「赤い蝋燭と人魚」小川未明文・酒井駒子絵

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北の海に住む人魚は、生まれてくる子供に、寂しく冷たい海ではなく、人間の住む美しい町で育って欲しいと考えて、子供を陸で産み落とします。それは人魚の女の子。その女の子を拾ったのは、蝋燭の店をしている子供のいない老夫婦でした。老夫婦は神様に授けられた子供だと考えて、大切に育てるのですが...。

「人魚は、南の方の海にばかり棲んでいるのではありません。北の海にも棲んでいたのであります」という始まりがとても美しい小川未明さんの童話。大正10年の作品なんだそうです。でも美しいながらも、暗くて怖くて寂しくて哀しくて、実は子供の頃からずっと苦手だったんですよね。老夫婦が子供を拾う話となると、どうしても桃太郎とかかぐや姫とかそういう話を思い浮かべるんですけど、この物語は全然違うんですもん。なんで、いつの間に、そんなことになってしまったの? と、なんだか裏切られたような気がしてしまって。
でもこの童話に、酒井駒子さんの絵がこの上なくよく似合うのです。酒井駒子さんの絵は、黒がとても印象に残る絵。暗い北の海の中や、そこで暮らす人魚の孤独感。この上なく寂しいんだけど、なんて美しい...!
そんな黒が基調の絵なんですが、海岸の小さな町の描写では背景が白となります。小さいけれど、ちょっと素敵な町。蠟燭の店をやってる、信心深いお爺さんとお婆さん。そんな2人が拾った可愛い女の子の人魚。神様に授けられたこの子を大切に育てようという優しい気持ち。しかしまた徐々に黒くなるのですね。それは拾ったのが普通の女の子ではなく、人魚だと分かった時から始まっていたのでしょうか...。どんどん美しく育っていく人魚の女の子。絵がうまい彼女のおかげで、蝋燭店は繁盛します。でもそれが良くなかったのかも。女の子の真直ぐな気持ちはお爺さんとお婆さんに届かなくなってしまう。優しかったはずの手は、いつしか残酷な手になってしまう。

この物語にはこの絵しかない、とそう思えてしまうほどはまっている酒井駒子さんの絵。闇のような黒と血のような赤が、ただただ印象的。苦手だった物語のはずなのに... もしかしたら、今まで読んだ駒子さんの絵本の中で、これが一番インパクトが強かったかも。(偕成社)


+既読の酒井駒子作品の感想+
「こうちゃん」須賀敦子・酒井駒子
「よるくま」「よるくま クリスマスのまえのよる」酒井駒子(「リコちゃんのおうち」)
「ビロードのうさぎ」マージェリィ・W・ビアンコ文・酒井駒子絵訳
「きつねのかみさま」あまんきみこ文・酒井駒子絵
「絵本のつくりかた1」「Pooka+ 酒井駒子 小さな世界」
「ゆきがやんだら」「ぼく、おかあさんのこと...」酒井駒子
「こりゃ まてまて」「ロンパーちゃんとふうせん」酒井駒子
「BとIとRとD」酒井駒子
「赤い蝋燭と人魚」小川未明文・酒井駒子絵
「くまとやまねこ」湯本香樹実文・酒井駒子絵
「金曜日の砂糖ちゃん」酒井駒子
「きかんぼのちいちゃいいもうと」1~3 ドロシー・エドワーズ

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