3月の読書

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お久しぶりです。では早速ですが、3月に読んだ本を。


「ピアノの知識と演奏」雁部一浩
「ピアノ演奏の秘訣―音楽的技法のエッセンス」森山 ゆり子・森山 光子
「「秘密の花園」ノート」梨木香歩
「第七官界彷徨」尾崎翠
「ピアニストが見たピアニスト」青柳いづみこ(再読)
「バッハ演奏と指導のハンドブック」「演奏と指導のハンドブック」クラウディオ・ソアレス
「ピアノペダリング」ライマー・リーフリング
「火の起源の神話」「金枝篇」上下 J.G.フレイザー
「双調 平家物語」3・4 橋本治
「モノ書きピアニストはお尻が痛い」青柳いづみこ(再読)
「和声と楽式のアナリーゼ」島岡譲
「お日さま お月さま お星さま」カート・ヴォネガット
「心で弾くピアノ 音楽による自己発見」セイモア・バーンスタイン
「音楽の聴き方」岡田暁生
「太陽の黄金 雨の銀」「天使の燭台 神の闇」「現実の地平 夢の空」妹尾ゆふ子
「NAGA」「チェンジリング 赤の誓約(ゲァス)」「チェンジリング 碧の聖所(ネウェド)」妹尾ゆふ子
「多民族の国イギリス 4つの切り口から英国史を知る」唐澤一友


一番印象に残ったのは、梨木香歩さんの「「秘密の花園」ノート」かな。これは、バーネット夫人の「秘密の花園」を梨木香歩さんが読み解いていく本です。全72ページととても薄い本なんですけど、とても内容が濃い! やっぱりさすがだなあ、梨木さん。「秘密の花園」は子供の頃に何度も読んでるし、少し前に再読もしていたので、未だ記憶鮮明。1つ1つに頷きながら読み進めることになりました。


軽くジャンル分けをしてみると、こんな感じです。

海外(一般)

「お日さま お月さま お星さま」は、カート・ヴォネガットがニューヨークデザイン界の重鎮・アイヴァン・チャマイエフと共作した絵本。チャマイエフが描いたシンプルなイラストに合わせてヴォネガットが書いたのは、キリスト生誕の物語。今のこの時期にクリスマスって時期が完璧に外れてるんですけど...! 皮肉な視線で描かれたこの物語がなんだかとっても可笑しくてイイ。


海外(音楽関係)
   

この辺りに興味をもたれる方は少ないと思うので簡単に流すと... 長年日本でピアノを教えてらっしゃるクラウディオ・ソアレスの2冊がなかなか良かったです。あと「心で弾くピアノ」の技術的な面だけを取り出したという「ピアノ奏法20のポイント」という本も手元にあります。でもこの手の本ってそんなに次々に読めないし、実際次々に読んでも意味ないんだよね。書いてあることを1つ1つ試しながら、もっとじっくり読みこみたい。


海外(その他)
  

J.G.フレイザー3冊。「火の起源の神話」を読んで、ようやく長年の課題だった「金枝篇」を読みました。でも「火の起源の神話」はともかく、「金枝篇」は読みにくくてダラダラ時間をかけてるうちに、何がどうだったんだかって感じになっちゃって...。やっぱりあんまり時間をかけすぎるとダメですね。自分のペースできちんと読まないと。そのペースよりゆっくり読んでも速く読んでもダメだということを再確認。...でもこの作品、世界中の民話や伝説、神話がものすごく豊富に収集されていて、それは本当にすごいと思うんだけど、ある意味そこで終わっちゃってるような気も。この同じ素材で中沢新一さんが本を書いていたら、どれほど豊かなものを受け取れたかしら、なんてことを考えてしまうー。


国内(一般)
         

「第七官界彷徨」は、ずっと読みたかった作品。でも、作品そのものはとても良かったんだけど、この作品が書かれたまさにその時代に主人公の町子と同じ年頃で読みたかった。「双調 平家物語」は3巻と4巻。中大兄皇子と大海皇子の時代から、橘奈良麻呂と藤原仲麻呂の時代まで。今までバラバラに読んできた色んな作品がここに来て1つの線となってきました。もちろん作品によって人物像に違いはあるんだけど、大きくこういう流れだったのね。すごく楽しい!
そして後は全部妹尾ゆふ子さんの作品。「太陽の黄金 雨の銀」「天使の燭台 神の闇」「現実の地平 夢の空」は「夢の岸辺」の三部作。夢が絡んだファンタジーで、あれ、これで終わっちゃうんだ?って感じはあったけど、とっても可愛らしいお話で好き~。わかつきめぐみさんの絵がぴったりだなあ。それと「NAGA」は古代日本の神々が絡む和風のファンタジーで、「チェンジリング」はアイルランド神話やケルトが絡むファンタジー。どちらも目が離せない感じでクライマックスの盛り上がりにドキドキ。物語の中の神様の描き方で一番いいと思っているのはC.S.ルイスの「愛はあまりにも若く」なんだけど、妹尾ゆふこさんのこの神様の描き方(あり方)も好き。


国内(エッセイ)
 

どちらも再読。「ピアニストが見たピアニスト」は前回読んだ時よりも基礎知識も少し増えてるし、聴いたCDの数も増えてるので、とても興味深く読み返せたし、前回はもっと本の話が多いかと思って読んだ「モノ書きピアニストはお尻が痛い」も、今回はちゃんと分かってたので前回よりもずっと面白く読めました。


国内(音楽系)
   

これも簡単に流してしまいますが... 面白かったのは岡田暁生さんの「音楽の聴き方」。この方の著作は3冊目ですが、どれも面白いです。特に印象に残ったのは、指揮者がリハーサルで使うような「わざ言語」の話。「いきなり握手するのではなく、まず相手の産毛に触れてから肌に到達する感じで」なんて表現、すごい。ものすごく伝わります。ええと、基本的にはクラシック音楽の話ばかりなんですけど、他人の意見や世評を気にしないとか、自分の好みのクセを知るとか、理屈抜きの体験に出会うためにはまず数を聴くことが必要だとか、凄いものとお粗末なものを知ってこそ様々な陰影が見えてくるとか、ある音楽が理解できない時は、その背景知識の有無やTPOなどの文脈を点検するとか... こういうのは、読書にも他のことにも通用することだと思いますね。私も音楽を「読みとれる」ようになりたいし、「聴き上手」「読み上手」になるために、「聴く文脈」や「読む文脈」を自分の中にいっぱい育てたいな。...あ、全然簡単になってないや。


国内(その他)

唐澤一友さんの「多民族の国イギリス」。副題の「4つの切り口から英国史を知る」の4つとは「グレート・ブリテンおよび北アイルランド連合王国(the United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland)」という正式名称を持つ英国を形成する4つの地方(国)、英国旗の成り立ち、紋章の変遷に見る英国王室の歴史、あとは英国の歴史に伴う言語への影響ですね。今まで読んだり学んだりしてきた英文学やその関連本、自分の目で見た英国、そして塩野七生さんの「ローマ人の物語」で読んだことがここに繋がったりして、ちょっと頭の中が系統だって整理されたかも。


こんなところです。
さて、本当は4月頃からそろそろ更新再開としようと思ってたんですが、どうも最近ネット離れがひどくて... ブログを更新しなくなって時間ができれば、もうちょっと好きなようにネットで遊べるかしらなんて思ってたらとんでもない、パソコンの前に座る時間も激減中。2月3月のバタバタも4月になったら落ち着く予定なんですけどね... やっぱり復帰にはまだもう少し先のことになりそうです。
...こんなんじゃあ友達なくしちゃうね。

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Commentaires(14)

こんにちは、四季さん。  四季さんの今月の読書を拝見していて「おお!」
と思っちゃったのでコメントさせていただきにお邪魔しました。

フレイザーの「金枝篇」読了されたんですね~。  実はこの本、
KiKi にとっても長年の課題なんですけど、何度挫折したことか・・・^^;
そういう長年本棚のこやしになっている本って、いつかはあちらから
「さあ、そろそろいかが?」って声をかけてくれるんじゃないかと思って
待っているんですけど、KiKi にはなかなか声をかけてくれません(涙)
やっぱり四季さんぐらいたくさんの本を読まないとあの本は相手にして
くれないのかもしれませんねぇ。  「君はまだまだ修行不足だよ」
ってな感じで・・・・(笑)

ネットの復帰、まだもうちょっと先になりそうなんですね。  ちょっと
寂しいけれど四季さんが自然に「また書きたい」って思えることが何より
も大切だと思うから、KiKi は気長にお待ちしていますよ♪

四季さん、こんにちは。ごぶさたしています^^
お元気ですか~??
ことしに入っての四季さんは、ピアノ関連の本がたくさんですね^^

「「秘密の花園」ノート」は図書館で順番待ち中。
やっぱりよかったのですね~。
私も昨年あたりに再読しているので記憶鮮明です、楽しみでワクワクします。

「第七官界彷徨」。
>この作品が書かれたまさにその時代に主人公の町子と同じ年頃で読みたかった。
という四季さんの気持ち、ウンウン、とうなずいてしまいました。
すごくわかりますー、その気持ち。

さいきんはネットから離れていらっしゃるのですね。
ちょっと淋しいけど・・・また戻ってこられた時には仲良くさせてください^^
よろしくおねがいします(ぺこ)

四季さま、こんにちは。昨月も沢山の読書ですね。私には縁のない音楽関係の御本が多く、四季さんの趣味の広さを感じさせます。唐澤先生は、彼が大学院生時代から存じ上げていますが、なかなか才能豊かな若手の学者で、専門は中世英文学、特に古英語の文学(『ベーオウルフ』など)です。でもこんな広い読者向けの本も器用に書けるとは驚きました。私も、そのうち日本に帰ったら読んでみます。みなさん、買ってあげてくださーい(^_^)。 Yoshi

>KiKiさん
「金枝篇」、とうとう読みましたよ~。
いや、もう久々に苦難の読書となってしまいました…
神話とか伝説が次から次へと紹介されてて、そういうのは大好物のはずなのに。
なんででしょうね?
翻訳物の読みにくさといえば、色々な理由が考えられるんですけど
この作品に限っていえば、訳とか二次的なものではなく、原文の問題のような気がします。
やっぱりこういうのも、ある意味話術のようなものが必要だと思うんですが
フレイザーにはそれがあまりなかったのではないかと…
私も、面白くもなんともなくてもとりあえず読みとおす修行は積んできてますが(笑)
この本に関しては、また少し違った角度からのアプローチが必要なのかもしれません。
…なあんて言っても。
実際に面白く読まれる方はきっといらっしゃると思うので
やっぱり私もただの修行不足なのかもしれませんが~。(^^ゞ

暖かいお言葉、ありがとうございます。
前みたいに毎日のように更新するというのは当分ないと思うんですが
復帰自体は、多分それほど遠くないことになると思うんですよ。
こうやって月イチの記事を書くのはとても楽しいので。
ぼちぼちとリハビリをしていこうと思ってるので待ってて下さいね。^^

>ことりさん
わあい、ことりさん! お元気でしたか~。
お久しぶりです。私は元気ですよ。すっかりご無沙汰してしまってごめんなさい。
最近はもうあちらの方にも全然ログインしてなくて…
お引っ越しとかしなきゃいけないのにね。もうダメダメです。

そしてそして、見に来て下さってありがとうございます。
そうなんですよ、今年に入ってからピアノ関連の本がすごい勢いで増殖中…
あまり興味がない方が多いと思うので、これだけはお休み中で丁度良かったなと思うんですけどね。(笑)
「「秘密の花園」ノート」は、もう本当に良かったですよー。
ことりさんも予約中なんですね。早く回ってくるといいですねえ!
うふふ、記憶鮮明仲間ですね。それなら一層楽しめると思います~。
あ、それでも1冊手元に用意しておいた方がいいかも?
もしかしたら、読みながら途中で本編の方をめくりたくなっちゃうかもです。^^
そして「第七官界彷徨」。分かって下さいますか。嬉しい~。
今の私が読んでも、とても良かったんですけど、なんだかとっても惜しいことをした気がします…
でもその年頃の私は、尾崎翠なんて知らなかったんですよ。仕方ないですね。

今は全然ダメダメモードな私なんですが、じきに戻ってきますので!
その時は、こちらこそぜひ遊んでやって下さいね。よろしくお願いします。(ぺこり)

>Yoshiさん
こんにちは~。いつも見て下さってありがとうございます♪
いや、そんな趣味が広いだなんて… お恥ずかしい。
…実は最近読書より音楽に比重が傾いてる四季です。(^^ゞ

あ、唐澤一友さんご存じなんですね。古英語の文学が専門の方でしたか。
わー、私とまるっきり被ってる!(って、レベルが全然違いますが…)
でも例えば「ベオウルフ」1つとっても、なんであんなデンマークの話が
英文学史上最古の作品なのかというところで不思議になりますものね。
こういう本が出てくるのも必然だなあって思います。
とても読みやすい、いい本でしたよ!
私は英国王室の歴史が今一つ身についてないので
その辺りをもう少しじっくりと読み返そうと思ってます。
Yoshiさんも、帰国された時はぜひぜひ。^^

四季さんこんばんは~
先月もすごい読んでいますね。
そして音楽系は私とほぼかぶっています♪
音楽系の本って高いし、じっくり読む系が多いので
最近すっかり小説を読まなくなってしまいました。
新訳ホームズをちょぼちょぼ読んでいるくらいかな。
そいうえば四季さんちのお花たちは今何が咲いているのかしら?

>のんさん
うふふ、音楽系はかぶりますよね。^^
そうそう、音楽系の本を読み始めると、他の本がなかなか読めなくなりますね。
1冊読み終えるのに、もうすっごく時間がかかっちゃうんですもん。
一度最後まで読んでも、また前に戻って読み直すことも多いし…
何度も同じところをしつこく読むとか、そういうのもありますよね。
たまに小説を読むと読みやすくて、もうするすると読めちゃってびっくりします。(笑)

花は、少し前は木蓮と沈丁花と雪柳が華やかだったんですけど、もう終わっちゃって
今はクリスマスローズとローズマリーとラベンダーと蔓日日草と… あ、紫系の花ばっかり。
あとは… そうだ、椿も咲いてます。
椿以外は、今の時期の花というより、花期が長い花ばかりなんですけどね。
紫系は好きなので、家に帰ってきた時に和みます。^^

お久しぶりです~。
金枝篇、私も何度挫折したことか。で、未だに読了してません。
また挑戦してみようかな~。

私、最近ピアノを習い始めました。大人になってからなので、指が全然動きませんし、ペダリングも先生に呆れられるくらいタイミングをはずしたことも…。^^;
でも、まがりなりにも自分で音を出してみるっていいですね~。
下手の横好きで家族を困らせて自己満足に浸っています。

>johnnycakeさん
お久しぶりです~。お元気でしたか?
わ、johnnycakeさんも挫折歴アリだったとは。
やっぱり、かなりの方が苦労されてるんですね。
ということは、やっぱり原文の方に問…(以下略)
いつかぜひまた挑戦してみて下さいませ。
読みとおせた時の達成感だけは保証します!(そういう問題なのか)

そしてそしてjohnnycakeさんもピアノを始められたんですね~。
わあい、お仲間♪
あ、指は徐々に動くようになりますよん。あれも訓練ですから。
実はピアノって一種のスポーツ?なんて思うことが多々あります。(笑)
そしてペダルも慣れなんですが… 私は未だに上手く踏めません。
タイミング良く必要なだけ踏むのって難しいですよねえ。(溜息)

でもほんと、自分で音を出すのってすごく楽しいですよね。
この楽しみはクセになるかと♪
そちらのお話もまたぜひ聞かせて下さいね!

四季さん、おはようございます♪
2月のところにコメントしようと思っているうちにいつの間にか3月も終わり(笑)
こちらにお邪魔しますね。


私も短編に苦手意識があるんですが、四季さんが楽しまれた『神を見た犬』はぜひ読んでみたくなりました。
あと『ラウィーニア』もずっと気になっていて・・・いつか読みます!

そして3月の読書、『「秘密の花園」ノート』濃い内容でしたね。
私はこの本をきっかけにあらすじしか知らなかった『秘密の花園』を手に取ったんですが、すごくよかったです。
最初読んだのは西村書店版だったのですが、先日岩波少年文庫を借りてきました♪子どもの頃あまり名作と呼ばれる児童書をあまり読んでこなかったんだなあと最近実感しているところです。
読みたい本はますます増えて・・・焦ってしまうくらい(笑)
そんな気持ちを抑えて少しずつでも楽しく読んでいきたいと思ってます。

はぴさん、こんにちは~。おお、短編苦手仲間ですね!
長編と短編、一体どこが違うんでしょうね。
(いや、そもそも長さが違うんですが)

で、少し考えてたんですけど、同じように「小説」でありながら
長編と短編ってまたちょっと別の物なのかもしれないあなって思うんですよ。
ただ長編を短くすれば短編になるってものでもないじゃないですか。
それだと単なるあらすじになっちゃう。
でも、いい短編っていうのは長編とはまた違うインパクトがありますよね。
読み始めた途端、その世界に引きずり込まれるような感じがして…
しかもとても短い作品なのに、それを全然感じさせなかったりして。

その違いが何なのか、まだよく分からないんですけど
1つは言葉かなあと思うんです。よく吟味して磨き抜かれた言葉。
あとは計算されつくした構成、なんですかねえ。
長編は大きな流れが大切で、それに対して短編はいわば和歌のような感じで…
うーん、何言ってるんだか、よく分からないですね。
お返事が妙に長くなってしまって、ごめんなさいー。
「ラウィーニア」もすごく素敵なので、ぜひぜひ!
「アエネーイス」の中でラウィーニアが出てくる辺り(終盤です)も併せて読むと
一層楽しめるのではないかと思います。^^

梨木さんの、ほんと内容が濃くて素晴らしかったですね。
あ、「秘密の花園」の西村書店版と岩波少年文庫版、かなり違いそうですか?
古典新訳文庫と福音館書店版はよく見かけますが、調べてみると他にも色々!
私は岩波少年文庫版でしか読んでないので…
あ、児童書を大人になってから読む楽しさというのも格別だと思います~。
ぜひどんどん開拓してみて下さいね。
娘さんと一緒に読む楽しみも増えますね。^^

「金枝篇」はさすがにフレイザーが生涯を費やしたといっていい、超弩級の学術論文。ちょっとやそっとでは攻略できないですよね。

さらに、「金枝篇」を読むのを難しくしているのは、バージョンがいくつかあること。それぞれ内容も量も大きく異なっています。
基本的には三つの版があるんですが、今、日本語訳はすべて揃いつつあります。
岩波文庫の簡約版、四季さんが読まれた初版、国書刊行会の完全版です。
国書刊行会のは、現在、5巻(全八巻)まで出てると思います。レヴィ=ストロースの「神話論理」のほうが早く完結しそうな感じです。
私は姫路市立図書館で、国書刊行会「金枝篇」をリクエストしたんですが、値段が高すぎるため却下されたという、苦い経験が(笑)

いちばん読みやすいのは、意外にも(?)、国書刊行会の完全版です。
何が「完全」かといえば、論証のために引用される、世界各地のさまざまな風俗や伝説が、莫大だということ。
その引用がどれもこれも非常に面白くて、ある意味どこからでも読めます。
逆にいうと、フレーザーが論証しようとしている、論文としての趣旨というか、「あらすじ」はなかなか見えないのです。

つまり、「金枝篇」が読みにくいのは、「あらすじ」がわかりにくいってことがある。
論証のために非常に慎重で重厚な手続きを踏んでいるので、何がいいたいのか、何を証明しようとしているのか、全然つかめなくなっていきますよね。
「完全版」は、ひとまず、「あらすじ」をおいといて、例証だけでも楽しめるので、読みやすいんですが。

フレーザーの論証が異常に回りくどいのには、じつはかなり深遠な理由があるんじゃないかと思っています。
「金枝篇」は、二重底になっていて、表面上はディアナ森の伝承をめぐるものですが、ほんとうはキリスト教の根っこが人類の古い伝承にあるのではないかという主張をはらんでいる。
安易に提出すると、ものすごい反論を招きかねない説なので、フレーザーは遠回りに、かつ詳細に論証していきます。ちょっとやそっとでは、反論できないように(笑)
これが、「金枝篇」が難解である、ひとつ目の理由。

しかし、より深い理由は、フレーザー自身が無意識のうちで、キリスト教を、本来あった土俗的な場所に帰したがっているのではないか、ということ。
それによって、キリスト教は、本来の生命力を取り戻せる。
いわば、キリスト教のブードゥー化。
敬虔なクリスチャンだったフレーザー自身は、意識のレベルでは認めたがらないでしょうが、彼の無意識は、それを願望しているんです、たぶん。
イケニエの話とか、どう見ても、嬉々として(鬼気として)、書いていますから。
自分自身の意識に、その「喜び」を隠すために、独特のしかつめらしさを施した文体になっています。
これが、難解さの理由ではないかと考えています。

でも、やっぱりフレーザーは学者として超一流。
「完全版」の用例、私は以前は、質より量を目指して並べてあるのだと思っていましたが、最近になって、これが「あらすじ」に対して、きわめて正確かつ強力な論証として配置されているんだと、気づいてきました。
当時、大英帝国のデータバンクのほうが、世界そのものより大きいくらいの勢いだったのですが、フレーザーはその無限の海から、ちゃんと形になるものをすくい上げたので、それだけでも偉業と言っていいと思います。

フレーザーの原文の英語は、検索するとたくさん出てくるので、少し読んでみると、感じがわかります(全部はとうてい読めませぬ)。
個々の文はわりあい平易で、ただ論の展開はとてつもなくのろいです(笑)

overQさん、こんにちは。
なるほどなるほど、この回りくどさにはワケがあったんですね!
そう思ってみると、すっきりと腑に落ちますね。
だって話がキリスト教の根源にかかわってくるとなると、色々大変ですもん。
今の時代ならまだしも、19世紀ですものね。
あらすじが見えてこないほど回りくどくて、例証ばかり挙げているのも
そう考えてみると、もう全くの当然とも言えますね。ああ、納得。
自身が敬虔なキリスト教徒だったのなら尚更。二律背反。

うわー、話術がどうのなんて言ってしまってごめんなさいーという気持ちです。
そうですよね、何かそういうことがあるかもと想像出来ても良かったはずなのに…
まだまだ浅い私です。(嗚呼)
本当に言いたかったことは奥の奥に隠されてたんですねえ。
overQさん、やっぱりすごいです!!

国書刊行会の完全版は今5巻まで出てるところですか。
確かに1冊1万円を超すとなると、市立図書館には荷が重いですね。
京都府立図書館辺りなら持ってるでしょうけど。
…あ、あった。兵庫県立図書館にもありますね。大阪府立にもある。
私の地元の市立図書館も国書刊行会のはないです。岩波文庫の全5巻だけ。
今となっては、もう買ってくれないだろうな。
うちのとこは、基本的に新刊じゃないとあまり購入してくれないんですよね。
予算がたっぷり残ってる年度はじめにリクエストすればまだ可能性はありますが
巻の途中から購入と言うのもあり得ないでしょうし。

今度府立図書館から取り寄せてもらってみようかしら。
ちくま文庫版でも神話や伝説の紹介の数が半端じゃないと思ってたんですが
それ以上にあって、しかも面白く読めるとなると、俄然興味が湧いてきます。
今回、その論の展開があまりに見えてこなくて、煙につままれてしまったんですが
あらすじがどうやっても見えてきにくいと知ってしまえば、逆に強いかもー。
どこから読んでも大丈夫なぐらいなら、1冊ずつマイペースで読めるし
なかなか完結してくれなくても苛々せずに済みそうですよね。(笑)

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