「イギリス海岸 イーハトーヴ短篇集」木村紅美

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両親に言われて、東京にいる双子の妹・梢の様子を見に行くことになった翠。梢はプロのヴォーカリストになるのだと高校卒業と同時に岩手を出て、遠距離恋愛中だった恋人の家に転がり込んだのです。翠は行く前に福田パンに寄り、2人とも大好きなあんバターを、梢の恋人の分も合わせて3個買って行くことに... という「福田パン」他、全6編の短篇集。

高校に入学する年に一家で岩手に引っ越して以来、大学も就職も地元の翠と、高校を卒業してからは東京にいる梢。一卵性双子で顔はそっくりなのに、性格はまるで違う2人をめぐる連作短篇集。
穏やかな落着きを持つ翠と、華やかで奔放な梢。対照的な双子のうち、私は翠に惹かれながら読み進めたんですが、やっぱりそういう人が多いのかな? この短篇集全体にも、翠の穏やかな落着きが漂っているようです。高校時代は梢にかかってくる電話の方が圧倒的に多かったそうだし、2人が一緒にいたら、パッと目立つのは梢のはず。2人が別々にいる時も、翠のことを梢だと思って話しかける人が多かったんじゃないかしら。翠自身は、自分が物語の主役となるタイプだなんて思ったこともないだろうし、もしかしたらそれが密かにコンプレックスに繋がってたなんてこともあるのかも...。翠が岩手に残ろうと思ったのは、もしかしたら梢が東京に憧れるのを間近で見ていたからなのかもしれないですよね。
でも、華やかさでは梢に負けているように見えても、翠の地に足のついた誠実さや、和やかな優しさは、人々をほのぼのと心地よい気持ちにさせるもの。一緒にいて安らぐのは、やっぱり梢よりも翠のはず。そしてそれこそが、そのまま故郷という言葉が持つイメージなのかも、なんて思ったりもします。この作品に登場する人たちは、みな自分の「故郷」を探しているように感じたんですが... 生まれ育った懐かしい場所というだけではない、自分の居場所という意味での「故郷」を探しているような気がしたんですが、翠はその「故郷」の象徴のような存在なのかもしれません。

盛岡や花巻には1度だけ行ったことがあるんですけど、その時にこの本がまだなかったのがとっても残念。福田パンも行ってみたいし食べてみたいし、イギリス海岸にも光原社の中庭にも行ってみたいし、じゃじゃ麺も食べてみたい! そして、宮沢賢治記念館にも行ってみたい! 「イーハトーヴ短篇集」という副題通り、この本全編には宮沢賢治の存在感が漂ってます。賢治作品を知らなくても、読むのには全然問題ないんですが、知っていればこの作品の深みが一段と増すような気がする... その辺りがなんだかうまいなあ、匙加減が絶妙だなあ、なんて思います。(メディアファクトリー )

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Commentaires(6)

四季さん、おはようございます。
宮沢賢治作品はそんなに読んでいないし、福田パンやイギリス海岸など全然知らない私ですが読んでみたくなりました。
読むと物語の舞台になった場所に出かけたくなるんだろうな^^
双子の物語だそうですが、私もやっぱり翠に共感してしまいそうです。

はぴさん、おはようございます。
ほんと、これを読むと岩手に行ってみたくなりますよ~!
作者の木村紅美さんは東北の方ではないみたいなんですけど
さりげなく素敵な描き方で、イギリス海岸も福田パンもすごく魅力的でした♪
お話そのものも、はぴさんもお好きなのではないかしらと思いますのでぜひぜひ。
うふふ、やっぱり翠でしょうか。
実際に読んでみて確かめてみて下さいね。^^

四季さん、こんにちは。
この本を読んで「ふるさとっていいな」と感じました。
岩手は私の故郷なので、この本を読んで岩手に興味を持って訪れてくれる人が増えたらいいなぁと思います。
岩手の人は“しょす(はずかし)”がりですが、
派手さはないけど温かいところがこの本と似ていると思いました。
岩手はもう雪の季節です。

sayanoさん、こんにちは~。
わあ、sayanoさんは岩手出身でしたか。
この作者さんは、地元の方じゃないんですよね、確か。
(今調べてみたら、仙台で中学高校時代を過ごされたようですが~)
岩手ではない方が書いた本に、地元出身の方がいい印象を持つというのは、すごい!
と、改めて感じ入ってしまいました。
きっとものすごく岩手がお好きな方なんでしょうね。

もう雪の季節ですか。やっぱり北の地なのですね。
ああ、いつかこの本を持って訪れてみたいです。

宮沢賢治の世界に冒険してますね。

教科書とかでしたっけ、読書感想文かも知れない。
宮沢賢治の作品、読みましたね~。

そうか、木村さんってこのような作品も書いてらっしゃった。
こちらは読んだこと無いので、読んでみたいと思います。
新作『春待ち海岸カルナヴァル』出たんですけど、これが初めての
木村さん作品でした。けっこうおもしろいと思います。

人気出てきたのか、木村さんご自身を解説する
記事も見つけました。
しかし、創造力が安定に欠かせないなんて、
うらやましいやら・・・。

三千彦さん、こんにちは。はじめまして。

宮沢賢治の作品、なんだかんだと読んでますよね。
教科書にも載ってたし…
あと、例えば幼稚園の頃の先生の読み聞かせとかテレビとか
知らないうちに目や耳にしてるのも多そう。
大人になって改めて読んでみると
子供の頃に触れた時とはまた違った発見もありそうです。

「春待ち海岸カルナヴァル」も面白そうですね。
機会があれば手に取ってみたいです。

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