「修道女フィデルマの叡智」ピーター・トレメイン

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ローマに巡礼としてやってきた修道女フィデルマ。しかしひっそりとした裏通りの小さな教会堂でのミサにあずかっていた時、殺人事件に遭遇してしまうことに... という「聖餐式の毒杯」他、全5編の短編集。

7世紀のアイルランドを舞台にしたミステリ、修道女フィデルマシリーズの短編集。
短編作品も十分読ませてくれることは、シリーズ外作品の「アイルランド幻想」(オススメ!)でも既に分かっていたことなんですが、今回も切れが良い短編集になっていて、とても面白かったです。フィデルマが相変わらず冷静でな毅然とした態度で、その観察眼と洞察力、推理力を披露。でも、その高飛車で傲慢な態度も相変わらずなんですけどね... これさえなければなあ。7世紀のアイルランドが舞台というのが話の中でも十分生かされていて、その辺りもすごく面白いんですけど、肝心のフィデルマにはあまり愛着が湧かない私です...。でもちょっと思ったんですけど、原書でもここまで高飛車で傲慢なんでしょうかね? 会話の翻訳にどうも不自然さを感じるし、もしかしたら訳のせいもありそうだなあと思ってしまうんですがーー。(ということで、私はこの訳者さんの訳が苦手だったりする)
5作の中で一番面白かったのは、アイルランド全土の大王としての即位式を早く執り行わなければならないというのに、儀式に必要な王家伝来の宝剣・カラハーログが盗まれて... という「大王の剣」。あとはフィデルマがローマで事件に挑む「聖餐式の毒杯」も! 5編とも、フィデルマでなければ解決にもっと時間がかかるか、もしくは迷宮入りという事件、鮮やかに解き明かしてくれるのは快感です。
でも、7世紀の頃のローマってどうなってたんだろう? 古代ローマ帝国はもっと早い時期に東西に分裂して、東ローマ帝国(=ビザンティン帝国)しか残ってなかったと思うんだけど? 西ローマ帝国は確か5世紀に滅びたはず。イタリアが小国家に分裂するにはまだ早いのかな? (世界史、苦手だったんだよね~) この作品を読む限りでは、すでにキリスト教の本山的な雰囲気なんですが。

でもこのシリーズ、翻訳が出る順番がバラバラなんですよね。最初に出た「蜘蛛の巣」がシリーズ5作目で、次に出た「幼き子らよ、我がもとへ」が3作目なんですもん。今回は短編集だから、まあいいんだけど... 長編はやっぱり順番通りに出して頂きたい! そうでないと、フィデルマの人間的成長が楽しめないことになってしまうんですもん。実際に物事が前後して、フィデルマの反応の変化が妙な具合になってます。次はぜひ1作目を訳していただきたいな。(創元推理文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「蜘蛛の巣」上下 ピーター・トレメイン
「幼き子らよ、我がもとへ」上下 ピーター・トレメイン
「修道女フィデルマの叡智」ピーター・トレメイン

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こんにちは。
〈修道女フィデルマ〉いいですよねー。
ピーター・トレメインはすっかり大好きな作家となりました。
東京創元社ももっと彼の作品を推せばいいのにと思います。
このままだといまいち地味なままに終わりそうなので(苦笑)。
ちなみに原書房から刊行の『シャーロック・ホームズの大冒険』にトレメインの作品載ってます。
まだ読んだことはありませんが,他にもムアコックあたりも書いているので楽しみ。

7世紀のローマはゲルマン人王国の支配下時期ですね。
8世紀に入ればカール一世のフランク王国の版図に入ります。
既にコンスタンティノープルと並ぶキリスト教総本山としての認識はあったようです。
ただし政治権力そのものは5世紀あたりから強まっていたはず。
ちなみにイタリアの分裂状態は教皇庁の思惑も絡んでいたようです。

なお,フィデルマの人となりは高飛車・傲慢というよりも,
その地位に相応しい人格であると僕はとらえています。
それだけの自信・強さがなければ彼女の地位にはいられないでしょうから。
もっとも訳出の問題は多分に自分も感じています(苦笑)。
この作品も原文で読みたい作品のひとつですよね。
なかなか新刊も刊行されませんし(涙)。

はじめまして。同じようなタイミングで感想を書いたのですが、
ほかの人の感想もみてみよう〜と検索してたどりつきました。

フィデルマ・シリーズは、私はこれが初めてだったのですが
長編シリーズも読んでみよう!という気持ちになりました。
しかし、どうせなら1作目から読みたいところです。。。

フィデルマですが、おそらく修道女で弁護士だから
やや偉そうな印象を受けちゃうのかしらと思ったのですが、
それはいいとしても、彼女の本心がどうもつかめなかったので
それは短編集だからなのかなあと思っていました。
長編でもあまり変わらないのでしょうか。

7世紀のローマのゲルマン人王国は、ランゴバルド王国ですよね?
このあたりぐちゃぐちゃしてていつも混乱しちゃうので、
あわせてこの時代のイタリアを描いた小説も読んでみたいという
気持ちになりました。

>森山さん
アイルランド幻想はもちろん、フィデルマシリーズもレベルが高いですよね。
アイルランドケルト系の話が出るだけで嬉しい私はアレですが(笑)
普通のミステリファンが読んでも、十分面白いのではないかと~。
原書房の、全然知りませんでした。そうなんだ!
トレメインがどんなホームズを書いてるんだろう?
しかもムアコック? まさかホームズが剣と魔法のファンタジーに?!(それはないか)
調べてみると「キーティング、ホック、バクスターら一流の作家たちが書き下ろした」なんですね。
トレメインもムアコックも「ら」で括られてしまうんですねえ。(あらら)

そうでしたか、7世紀はゲルマン民族が…
そしてカール一世って、いわゆるカール大帝のことですね。
ローマとコンスタンティノープルがキリスト教総本山として並び立ってたのかあ。
…ああ、そうか、カトリックと正教会なんですね。
でもこの辺りは、もうほんと勉強不足で全然ダメダメです。(涙)
この辺りの小説で面白いのがあったら、ぜひ教えてくださーい。

確かにその地位にあり続けるだけでも大変なことなんだろうと思います。>フィデルマ
元は王位継承権を持つお姫さまで、美貌と才能の持ち主というだけならまだしも
ドーリィーとブレホン、アンルーといった地位に関しては、妬まれもするでしょうし
若いというだけで侮られるでしょうし…
だから、必要な時には高飛車な態度に出ることがあるというのは、十分分かるんですが…
それでも普段は違うんじゃないかな? なんて思っちゃうんですよね。
まあ、こういうのって原書を読まなくちゃ分からない部分だし…
というか、原書を読んでも微妙なニュアンスが私に分かるとも思えないですが。(汗)

>春巻さん
はじめまして~。コメントありがとうございます。
フィデルマシリーズ、長編もぜひぜひ!
でもほんと、どうせ読むなら1作目から読みたいところですよねえ。
1作目はローマが舞台になってるそうなので、ケルトと銘打ってる以上それはちょっと、と
途中の一般受けしそうな巻から訳が出たのかなあ、なんて思ってます。
でもね、個人的にはフィデルマの人間的成長という部分も大きいシリーズだと思ってるので
ほんと順を追って読みたいのになあって思ってしまいます。
あ、そうですね、長編の方でもあんな感じです。>フィデルマ
でも彼女自身、軽々しく本心を明かさないような女性なので…
その育ち方のせいなのか、あるいは過去に何かあったのではないかと。(笑)
それも含めて、ほんと順を追って読んでいきたいなという感じです。

ああ、ランゴバルド王国ですか。その名称すら聞き覚えのない私ってば。(情けない)
ほんと、この辺りのイタリアを舞台にした小説が読みたくなりますね。
お勉強だと全然頭に入らないけど、小説ならするすると入るので~。(笑)

春巻さんの感想も、後ほどゆっくり拝見させていただきますね。^^

こんにちは。
フィデルマシリーズ、順番に訳して欲しいですよね。
5から始まって、3で今度の「蛇、もっとも禍し」は4作目ですね。
1、2作目の翻訳が待ち遠しいですね。
ちなみに1作目の“Absolution by Murder”は品切れ中なのです。
(ほしいものリストにずうっと入っているので)
中古の発送元が日本になっているので注文してしまおうかしらん。
(あれっ、もしかしたら、私四季さんを誘惑していますか?)

でも今度は全部で18作です!?

きゃろるさん、こんにちは~。
ねね、ほんと1作目から訳していただきたいですよね。
シリーズ物を順番通りに読まないなんて…!!
国内作品だったらあり得ないのになあって思っちゃいます。

こういう時に原書で読めるといいんですが~。
あ、発送元が日本なんだったら、それは買いでしょう!
きゃろるさんはどんどん読めるからいいなあ。
ほら、私、ドラゴンとお姫さまのあのシリーズがまだ読めてないから…
結局2巻も邦訳が出ちゃいましたしねえ。
(3巻はモーウェンが主人公らしいですね?)
全4作でも追いついてないとなると、全18作はなかなか!

4巻は11月に発売なんですね。ちょっとスピードが上がってきたのかな?
この勢いで、どどんといってしまって欲しいところですね。

またまたお邪魔します。
どうでもいい訂正なのですが、
フィデルマの原書第1作、PB版ならamazon.co.jpで新品が手に入るようです。
自分がほしいものリストに入れているのはマスマーケット版でした。
でも第2作が中古でちょっとお値段がはるので、
やはり・・・早く順番通り1,2巻を翻訳してくださいっ、出版社さま!

ほんとだ、PBはありますね。
今見てみたら、「Dove of Death」が「近日発売・予約可」って…
これ、20巻なんですか?!
あ、でもこれはPB版だから、単行本はもう既に出てるというわけなんですねっ。
そうかー、20冊ですかー。頑張ってるんですねー。
ピーター・トレメイン、もう専業作家になっちゃってるのでしょうか?

でもほんと、シリーズ物は順番に読むのが一番ですよね。
読み手にとっても作品にとっても。
私も、1巻と2巻の邦訳をぜひ早急にお願いしたいです~。

“Dove of Death”は18作目なんです。
間に短編集2冊を挟むので、全部で20冊になるはずです。
短編集も収録作品がよくわからなくて、
ダブっている可能性もありそうなので手が出ないでいます。

ああ、短編集が2冊。
そのうちの1冊はこの「修道女フィデルマの叡智」…
とも限らないということなのでしょうか。
ややこしいですねえ。
とりあえず邦訳待ちですね。

四季さま、

この作家、私のとても好きな人で、もうかなり前から英語で読んでいました。日本語で読めるって最近まで知りませんでした。

フィデルマはコルグの王女であるだけでなく、法律家でもあります。これは中世はおろか、20世紀初めまではヨーロッパでは考えられなかったことです。そこがもの凄くユニークなところです。中世のイギリスやフランスでも、女性には市民権もないくらいで、法律家なんてとても考えられなかったので、ケルトの社会のユニークさなんでしょうね。私はこの強い女の魅力が全開なところが大好きです。彼女がどんなに高飛車でも嫌な気がしません。また、彼女のコンパニオンで、アングロ・サクソンのエアドウルフがアングロ・サクソン社会(家父長的男性社会)の論理から、徐々にケルトの社会の良さに目覚めるあたりも、イギリスとアイルランドの長い対立と融和を予告しつつもあるような気がします。私もシリーズの2冊について感想を書いていますので、よろしかったらご訪問下さい:
http://playsandbooks.asablo.jp/blog/2008/11/28/3980892

では。Yoshi

Yoshiさん、英語で読んでらっしゃったのですねー!
ということは、1作目から読んでらっしゃるということで、羨ましいです。
私にももっと英語力があれば、英語で読むのにーーー。
普通の本ならまだしも、この時代特有の言葉とかは解説抜きには無理そうです。(悲)

確かにフィデルマの造形はとてもユニークですね。
中世のヨーロッパのことは、あまり詳しく知らないんですけど
少なくとも女性にとっては、まさに暗黒時代だったというイメージがあります。
女性にも広く門戸が開かれているこのアイルランドの制度は、さぞ画期的だったのでしょうね。
そんなアイルランドにいてさえ、女性に対する視線は厳しいなと感じさせられることは多いですが…

英語で読まれても、やはりフィデルマは高飛車なのですね。(笑)
となると、訳のせいではなかったのかしら。
それでもやっぱり何かニュアンスの違いがありそうな気がするんですが…!
…って、頑固者ですみません。(笑)
門戸は開かれているとはいえ、やはり女性にとっては厳しいことも多くて
高飛車な態度で身を守るようになったということなのかしら…

>イギリスとアイルランドの長い対立と融和を予告

ああ、なるほど。そういうことなのかもしれないですね!
やっぱり順番通りに読みたいわー。

Yoshiさんの記事も、後ほどゆっくりと拝見させていただきますね!

このシリーズは英語は大して難しくなく、読みやすいです。アイルランド語の固有名詞がどういう風に発音されるかは正確を期すれば難しいのでしょうが、私は別に気にせずに我流で読んでおります。

フィデルマが高飛車に聞こえるかどうかですけれども、中世の王国の王女というと、ものすごく身分は高いですから当然かも知れません。しかし、日本語訳を読んでおりませんが、日本語に直すと、言葉と一緒に日本文化の男女差とか身分差とかも絡みついてくるので、フィデルマの造形が原作と変わったものになる可能性はありますね。かといって、なるべくニュートラルなぱさぱさした言葉で訳すのも味気ないし。

ただし、一方でこういう推理小説などは翻訳者の方に十分な時間が与えられてないと思いますから、どうしても雑な面があるとしても仕方ないでしょうね。Yoshi

あらっ、それほど難しくはないんですか。それは意外。
でも私、英語から離れてかなり経つので…
…あ、専攻は仏文じゃなくて英文なんですよ。
だから大学時代ならなんとか読めたと思うのですが、今はすんごく時間がかかってしまうんですよねえ。
でも読んでみたいなあ。どんな感じなのかしら。
(フランス語を勉強し始めたのは、大学を卒業した後なのです)

確かに翻訳の方はかなり慌ただしい仕事ぶりなのではないかと思いますね。
日本語の会話文も、もうちょっと練りたいのではないかと勝手に思ったりします。
(日本語としてちょっと不自然に感じる部分も多々あるので)
そういう意味ではやっぱり英語を直接読んだ方が…
しかも1作目とか2作目を早く読みたかったら、原書を読むに限りますよね。

ああ、どうしましょう!(笑)

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