「燃えるスカートの少女」エイミー・ベンダー

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「私」の恋人が逆進化。ある日まで彼は「私」の恋人だったのに、次の日は猿になり、それから1ヶ月たった今では、海亀なのです... という「思い出す人」他、全16編の短編集。

読み始めてまずびっくりしたのが、そのシュールさ。だって、恋人がある日突然猿になってしまって、それからヒヒになったりいろいろして、今は海亀なんですよ! しかもそんなことを、語り手の彼女が淡々と語り続けるんです。怒りも困惑も悲しみもなくて、ましてや狂気のかけらもなくて、ただ事実を事実として認めて、見守りつつ語るだけ。彼女は、覚えておくことこそが自分の仕事だと感じてるんですね。元々、少女の頃に既に特定の願いごとがもたらす結果を学んでしまったからと、星にはただ「善いこと」だけを願っていたような女性ではあるんですが... それでも、ね。普通ならパニックを起こしたり、元に戻れるよう神頼みになったり、もしくはすっかり諦めてしまって、その「元恋人」を捨ててしまったり... あと他にどんな選択肢があるのか今ぱっと思い浮かびませんが、彼女のように、ただ淡々と「見守り続ける」というのは、あまりないような。でも、彼女は当然のようにそうしてる。そして、そんな一種独特の雰囲気が、この作品だけでなくて、全ての作品に共通しているんです。何が起きても動じない神経の太さというのではなくて、とてもとても繊細なのに、何が起きてもただ受け止める度量を持つ人々の姿が描かれています。そこには無理な明るさも過剰な暗さもななくて。シュールでありながら、そこからあと1歩を踏み出してしまわない絶妙さ。そしてその絶妙なセンスがものすごく美しいのです。

訳者あとがきによると、エイミー・ベンダーはイタロ・カルヴィーノ、オスカー・ワイルド、ジェイムズ・ボールドウィン辺りの作品が好きなんだとか。キャリル・チャーチルの戯曲「クラウド・ナイン」、オリヴァー・サックスのエッセイ、ガブリエル・ガルシア=マルケスの「百年の孤独」が大好きで、その後村上春樹の奇妙な宇宙に入り浸ることになったんですって。ああ、分かる気がする! という私は、ジェイムズ・ボールドウィンもキャリル・チャーチルもオリヴァー・サックスも読んだことないんですが(汗)、カルヴィーノとワイルド、そして「百年の孤独」に村上春樹と聞けば、なるほど納得です。特にカルヴィーノが好きな方は、一度試してみる価値があるかと~♪ (角川文庫)

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Commentaires(4)

それってカフカの「変身」みたいですね~。
村上春樹ってカフカの影響を受けてたんじゃなかったでしたっけ?
なんかそんなようなタイトルの本も出してましたね。

その元恋人には人間としての意識はあるのか、それも測りようがないのか、どうなんでしょう。
カルヴィーノは読んだことないですが、ワイルド マルケス 村上春樹つながりなんですね。

私の大大大好きな本です^^
この本がお気に召されましたら「わがままなやつら」もおすすめですよ♪
エイミー・ベンダーの短編は奇抜なのに悲しくて、なんともいえない繊細さがたまらなく好き。
それにしても、私は単行本で読んだので、読書メーターの相性に反映されないかも・・・なんてへんなところが気になってしまいました(笑)

>Johnnycakeさん
そうそう、「変身」みたいなんですよ。
違うのは主人公が変身しているわけじゃないことと、変身し続けてること。
自分自身が変身するのも相当のショックだと思いますが、
どちらかといえば、恋人が変身し続けるのを見る方がツラそうな気がします…。

村上春樹は「海辺のカフカ」ですね。
私はあまりカフカの影響は分からなかったですが、そこまでカフカのことを読みこんでないからかも。
主人公の少年の名前がね、カフカなんですよ。
あ、カルヴィーノも面白いですよー。
「宿命の交わる城」「不在の騎士」「宿命の交わる城」「冬の夜ひとりの旅人が」辺りが大好きなんですが
ベンダーからの連想となると、「レ・コスミコミケ」「むずかしい愛」辺りかな?

>ことりさん
以前SNSで教えて頂いてから早数ヶ月! ようやく読めました。
いやあ、面白かったです~。
短編集なのでちょっと読むのを躊躇ってたんですけど、もう全然!
もっと早く読んでみればよかったです。
うんうん、そうですね。奇抜で悲しくて、繊細で美しくて、素敵でした。
いいものを教えて下さってありがとうございます~。
次は「わがままなやつら」ですね。了解です~。φ(.. )メモメモ

そっか、ことりさんはハードカバーで読まれてたんですね。
読書メーターにお名前がなかったので、もっと前に読まれてたのかな?と。
でも今すごいですよ、読書メーター!
今まであり得なかった数字を日々更新中です。^^

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