「ローマ人の物語 パクス・ロマーナ」14~16 塩野七生
「ローマ人の物語 悪名高き皇帝たち」17~20 塩野七生
「ローマ人の物語 危機と克服」21~23 塩野七生
「ローマ人の物語 賢帝の世紀」24~26 塩野七生
「ローマ人の物語 すべての道はローマに通ず」塩野七生

+既読の塩野七生作品の感想+
「コンスタンティノープルの陥落」「ロードス島攻防記」「レパントの海戦」塩野七生
「チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷」塩野七生

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Commentaires(4)

こんにちは、YO-SHIです。

読んだのはずい分前ですが、教科書的になってしまいそうなテーマなのに、面白かったです。
著者がその他の巻でもよく触れる「敗者をも同化する寛容」の精神が、街道他のインフラの整備に表れているんですね。

インフラについて、こういう切り口ができるのは、著者がローマに住み、2000年前にできた街道に立てるからこそなんだろうと思いました。
 

YO-SHIさん、こんにちは~。
この巻は、ほんと面白かったですね!
以前からの巻にもそういったことが随時取り上げられていたせいでしょうか。
全然違和感なく読めたどころか、ローマ人に対する理解が深まった気がします。
こういうところにも、ローマの精神がよく現われてるんだなあって。
長く繁栄するのも当然ですね。

あれだけの著書をものにするために、塩野さんは一体どれだけのことを
考えたんだろう?って、ふと思うんですよ。
確かに日本にいては成し遂げられないことかもしれないですね。
2000年前にできた街道に立ったからといって、誰にでもできることじゃないけど…
でもやっぱりその場所にいて歴史を肌で感じているからこそ、というのは
大きいと思いますね。

はじめまして!「ローマ人の物語」で塩野さんとローマ人のファンになりました。

「インフラの父」とはほんと言いえて妙ですよね。最初この巻を読んだときはローマ人の生活水準が思いの他現代人の生活水準に近かったことに驚きました。
現代人がローマ人が考案したインフラを模したわけだから当然かもしれませんが。。

彼らのインフラには時代を超える普遍性があり、だからこそ異なる文化をつなぐ帝国の基盤となりえたわけですね。

共存共栄、持続する意志、深慮遠謀、実利主義といったローマ人の特質がほんと凝縮された巻であったと思います。

Kohさん、はじめまして! コメントありがとうございます。

「インフラの父」、ほんとそうですよね!
私も、ここまで現代につながってるのかとびっくりしました。
橋だって道だって、この時代に作られたものがまだまだ現役だったりするし。
生活水準だって、ほんと現代と比べて全然遜色ないですものね。

これまでもローマ人の創意工夫はすごいなと思ってたんですが
(たとえば軍艦とか、ゲルマニアで川に橋をかける話とか)
そういう創意工夫だけでなく、そもそも姿勢からして全然違うし…
全体像を掴み、先を見通す能力に長けていたんですねえ。
塩野七生さんがこの巻を書きたいと思われたのも、よく分かりますね。

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