「北欧神話と伝説」ヴィルヘルム・グレンベック

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ヨーロッパ北部周縁の民=ゲルマン人は、キリスト教とは異なる独自の北方的世界観を有していた。古の神々と英雄を謳い伝える『エッダ』と『サガ』。善悪二元の対立抗争、馬への強い信仰、バイキングに受け継がれた復讐の義務......。荒涼にして寒貧な世界で育まれた峻厳偉大なる精神を描く伝説の魅力に迫る。北欧人の奥深い神話と信仰世界への入門書。...という内容紹介がされている本です。(手抜きですがー)
第一部が「神話篇」で、第二部が「サガと伝説篇」。

「神話篇」の方は、以前「エッダ 古代北欧歌謡集」(感想)も読んでいるし、内容的には既に知ってる部分が多いんですけど、詩の形式となっていたそちらの本と比べて、こちらは散文による再話。それだけでも読みやすいですしね。原典ではバラバラだった歌謡の順番も、分かりやすく入れ替えてありました。そして最後に「古い神々とキリスト」という章があったのには少しびっくり。しかもその書きっぷりが...

キリストは栄光好きな神で、彼より他の者が善く言われたり、そうでなくともいたわりをもって語られることを、辛抱できなかった。というのは、天地を創造し、悪魔と戦って人間に救いと天国を与えたのは彼だったのだから。

すごい言われようですよね。まあ、私だって、古い神々を全て異教の神であり悪魔であると片付けてしまうような姿勢はどうかと思いますが。(笑)

「サガと伝説篇」は、サガが14も収められていて、未読のものも多かったのが収穫。地元では農民であり漁民でありながら、ヴァイキングとしてに略奪行為に出かけていた北欧の男たちの姿がよく分かります。あと、以前シェイクスピアの「ハムレット」(感想)の解説を読んだ時に「エッダ」や「ベオウルフ」にもハムレットの原型が存在するとされていると知ってびっくりしたんですが、この本に載ってました。「アムレード(ハムレット)」がそれ。題名からして間違いないんですけど(笑)、これは確かにハムレットでしたよ! 短くてすっきりしてて、こっちの方が私は好きかも。(爆) そして1つ前の記事の「魔法昔話の研究」のオイディプスの章に出てきた女系の権力継承が、ハムレットでも行われていたことに改めて気付きました。なるほどーーー。あと「ベーオウルフ」(感想)そっくりの「ビョーウルフとグレンデルの戦い」や、「ニーベルンゲンの歌」(感想)と同じ材料を扱いながら細かいところが結構違っている「ウォルスング家の物語」もありました。解説には「「ビョーウルフとグレンデルの戦い」は、イギリスの古詩『ベオウルフ』を用いてる」とあったんですが、それってやっぱり「ベオウルフ」の方が古いという意味なんですよね...?

とっても読み応えのある本でした。ただ、今の私はどうもあんまり読書に集中できてないので... ええと、毎年秋になると読書から気が逸れてしまうみたいです。どうやら「読書の秋」は私には当てはまらないようだということに、今頃になって気付きましたよ。(爆)
これはいずれ再読しなくちゃいけないなー。でも当面はもっと気軽に読める本を手に取ろうっと。(講談社学芸文庫)

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Commentaires(4)

四季様、

>キリストは栄光好きな神で、彼より他の者が善く言われたり、
>そうでなくともいたわりをもって語られることを、辛抱できなかった

古代中世は、どこでも大なり小なり神権政治で宗教も非常に生臭いですし、宗教同士もお互い縄張り争いが凄いですからね。ユダヤ教は新興宗教のキリスト教をつぶそうとし、キリスト教はゲルマンやケルトの信仰をつぶそうとやっきになる、この繰り返しですね。

「ビョーウルフとグレンデルの戦い」のこと、私は北欧神話や伝説については無知で知らないんですが、そうなんですか。グレンデルを登場させるお話、まだあったんですね。でも、『ベーオウルフ』写本は1冊しか残存せず、ベーオウルフ伝説自体、広がりとしては非常にマイナーな伝説だと思うので、どういう経緯でしょうね。そもそもベーオウルフとグレンデルは、まず切り離して2つの伝説として考えた方が良いのかも知れません。北欧の神話伝説も西ヨーロッパのその他の中世初期文学も、ほとんど皆アングロ・サクソン文学よりかなり後に書かれているとは思います。ただ、口承文芸の場合、伝説が出来てかなり広まったのは、写本が残っている時期よりもはるかに前である可能性が高いので、難しい問題ですね。

「あんまり読書に集中できてない」と書かれていながら、怒濤のように本を読んで、ポストをアップしておられるのには唖然!
Yoshi

Yoshiさん、こんにちは。
ほんと、中世の宗教はすさまじいですね。特にキリスト教は、まだまだ新興宗教特有の勢いもある頃だし。
しかもキリスト教とユダヤ教とイスラム教は聖地も同じわけだから…
せめてそれが違えばと思うんですけど、根っこが一緒だから同じにならざるを得ないし。(笑)

「ビョーウルフとグレンデルの戦い」は、本当にびっくりしました。まるでそっくりなんです。
そちらの成立年代など細かいことはまるで載っていなかったのが残念。
場所的に考えると、「ビョーウルフ」の方が原型で、それが「ベオウルフ」になったと考える方が自然ですよね?
もしくは、同じ物語を吟遊詩人が歌ううちに広まったというのが、本当は一番妥当なはず。
でも解説で「『ベオウルフ』を用いてる」という書かれ方がされているので
別々に存在していたのではなく「ベオウルフ」を逆輸入したということなのかなあと…
逆輸入だとしたら、それはどんな形で行われたんでしょう。
「ベオウルフ」は8~9世紀頃に成立して、写本は10世紀かそれ以降だったと思いますが…
確かに口承文芸の場合は本当に難しいですね。

>そもそもベーオウルフとグレンデルは、まず切り離して2つの伝説として考えた方が良いのかも知れません。

これは考えたこともありませんでした。そうか、そういう考え方もできるのですね!


本は毎日ちょこちょこ読んでるんですけど、ちょっと難しい本だと頭になかなか入らなくなってます…
そういう時は普通の小説を読めばいいんですけど、感想を書くのも億劫で。
怒涛のアップというより、同じ日に(日付だけ変えて)まとめてアップしてるだけなんですよ。(笑)

四季様、

一般論としては、AとB、2つの似た物語がある場合、近代だと、Aを参考にしてBが書かれている、というケースは多いのですが(シェイクスピアがチョーサーを参考にするなど)、中世、特に口承で伝わった時間が長い初期中世の物語の場合は、そういう単純なケースは少ないようです。AよりもBが新しい場合でも、まず2つよりも古いCという作品があり、それを参考にして、AやBが書かれているとか、古い作品Aがまずあって、それを種本にしてC-D-E...と伝わったのち、Bになったとか。しかも、部分的なモチーフとか主人公だけが伝承されたとか、バリエーションは限りないですね。

『ベーオウルフ』写本は10世紀頃というのは確かのようですが、原作の成立年代は諸説あるようです。写本とほぼ同時期という説もあるそうです。最近の定説は知りませんけれが。そもそも、口承文芸の場合、何をもって「成立年代」とするか、概念時代が疑問ですし。

>場所的に考えると、「ビョーウルフ」の方が原型

多分。でも、可能性としてはアングロ・サクソン人が始めた物語の素材を自分の民族に合うようにアレンジして使っているかも知れません。アングロ・サクソンはもともとユトランド半島の南から現在の北ドイツあたりの地域から来ていますから、北欧の直ぐ隣です。以上、全く机上の空論で、失礼しました。Yoshi

Yoshiさん、こんにちは~。
成文化された時点で、それまでの作品の集大成のようになってることもありますものね。
例えば「ニーベルンゲンの歌」だと、平行して様々な同種の伝説が現代に伝わっていて
それぞれに少しずつ食い違う箇所があるので、その辺りを研究してみると楽しそうです。
「Aを参考にしてBが書かれている」には、ワーグナーの「ニーベルングの指環」がありますし。(笑)

でも口承文芸の成立を考えるのは、確かにものすごく難しいと思います。
どの時点で成立したと考えるか、というのももちろんそうですし…
…私としては成文化された時点ではなく、その作品が語られ始めた時点を採りたいんですが…(笑)
民族的な移動を始めとして、吟遊詩人の流れとか、様々な要素を考慮しなくちゃいけないですものね。

私としては、なんとなくヴァイキングと一緒にもたらされたのかと思い込んでたんですが
そうか、ユトランド半島の南から現在の北ドイツあたりの地域からとなると、ほんと北欧の隣ですね。
そういうルートを取ったのかもしれないですねえ。なるほど~。

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