「脂肪のかたまり」モーパッサン

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フランス軍が敗北し、プロシャ軍がルアン市に入場。プロシャ軍は厳しい軍規によってこの町を支配するものの、噂になっていたような残虐行為をここでは一切せず、ルアン市民も徐々に平生の姿を取り戻します。ドイツ軍将校のつてを利用して司令官から出発許可証をもらい、10人が大きな乗合馬車で一緒にディエップに向けて出発することに。ブドウ酒問屋を営むロワゾー夫妻、上流階級に属する大物のカレ=ラマドン氏夫妻、ユベール・ド・ブレヴィル伯爵夫妻、修道女2人、共和主義者のコルニュデ、そして太った娼婦... その体つきからブール・ド・シュイフ(脂肪のかたまり)と呼ばれている女性でした。

乗合馬車に乗り合わせた10人の作りだす1つの世界。他にも登場する人間はいますが、中心となるのはあくまでもこの10人だけ。しかしここには、1つの完全な世界が作り出されています。
一言で言ってしまえば、とても嫌な話。そしてとても身につまされる話。でも人間の本当に醜い部分を、こんな風に描きだしてしまうのは、やっぱり凄いなあと思いますね。もしここに自分がいたら、どうなんでしょう。そう思わずにはいられません。心の奥ではダメだと分かっていても、やっぱり安易な方へと流れていってしまうのではないかしら...。誰が入れ替わっても、これ以外の結末というのはあり得ないんじゃないか、そう思えてしまうような、ものすごく底力のある作品。
社会的弱者であり、お上品な人たちに蔑まれる娼婦。でも他人のことを思いやり、我慢するということを知っているのは、みなに蔑すまれる「脂肪のかたまり」だけなんですね。どれほど立派な服装をしていても、教養があったとしても、顔立ちが美しかったとしても、それは単なる外側の飾り物。同じ人間をこんな風に踏みつけにしていいはずがないんだけど... でもこの面々は、目的地に着いて解散した途端、娼婦のことなんて忘れてしまって、きっともう一生思い出さないんだろうな。もしこの物語がキリスト教的寓話なら、最終的に天国の門で聖ペテロにどう扱われるかまで描かれるところですが、そうじゃないですしね。これは現実に起こりうること。他の人々のために自分を殺すことを知っている娼婦だけど、彼女が最終的に救われるとは限らないわけです。だからこそ人生の縮図を感じさせるし、娼婦の思いが一層響いてくるんでしょう。

...それでも俗人どもはまだ仕方ないかも。でもね、この修道女って...!(岩波文庫)

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